35 / 366
6.私を巻き込まないで下さいっ!
怒っているというよりも
しおりを挟む
***
レギュラーコーヒーのホットを2つと、飽きもせず大好きなカフェラテ――今度はアイスにした――1つをトレイに載せて席に戻ると、織田課長が物凄く渋い顔をなさっていて。
織田課長、常に何があっても涼しげな笑みを浮かべているイメージが強いだけに、その苦虫を噛み潰したような表情に思わず見入ってしまった。
「ほら。宗親さんが大人気ない表情をなさるから。春凪さんが戸惑っていらっしゃるじゃない」
ふふっと柔らかな笑顔を向けられて、やっぱり親子だなって思ってしまう。
その表情の作り方、本当に織田課長とそっくりです。
「とりあえずお掛けになって?」
固まってしまった私を促すように葉月さんがそう声を掛けていらして、私は慌てて各々の前に飲み物を置くと、いそいそと着席した。
何これ、何これ。
何でこんな空気重いの?
とは言っても重苦しいのは織田課長だけ。
葉月さんの方は鼻歌まで出てしまうんじゃないかと言う風に上機嫌で。
「あ、あの――」
私なんかが口を挟むのは烏滸がましいと分かってはいても、さすがにこれは看過出来ないです。
私がほんの束の間席を空けている間に何があったのか、物凄く知りたいんですが……。
好奇心を極力表に出さないようにキュッと唇に力を入れて、恐る恐るどちらへともなく呼びかけてから、まずは一応〝恋人設定〟の課長を立てて彼を見やる。
でも、ふいっと視線を逸らされて、私は眉根を寄せて葉月さんを見た。
「ごめんなさいね、春凪さん。この子、照れてるのよ」
え?
どんなに注視してみても、照れていらっしゃる……ようには見えないのですが?
「母さん、嘘を吐くのはやめていただけますか? 僕は怒ってるんです」
怒っておられるというより……何だろう……。
織田課長、〝拗ねていらっしゃる〟ように見えるんですけど。
私の気のせいでしょうか?
「どうして怒るの? ――最初から貴方を連れ戻す時のお約束だったでしょう? お忘れになられて?」
「もちろん忘れてなどいません。ただ、僕の今の会社での実績を見て頂けたら、そんな約束など無意味では?と申し上げているのです。……それに――」
そこで何故か私にちらりと視線を投げかけると、一瞬だけ物凄く申し訳なさそうなお顔をなさった気がして。
え? なになに? 何でそこでそんな?
思ったけれど本当に刹那のことだったし、気のせいだったのかも?
レギュラーコーヒーのホットを2つと、飽きもせず大好きなカフェラテ――今度はアイスにした――1つをトレイに載せて席に戻ると、織田課長が物凄く渋い顔をなさっていて。
織田課長、常に何があっても涼しげな笑みを浮かべているイメージが強いだけに、その苦虫を噛み潰したような表情に思わず見入ってしまった。
「ほら。宗親さんが大人気ない表情をなさるから。春凪さんが戸惑っていらっしゃるじゃない」
ふふっと柔らかな笑顔を向けられて、やっぱり親子だなって思ってしまう。
その表情の作り方、本当に織田課長とそっくりです。
「とりあえずお掛けになって?」
固まってしまった私を促すように葉月さんがそう声を掛けていらして、私は慌てて各々の前に飲み物を置くと、いそいそと着席した。
何これ、何これ。
何でこんな空気重いの?
とは言っても重苦しいのは織田課長だけ。
葉月さんの方は鼻歌まで出てしまうんじゃないかと言う風に上機嫌で。
「あ、あの――」
私なんかが口を挟むのは烏滸がましいと分かってはいても、さすがにこれは看過出来ないです。
私がほんの束の間席を空けている間に何があったのか、物凄く知りたいんですが……。
好奇心を極力表に出さないようにキュッと唇に力を入れて、恐る恐るどちらへともなく呼びかけてから、まずは一応〝恋人設定〟の課長を立てて彼を見やる。
でも、ふいっと視線を逸らされて、私は眉根を寄せて葉月さんを見た。
「ごめんなさいね、春凪さん。この子、照れてるのよ」
え?
どんなに注視してみても、照れていらっしゃる……ようには見えないのですが?
「母さん、嘘を吐くのはやめていただけますか? 僕は怒ってるんです」
怒っておられるというより……何だろう……。
織田課長、〝拗ねていらっしゃる〟ように見えるんですけど。
私の気のせいでしょうか?
「どうして怒るの? ――最初から貴方を連れ戻す時のお約束だったでしょう? お忘れになられて?」
「もちろん忘れてなどいません。ただ、僕の今の会社での実績を見て頂けたら、そんな約束など無意味では?と申し上げているのです。……それに――」
そこで何故か私にちらりと視線を投げかけると、一瞬だけ物凄く申し訳なさそうなお顔をなさった気がして。
え? なになに? 何でそこでそんな?
思ったけれど本当に刹那のことだったし、気のせいだったのかも?
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
冷徹上司の、甘い秘密。
青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。
「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」
「別に誰も気にしませんよ?」
「いや俺が気にする」
ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。
※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる