【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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6.私を巻き込まないで下さいっ!

怒っているというよりも

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 レギュラーコーヒーのホットを2つと、飽きもせず大好きなカフェラテ――今度はアイスにした――1つをトレイに載せて席に戻ると、織田おりた課長が物凄く渋い顔をなさっていて。

 織田課長、常に何があっても涼しげな笑みを浮かべているイメージが強いだけに、その苦虫を噛み潰したような表情に思わず見入ってしまった。


「ほら。宗親むねちかさんが大人気ない表情おかおをなさるから。春凪はなさんが戸惑っていらっしゃるじゃない」

 ふふっと柔らかな笑顔を向けられて、やっぱり親子だなって思ってしまう。
 その表情の作り方、本当に織田課長息子さんとそっくりです。


「とりあえずお掛けになって?」

 固まってしまった私を促すように葉月さんがそう声を掛けていらして、私は慌てて各々の前に飲み物を置くと、いそいそと着席した。

 何これ、何これ。
 何でこんな空気重いの?

 とは言っても重苦しいのは織田おりた課長だけ。
 葉月さんの方は鼻歌まで出てしまうんじゃないかと言う風に上機嫌で。


「あ、あの――」

 私なんかが口を挟むのは烏滸おこがましいと分かってはいても、さすがにこれは看過出来ないです。

 私がほんの束の間席を空けている間に何があったのか、物凄く知りたいんですが……。

 好奇心を極力表に出さないようにキュッと唇に力を入れて、恐る恐るどちらへともなく呼びかけてから、まずは一応〝恋人設定〟の課長を立てて彼を見やる。

 でも、ふいっと視線を逸らされて、私は眉根を寄せて葉月さんを見た。

「ごめんなさいね、春凪はなさん。この子、照れてるのよ」

 え?
 どんなに注視してみても、照れていらっしゃる……ようには見えないのですが?

「母さん、嘘を吐くのはやめていただけますか? 僕は怒ってるんです」

 怒っておられるというより……何だろう……。
 織田おりた課長、〝拗ねていらっしゃる〟ように見えるんですけど。

 私の気のせいでしょうか?

「どうして怒るの? ――最初から貴方を連れ戻す時のお約束だったでしょう? お忘れになられて?」

「もちろん忘れてなどいません。ただ、僕の今の会社での実績を見て頂けたら、そんな約束など無意味では?と申し上げているのです。……それに――」

 そこで何故か私にちらりと視線を投げかけると、一瞬だけ物凄く申し訳なさそうなお顔をなさった気がして。

 え? なになに? 何でそこでそんな?

 思ったけれど本当に刹那せつなのことだったし、気のせいだったのかも?
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