【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

文字の大きさ
上 下
25 / 366
5.神様は今日も塩対応みたいです

お願い、こっちに来ないで!

しおりを挟む
「僕にはお付き合いしている女性がいるのですよ、母さん。――だから見合いなど不要です」

 凄く凄く聴き慣れた低音イケボが聞こえてきた気がして、モグモグしながら聞き耳を立てる。

 まさか、ね。

 こんなに朝早く――と言ってもじきに11時になるんだけど――から、母親と外で揉めている知り合いに出会うなんてこと、そうそうないよねぇ。

 そもそも私が似てるって思ったその声の主ってば、会社の人だし。

 もちろんここと会社はすごーく近い。けれど、今日は勤務日じゃないし、ないない。

 自分がわざわざ休日にそのカフェまでモーニングを食べに出向いていることを棚に上げて、否定してみる。


 一度はそうしてみたのだけれど――。


「会わせろって……そんな急に出てきておいて無茶を言わないでください。――もちろん昨日一応誘いはしましたけどね、彼女にも色々事情があるんですよ。察してください」


 ひとつ目のハンバーガーの残りをたいらげてから、カフェラテで喉を潤す。

 その上で、やっぱり聞き覚えのある声だと思ってしまって。

 お行儀が悪いけれどお手洗いに行くふりをして、ちょっと覗いてみちゃおっかな。

 そんな好奇心が湧く程度には、その声が逼迫ひっぱくしているように聞こえたの。

 もしも私の知ってるだったら?って考えたら、「いつも取り澄ましたお綺麗なお顔をどんな風にゆがめていらっしゃるんだろう? !」とか思っちゃって。

 そろそろと席を立って化粧室へ行くふり、をしようとして……私はその声の主とバッチリ目が合ってしまった。

「ひゃわっ」

 思わず変な悲鳴が漏れて尻餅をつくみたいに椅子に座って。

 やばいっ。

 あれ、絶対っ! 気付かれた!

 ドキドキしながら身をかがめていたら。


「ちょっと待っていてください。すぐ戻りますので」

 という声が聞こえてきた。



 お願いっ。こっちに来ないでっ!

 ギュッとコーヒーカップを握りしめてそう願ったけれど、神様は今日も私には塩対応みたいです。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...