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4.賄賂を渡されました
歯向かうなんて、滅相もございません
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金曜日――。
例によって織田課長に思いっ切りこき使われて、ヘトヘトのヘロヘロ。
そう言えば今日はランチもまともに食べられなかったなぁ。
唯一口にしたのは、朝、出勤途中で会社近くにある赤い屋根がトレードマークのカフェで買った、カフェラテ一杯だけだ。
全国チェーンまではいかないまでも、県内に幾つかの支店を出す、美味しい珈琲と軽食が売りのお店。
大通りに面していて、駐車場も広くて立ち寄りやすいからかな。いつ行ってもお客さんで賑わっている。
「お腹すいた……」
定時の17時を過ぎること約3時間。
いつもなら18時までには帰れるところ、今日は週末だからかな?
20時前になってやっと解放されて。
ようやく帰宅の途につける!と思った私は、帰りに何か買って家で食べよう、とお腹の虫をなだめに掛かる。
土日はお休みだし、少しアルコールを飲むのも悪くないかも?と腑抜けた状態であれこれ考えを巡らせながらエレベーターホールへ向かった。
たった3階分の距離を階段で降りるのも億劫になってしまうぐらいの倦怠感に、我ながら驚く。
大学を卒業して、社会に出てほんの数日。
厳密に言うとたったの5日。
なのに心身の疲弊具合はぶっ続けで10日以上砂漠を走り切ったぐらいの惨憺たる有様で。
初めてやってくる週末に気が抜けてしまったのかしら。
後ちょっと――。せめてアパートに帰り着くまではしっかり気を張っていないと、ふらりと倒れてしまいそう。
手にしたカバンの中で、携帯がブーブーとバイブ音を立てているけれど、それを取り出すのも億劫で。
ごめんなさい、あとでちゃんと折り返します。
「つかれた……。なんか食べたい……」
やって来た箱内に誰もいなかったのをいいことに、溜め息混じりにそう吐き出して、壁に背中を預ける。
と、ドアが閉まり切る直前にヌッ!と隙間に大きな手が差し入れられて。
「きゅぁっ」
完全にだらけモードで無防備になっていたところへの思わぬ奇襲に、カエルがつぶれたみたいな、はたまたRPGなどの回復魔法みたいな、恥ずかしい悲鳴が漏れた。
「開ボタンくらい押してくれてもいいのに……」
心臓バクバクでそんなゆとりなんてなかったけれど、言われてみればその通り。
挟まれた手に、安全装置が働いて再度口を開けた扉から箱内に入ってくるなり、手の主から非難がましい声で溜め息をつかれて、ほんの少し申し訳ない気持ちになる。
「す、すみません」
謝りはしたものの、もしも私、操作パネルに手を伸ばしていたら、間違いなく「閉」の方を連打しまくっていた自信があります!
だって手が差し込まれた瞬間、何かホラーチックで本ッ当にっ! 怖かったんですもの!
なんて思ったけれど、口に出すわけにはいかない。
何故なら乗り込んできた相手が、一応直属の上司だったから。
歯向かうなんて、滅相もございません。
例によって織田課長に思いっ切りこき使われて、ヘトヘトのヘロヘロ。
そう言えば今日はランチもまともに食べられなかったなぁ。
唯一口にしたのは、朝、出勤途中で会社近くにある赤い屋根がトレードマークのカフェで買った、カフェラテ一杯だけだ。
全国チェーンまではいかないまでも、県内に幾つかの支店を出す、美味しい珈琲と軽食が売りのお店。
大通りに面していて、駐車場も広くて立ち寄りやすいからかな。いつ行ってもお客さんで賑わっている。
「お腹すいた……」
定時の17時を過ぎること約3時間。
いつもなら18時までには帰れるところ、今日は週末だからかな?
20時前になってやっと解放されて。
ようやく帰宅の途につける!と思った私は、帰りに何か買って家で食べよう、とお腹の虫をなだめに掛かる。
土日はお休みだし、少しアルコールを飲むのも悪くないかも?と腑抜けた状態であれこれ考えを巡らせながらエレベーターホールへ向かった。
たった3階分の距離を階段で降りるのも億劫になってしまうぐらいの倦怠感に、我ながら驚く。
大学を卒業して、社会に出てほんの数日。
厳密に言うとたったの5日。
なのに心身の疲弊具合はぶっ続けで10日以上砂漠を走り切ったぐらいの惨憺たる有様で。
初めてやってくる週末に気が抜けてしまったのかしら。
後ちょっと――。せめてアパートに帰り着くまではしっかり気を張っていないと、ふらりと倒れてしまいそう。
手にしたカバンの中で、携帯がブーブーとバイブ音を立てているけれど、それを取り出すのも億劫で。
ごめんなさい、あとでちゃんと折り返します。
「つかれた……。なんか食べたい……」
やって来た箱内に誰もいなかったのをいいことに、溜め息混じりにそう吐き出して、壁に背中を預ける。
と、ドアが閉まり切る直前にヌッ!と隙間に大きな手が差し入れられて。
「きゅぁっ」
完全にだらけモードで無防備になっていたところへの思わぬ奇襲に、カエルがつぶれたみたいな、はたまたRPGなどの回復魔法みたいな、恥ずかしい悲鳴が漏れた。
「開ボタンくらい押してくれてもいいのに……」
心臓バクバクでそんなゆとりなんてなかったけれど、言われてみればその通り。
挟まれた手に、安全装置が働いて再度口を開けた扉から箱内に入ってくるなり、手の主から非難がましい声で溜め息をつかれて、ほんの少し申し訳ない気持ちになる。
「す、すみません」
謝りはしたものの、もしも私、操作パネルに手を伸ばしていたら、間違いなく「閉」の方を連打しまくっていた自信があります!
だって手が差し込まれた瞬間、何かホラーチックで本ッ当にっ! 怖かったんですもの!
なんて思ったけれど、口に出すわけにはいかない。
何故なら乗り込んできた相手が、一応直属の上司だったから。
歯向かうなんて、滅相もございません。
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