【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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3.神様の塩対応

社会人デビュー

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 四月の、よく晴れた第二月曜日。
 今日は私の、社会人デビューの日です。

 営業部門、設計管理部門、土木部門、建築部門、管工事部門、左官部門、経理部門などといった、いくつかの部門を有した、ここらではそこそこ有名な中規模の建設会社に採用されて、初めての出勤日。

 私は先日支給されたばかりの真新しい紺色の制服に身を包んで、ソワソワと落ち着かない気持ちで公衆の面前にいます。

 小さな会社だからかな。
 入社式なんて仰々ぎょうぎょうしいものはなくて、私を含めた新卒の新入社員四名、朝礼で百人あまりの先輩従業員らの前に立たされて……。
 今まさに社長直々にざっくばらんな感じで紹介されているところ。

 大企業の入社式みたいな派手さはないけれど、なまじっかアットホームな分、社長や会長など、いわゆるお偉いさんとの距離がイメージしていたよりずっと近い。

 そんな人たちから頑張ってね、と直に声をかけられたりするぐらいだから、朝礼でも先輩従業員の皆さんたちとの距離なんかはそれ以上に近くて。

 別にあがり症なわけではないけれど、壇上にたったの数名。注目されていると思うからか、やたらと恥ずかしかった。

 私は始終視線を足元や手元や社長の背中へと泳がせて、何とかその場をやり過ごそうと必死で。ほぼ前は見ていなかった。


「――以上の四名が、今日から我が社の新たな仲間です。四人ともこの春大学を卒業したばかり。社会に出たてで右も左も分からないでしょうから、皆さんしっかり仕事や社会のルールを教えてあげてください」

 そこまでを社員みんなに語りかけた社長が、最後に私たちの方を振り返って、「君たちが1日も早く我が社の戦力になってくれることを期待しています」と締めくくった。

 その言葉に、他の3人と一緒に「はい」と答えながらも、脳内では早く壇上から降ろして~とか思っていたのは内緒です。


***

 同期の3人はさすが建設業と言うべきか、私以外みんな男性だったのは大誤算でした。
 入社試験や面接の時には女の子、数名いたはずなんだけどな。


 そこで私は、「男性職場は若い女の子には不人気だからね」と、かつて運送業を営んでいた祖父が言っていたのをふと思い出した。

 やはり周りが男性ばかりだと、若い女性は気後れしてしまうらしくて、面接に来てくれても採用の連絡をすると辞退されることが多いんだとか。

 よしんば入社してくれても、すぐに辞めてしまったり。

 それでだろうな。私が幼い頃、年輩のパートさんが決まるまでの結構な期間、母が経理事務に借り出されていたの。
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