【完結】【R18】好みの彼に弱みを握られていますっ!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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2.通りすがりのハンサムさん

もう脱がない

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「私、もう一生男の人の前では服脱がないっ!」

 全てのものが琥珀色に染まる薄暗い店内に、聴こえるか聴こえないかの音量で、物静かなクラッシックが流れている。
 カウンター席が10席と、テーブル席が3つの小ぢんまりとしたバー『Misokaミソカ』の隅っこ。

 本当はテーブル席がよかったのだけれど、週末ともなれば結構満席で。
 予約なしで飛び込んだ、私と友人のは仕方なくカウンター席に横並びで座って飲んでいる。

 彼氏に振られてからこっち、私、スカートを履いていない。

 パンツルックはあまり好きじゃないって彼が言うからずっと我慢していたけれど、それだってもう守る必要なんてないもの。解禁よ、解禁。

 今日だって、サファリロングコートの下に、白いVネックのTシャツを着て、グレイのイージーワイドパンツを履いてるの。
 足元だって、パンプスはやめてスニーカーというカジュアルな出立いでたち。

 ほんわかふわふわなフェミニンを意識しまくっていた、ちょっと前の私とは大違い。

 就職が決まっている、市内ではそこそこ名の知れた六階建の持ちビルに入った建設会社『神代組かみしろぐみ』の事務職は、制服が支給されるみたいだから、否応なしにスカートを履かないといけないみたい。だけど、仕事とプライベートは別の話。

 今はね、元カレの好みに合わせてスカートばかり履いていた自分と訣別をはかりたいの。


 壁に近い側をほたるが、その隣に私が座ったのには他意なんてない。たまたまだ。

 だけど、メリハリボディを可愛いキャメルのケーブルニットワンピースで包んだ、さらさらショートカットのほたるを、私という壁で守るには丁度いい配置かもって思ったの。

 彼氏に女としてはかなり情けない理由でふられてしまって傷心の私。
 そんな私を、「パーッと飲んで愚痴って忘れちゃおう!」と、大学入学当初からの友人であるほたるが誘い出してくれて。

 ついでに大学からそんなに離れていないところに2人して就職が決まったお祝いもしなきゃね、これからもよろしくねってことだったんだけど。

 最初は離れずに済んで嬉しいね!から始まった会合も、お酒が進むにつれてほたるの優しさに甘える形で元カレの愚痴をつまみにフラれ女の私がくだをまき始める様相を呈して。

「もぉ、絶対にどんなに求められても脱がないんだからぁぁぁぁ」

 ギュッ!と拳を握って、私はいま出されたばかりのビール――3杯目をグイッとあおった。

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