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19.打算的なこたえ/written by 鷹槻れん
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私は助けを求めるようにえっちゃんを見て。えっちゃんに困ったような顔でフイッと視線を逸らされて、ギュッと胸の奥が苦しくなる。
小さい頃からずっとずっと大好きだった隆ちゃんの好きな人は男の人で、せっかく大学で仲良くなったお友達ともこんな形でギクシャクしちゃうなんて!
私、なんでこんなに何もかもうまくいかないんだろう?
もう、疲れちゃった……。
いっそのこと、誰でもいいから寄りかかってしまいたい。
柚弦くんはそんな私でも……いい?
こんな打算的な気持ちで柚弦くんにOKを出すのは卑怯だよね。
でも。
みんなの前でごめんなさいって断るよりはいいんじゃないかな。
私は小さな身体に乗っかった、ちっぽけな脳みそで一生懸命最善策を模索して。
そうして、決めた――。
「お願い、します」
途端、柚弦くんに再度ギュッと抱きしめられて、すぐ耳元で「あぁ……本当に……? 萌々ちゃん、ありがとう……!」って、とっても嬉しそうにつぶやかれた。
楓馬くんに、「おめでとう」って声をかけられながら、私はぼんやりと視線の端にえっちゃんの姿を探す。
「ゆ、づる、くん……」
ややしてポツン、と。えっちゃんが柚弦くんの名前を呼んで。
柚弦くんが私を腕の中に抱きしめたまま、首だけをえっちゃんの方へ向ける気配がした。
私はそんな2人を見上げて、何も言えなくて小さく息を呑む。
「あなたが好きなのって、本当に萌々ちゃん、なの?」
探るように落とされた言葉に、柚弦くんがしっかりとうなずいて。
「うん……そうなんだ。実は僕、高校の時からずっと萌々ちゃんしか見てなくて。……でも、ごめんね。最初からそうはっきり伝えるべきだった」
――他に女の子は一人しかいないから、あれだけでも十分伝わると思ってて……。
どこか申し訳なさそうに、けれども私の肩を抱く手にしっかりと力を込めて、柚弦くんがえっちゃんを見つめた。
「そ、だよ、ね。私、柚弦くんからちゃんと聞かされてた、もんね」
えっちゃんが、柚弦くんの言葉を受けて、まるで自分に言い聞かせるみたいにそう言って。
それから私と柚弦くんをじっと見つめてから、かしこまったみたいに背筋を伸ばして言うの。
「おめでとう、柚弦くん、萌々ちゃん。私、ちゃんと2人を応援する……から」
今にも泣きそうな顔でそんな風に言われたら私っ。
「えっちゃ……」
言いながら柚弦くんの腕を振りほどいてえっちゃんに手を伸ばそうとしたら、それより先に楓馬くんが動いた。
「きょ、今日はもう! ここで解散にしない? 俺、えっちゃんを送っていくから……。柚弦は萌々ちゃんと、な?」
言うなり呆然と立ち尽くしたままのえっちゃんの手を引いて、楓馬くんがズンズン歩き出してしまう。
私は伸ばしかけた手をギュッと握って、そんな2人を見送って。
2人の姿が夜の闇にぼんやり霞んで見えなくなった頃、すぐ頭上から柚弦くんの声がかかった。
「ねぇ萌々ちゃん、もう少しだけ。――君の時間、もらってもいい?」
小さい頃からずっとずっと大好きだった隆ちゃんの好きな人は男の人で、せっかく大学で仲良くなったお友達ともこんな形でギクシャクしちゃうなんて!
私、なんでこんなに何もかもうまくいかないんだろう?
もう、疲れちゃった……。
いっそのこと、誰でもいいから寄りかかってしまいたい。
柚弦くんはそんな私でも……いい?
こんな打算的な気持ちで柚弦くんにOKを出すのは卑怯だよね。
でも。
みんなの前でごめんなさいって断るよりはいいんじゃないかな。
私は小さな身体に乗っかった、ちっぽけな脳みそで一生懸命最善策を模索して。
そうして、決めた――。
「お願い、します」
途端、柚弦くんに再度ギュッと抱きしめられて、すぐ耳元で「あぁ……本当に……? 萌々ちゃん、ありがとう……!」って、とっても嬉しそうにつぶやかれた。
楓馬くんに、「おめでとう」って声をかけられながら、私はぼんやりと視線の端にえっちゃんの姿を探す。
「ゆ、づる、くん……」
ややしてポツン、と。えっちゃんが柚弦くんの名前を呼んで。
柚弦くんが私を腕の中に抱きしめたまま、首だけをえっちゃんの方へ向ける気配がした。
私はそんな2人を見上げて、何も言えなくて小さく息を呑む。
「あなたが好きなのって、本当に萌々ちゃん、なの?」
探るように落とされた言葉に、柚弦くんがしっかりとうなずいて。
「うん……そうなんだ。実は僕、高校の時からずっと萌々ちゃんしか見てなくて。……でも、ごめんね。最初からそうはっきり伝えるべきだった」
――他に女の子は一人しかいないから、あれだけでも十分伝わると思ってて……。
どこか申し訳なさそうに、けれども私の肩を抱く手にしっかりと力を込めて、柚弦くんがえっちゃんを見つめた。
「そ、だよ、ね。私、柚弦くんからちゃんと聞かされてた、もんね」
えっちゃんが、柚弦くんの言葉を受けて、まるで自分に言い聞かせるみたいにそう言って。
それから私と柚弦くんをじっと見つめてから、かしこまったみたいに背筋を伸ばして言うの。
「おめでとう、柚弦くん、萌々ちゃん。私、ちゃんと2人を応援する……から」
今にも泣きそうな顔でそんな風に言われたら私っ。
「えっちゃ……」
言いながら柚弦くんの腕を振りほどいてえっちゃんに手を伸ばそうとしたら、それより先に楓馬くんが動いた。
「きょ、今日はもう! ここで解散にしない? 俺、えっちゃんを送っていくから……。柚弦は萌々ちゃんと、な?」
言うなり呆然と立ち尽くしたままのえっちゃんの手を引いて、楓馬くんがズンズン歩き出してしまう。
私は伸ばしかけた手をギュッと握って、そんな2人を見送って。
2人の姿が夜の闇にぼんやり霞んで見えなくなった頃、すぐ頭上から柚弦くんの声がかかった。
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