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15.いちごとメロンと好きな人/written by 鷹槻れん
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【Side:春川萌々】
隆ちゃんから〝まきまきの公園までちょっと出てこられるか?〟と連絡をもらった時、私の心臓は信じられないぐらいドキドキと跳ねた。
物心ついた時から少し年上の意地悪な幼なじみの隆ちゃんのことが大好きだという自覚はあった。
けれど、幼い頃みたいに頻繁に会えなくなった途端その想いはどんどん強くなって。
離れたら気持ちも離れちゃうと思っていたのに、実際はそんなことないんだなって思ったの。
会えない分、会えた時の振り幅が半端ないし、会えると思った時の喜びがすごく大きい。
隆ちゃんが私のことなんて何とも思っていないことは薄々感じていたけれど、それでも男と女だもん。
絶対無理なんて言い切れないじゃない?とも思っていて。
そんな私だから。
今日約束をしていたみんなには申し訳ないけれど、隆ちゃんからの呼び出しとなると、何を差し置いてもそっちを優先したくなってしまった。
だって……隆ちゃんからのお誘いなんてもう2度とないかもしれないんだもの。
そう思ったら、居ても立ってもいられなくなったの。
***
チビのくせに、基本ぺたんこのスニーカーやローファー、ヒールのないバレェシューズを履きつけた私の足は、たまたま背伸びのためにあえて選んだウェッジソールのパンプスのせいで思うように走れなかった。
それでも待ち合わせの公園までは家からそんなに遠くなかったから。
私は時々転びそうになりながらも一生懸命走って目的地にたどり着いた。
「隆ちゃん!」
スマホを片手に佇む長身の幼なじみの姿を見たら、思わずそう叫ばずにはいられなくて――。
叫んだ後に人がいたら恥ずかしかったかもって思ったけれど幸い薄暗くなりつつある園内には隆ちゃんと私以外の人影はなくてホッとする。
一旦踏みとどまって、呼吸を整えてから彼の近くまで歩いて行って、おしとやかに「お待たせ」って声を掛けるんでもよかったんだけど……。
うまく走れなかった――最速で来られなかった――という負い目が私にそれを許さなかった。
公園の敷地に入るなり、はぁはぁと呼吸も荒いままに隆ちゃんに話し掛けて。
何かに追い立てられるように急いで幼なじみのそばに駆け寄ったら、転びそうになって支えられて。
隆ちゃんの厚い胸板と、大好きな香りにドキドキしていたら、当たり前だけど呆れられたように溜め息をつかれてしまった。
「お前、ホントいつ見てもせかせかしてるな?」
隆ちゃんにそう言われて、さっきメッセージアプリにほんのちょっとした意趣返しのつもりで送ったうり坊のスタンプと自分がリンクして、にわかに恥ずかしくなる。
こんなことなら別のスタンプにすれば良かった!って思ったけど後の祭り。
私は恥ずかしさを誤魔化すみたいに「隆ちゃんからの呼び出しなんて珍しかったから急いで来たのに!」って、さも呼び出した隆ちゃんに責任があるみたいな言い方をしてほっぺを膨らませた。
隆ちゃんから〝まきまきの公園までちょっと出てこられるか?〟と連絡をもらった時、私の心臓は信じられないぐらいドキドキと跳ねた。
物心ついた時から少し年上の意地悪な幼なじみの隆ちゃんのことが大好きだという自覚はあった。
けれど、幼い頃みたいに頻繁に会えなくなった途端その想いはどんどん強くなって。
離れたら気持ちも離れちゃうと思っていたのに、実際はそんなことないんだなって思ったの。
会えない分、会えた時の振り幅が半端ないし、会えると思った時の喜びがすごく大きい。
隆ちゃんが私のことなんて何とも思っていないことは薄々感じていたけれど、それでも男と女だもん。
絶対無理なんて言い切れないじゃない?とも思っていて。
そんな私だから。
今日約束をしていたみんなには申し訳ないけれど、隆ちゃんからの呼び出しとなると、何を差し置いてもそっちを優先したくなってしまった。
だって……隆ちゃんからのお誘いなんてもう2度とないかもしれないんだもの。
そう思ったら、居ても立ってもいられなくなったの。
***
チビのくせに、基本ぺたんこのスニーカーやローファー、ヒールのないバレェシューズを履きつけた私の足は、たまたま背伸びのためにあえて選んだウェッジソールのパンプスのせいで思うように走れなかった。
それでも待ち合わせの公園までは家からそんなに遠くなかったから。
私は時々転びそうになりながらも一生懸命走って目的地にたどり着いた。
「隆ちゃん!」
スマホを片手に佇む長身の幼なじみの姿を見たら、思わずそう叫ばずにはいられなくて――。
叫んだ後に人がいたら恥ずかしかったかもって思ったけれど幸い薄暗くなりつつある園内には隆ちゃんと私以外の人影はなくてホッとする。
一旦踏みとどまって、呼吸を整えてから彼の近くまで歩いて行って、おしとやかに「お待たせ」って声を掛けるんでもよかったんだけど……。
うまく走れなかった――最速で来られなかった――という負い目が私にそれを許さなかった。
公園の敷地に入るなり、はぁはぁと呼吸も荒いままに隆ちゃんに話し掛けて。
何かに追い立てられるように急いで幼なじみのそばに駆け寄ったら、転びそうになって支えられて。
隆ちゃんの厚い胸板と、大好きな香りにドキドキしていたら、当たり前だけど呆れられたように溜め息をつかれてしまった。
「お前、ホントいつ見てもせかせかしてるな?」
隆ちゃんにそう言われて、さっきメッセージアプリにほんのちょっとした意趣返しのつもりで送ったうり坊のスタンプと自分がリンクして、にわかに恥ずかしくなる。
こんなことなら別のスタンプにすれば良かった!って思ったけど後の祭り。
私は恥ずかしさを誤魔化すみたいに「隆ちゃんからの呼び出しなんて珍しかったから急いで来たのに!」って、さも呼び出した隆ちゃんに責任があるみたいな言い方をしてほっぺを膨らませた。
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