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12.月に一度の……?/written by 市瀬雪

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【side:久遠寺柚弦】


 春川さんに告白をしてから、二ヶ月が過ぎた。
 現在は前期試験期間中につき、空いている時間は校内の図書館で勉強をしていることが多い。

 しんと静まりかえったフロアの一角、テーブル席に座っている僕の横には、眠そうな顔をした楓馬ふうまが座っている。その正面には、春川さん萌々ちゃんと林田さん。

 取っている科目が九割方同じということもあり、そして〝あれ〟以来どうしても4人で過ごすことが多くなり――。結果、自然とこんなふうに4人そろって勉強する機会も多くなっていた。

 ちなみにひと月ほど前にみんなで飲み会(と言ってもノンアルコールだが)をした際、林田さんから呼び方についての提案があり、その頃から楓馬は林田さんのことをえっちゃん(えつこちゃんでなく)、林田さんは僕を柚弦くん、楓馬を楓馬くん、春川さんも僕のことを柚弦ゆづるくんと呼んでくれるようになっている。

 そうかと言って、僕はやっぱり春川さんは春川さん(心の中ではずっと前から萌々ももちゃんだけど)のままで――。


 だって、春川さんを萌々ももちゃんと呼ぶのは自分的にまだ早いと思っているし、何より春川さんをそう呼ぶとなると、必然と林田さんのこともあだ名で呼ばなくてはならなくなる気がするからだ。

 それを嫌なの? って言われたら、別に嫌なわけではないんだけど……。
 何て言うか、もともと女の子は一律苗字で呼ぶ方がいいかなって思っているところもあるしね。……その方が、余計なトラブルも少ないから。



「ねぇ、ごめんみんな。ちょっといいかな」

 17時を過ぎた頃、思い出したように口を開いたのは林田さんだった。

 残りの三人が、そろって手元から顔を上げる。林田さんの位置は、僕からすれば斜め前。
 自然と彼女そちらに視線が集まると、彼女は待っていたみたいに笑顔で言った。

「私から、一つ、提案があるの」


 ***

 試験期間が終わると、まもなく夏休みに入った。
 その週の、金曜日。

「あ……楓馬ふうまも遅れるって」

 18時に待ち合わせていた店に入ると、そこにいたのは林田さんだけだった。

 僕はたったいま届いたばかりの楓馬からのメッセージを確認し、独りごちるように言った。

「萌々も19時くらいになりそうって……」
「みたいだね」
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