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09.どうしたらいいの?/written by 鷹槻れん
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先日久遠寺くんと色々あって、精神的に疲れ切ってしまった私は、夜、あまり眠れなかった。
大学では久遠寺くん、ファミレスでの一件なんてなかったみたいに、いつも通りに接してくれて。
でも、それはあの〝提案〟の通りにしてくれているだけに過ぎないって私、知っているから。
だから……このままの平穏がいつまでも続かないと承知している分、心がちくちくと痛んで。
どうしよう。
思うけれど、誰も傷付けないで現状を打開できるなんて都合が良いこと、ないのも分かっているから余計にしんどいの。
***
「なんだ、今夜は肉じゃがか?」
特売のお肉などを買い込んだ買い物袋を手に、ヨロヨロと近所のスーパーから出てきたところで、不意に頭上から声が降ってくる。
顔を上げると、手元の袋を軽く覗き込まれていた。
「隆ちゃんっ」
大好きな隆ちゃんに、こんなボロボロなところを見られるとか最悪っ。
私は慌ててシャキッと背筋を伸ばすと、
「じ、実家、……行ってたの?」
この辺で隆ちゃんを見かけるのは多分そうかなって、恐る恐る問いかけた。
「あー、まぁ、ちょっと」
隆ちゃんにしてはどこか歯切れの悪い物言いに、私はキョトンとする。
「隆ちゃん、ひょっとして何か……私に言いたいこと……ある?」
言って、隆ちゃんの整ったシャープな顔立ちをじっと見上げて小首を傾げる。
彼は、そんな私にひとつ溜め息をついてから、揶揄うように言った。
「良かったな。相手、結構なイケメンじゃねぇか」
って。
え? イケメンって……どういうこと?
思ってから、すぐにハッとする。
まさか……アリアでのアレ、見られてた?
私は隆ちゃんの言葉に、思わず手にしていた買い物袋を取り落とした。
こんなに動揺したら「はい」って言ってるのと同じじゃないっ。
久遠寺くんとのアレを、隆ちゃんに見られていたのかもしれないって思ったら、指先までスーッと一気に冷えていくようで。
「バッカ、お前何やってんだよ。卵とか買ってねぇだろうな?」
言いながら、隆ちゃんが落とした買い物袋を拾い上げて、中身を気にしながら差し出してくれる。
私はそれを恐る恐る受け取りながら、小声でポツンとつぶやいた。
「きょ、協定があって……色々な問題が片付くまで周りにはアレ、内緒なのっ。だからっ」
私はギュッと袋の持ち手を握りしめると、
「隆ちゃんも見なかったことにしといてっ!」
まくし立てるようにそう言って、くるりと踵を返して逃げるように走り去った。
何でっ!?
何でっ!?
よりによって大好きな隆ちゃんにあんなところ、見られてたなんてっ!
告白されてたの?とか聞かれたわけじゃないから、実際にはどの辺りまで知られているのかは分からないけど……。
でも……男の子と2人きりなところ見られたとか……誤解されていても不思議じゃない。
内緒も何も、隆ちゃんと私の大学の友達には接点なんてないのだから、何にも支障なんてないのに。
絶対、なにバカなこと言ってんだよアイツって思われてるよね……。
でもね……。出来れば本当……、記憶から消し去って欲しいの。
隆ちゃん自身の記憶から。
お願いっ。
先日久遠寺くんと色々あって、精神的に疲れ切ってしまった私は、夜、あまり眠れなかった。
大学では久遠寺くん、ファミレスでの一件なんてなかったみたいに、いつも通りに接してくれて。
でも、それはあの〝提案〟の通りにしてくれているだけに過ぎないって私、知っているから。
だから……このままの平穏がいつまでも続かないと承知している分、心がちくちくと痛んで。
どうしよう。
思うけれど、誰も傷付けないで現状を打開できるなんて都合が良いこと、ないのも分かっているから余計にしんどいの。
***
「なんだ、今夜は肉じゃがか?」
特売のお肉などを買い込んだ買い物袋を手に、ヨロヨロと近所のスーパーから出てきたところで、不意に頭上から声が降ってくる。
顔を上げると、手元の袋を軽く覗き込まれていた。
「隆ちゃんっ」
大好きな隆ちゃんに、こんなボロボロなところを見られるとか最悪っ。
私は慌ててシャキッと背筋を伸ばすと、
「じ、実家、……行ってたの?」
この辺で隆ちゃんを見かけるのは多分そうかなって、恐る恐る問いかけた。
「あー、まぁ、ちょっと」
隆ちゃんにしてはどこか歯切れの悪い物言いに、私はキョトンとする。
「隆ちゃん、ひょっとして何か……私に言いたいこと……ある?」
言って、隆ちゃんの整ったシャープな顔立ちをじっと見上げて小首を傾げる。
彼は、そんな私にひとつ溜め息をついてから、揶揄うように言った。
「良かったな。相手、結構なイケメンじゃねぇか」
って。
え? イケメンって……どういうこと?
思ってから、すぐにハッとする。
まさか……アリアでのアレ、見られてた?
私は隆ちゃんの言葉に、思わず手にしていた買い物袋を取り落とした。
こんなに動揺したら「はい」って言ってるのと同じじゃないっ。
久遠寺くんとのアレを、隆ちゃんに見られていたのかもしれないって思ったら、指先までスーッと一気に冷えていくようで。
「バッカ、お前何やってんだよ。卵とか買ってねぇだろうな?」
言いながら、隆ちゃんが落とした買い物袋を拾い上げて、中身を気にしながら差し出してくれる。
私はそれを恐る恐る受け取りながら、小声でポツンとつぶやいた。
「きょ、協定があって……色々な問題が片付くまで周りにはアレ、内緒なのっ。だからっ」
私はギュッと袋の持ち手を握りしめると、
「隆ちゃんも見なかったことにしといてっ!」
まくし立てるようにそう言って、くるりと踵を返して逃げるように走り去った。
何でっ!?
何でっ!?
よりによって大好きな隆ちゃんにあんなところ、見られてたなんてっ!
告白されてたの?とか聞かれたわけじゃないから、実際にはどの辺りまで知られているのかは分からないけど……。
でも……男の子と2人きりなところ見られたとか……誤解されていても不思議じゃない。
内緒も何も、隆ちゃんと私の大学の友達には接点なんてないのだから、何にも支障なんてないのに。
絶対、なにバカなこと言ってんだよアイツって思われてるよね……。
でもね……。出来れば本当……、記憶から消し去って欲しいの。
隆ちゃん自身の記憶から。
お願いっ。
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