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03.満員電車/written by 鷹槻れん
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そのまま下車する人たちの流れが落ち着いたのを見計らっていたらしい久遠寺くんが、混み合った車内に戻ると「こっち」って私が立つ位置まで確保してくれて引っ張り上げてくれる。
彼は王子様タイプの優しそうなキラキラ男子。
ミディアムショートの暗茶の髪の毛が、真面目そうな好青年といった雰囲気。そうしてその見た目通り、物腰も仕草も柔らかくて、何よりとっても紳士的な男性です。
そんな彼は、私みたいなちんちくりんのことだって、まるでお姫様のように扱ってくれる。
そう。隆ちゃんとは大違い……。
心の中でふと先ほど出会ったばかりの兄的存在の幼なじみのことを思い浮かべる。
ぶつかりそうになった私に、隆ちゃんが言ったのは「ウリ坊」っていう屈辱的な言葉だった。
誰がウリ坊よ!
言われたときは隆ちゃんに出会えた嬉しさと、遅刻しそうっていう焦りで怒り損ねてしまったけれど、今更のように思い出してモヤモヤとしてきてしまう。
ウリ坊に見えてしまうような女の子のことなんて、きっと隆ちゃんは“小動物”くらいにしか思っていないはずだ。
それが、すごくすごく悔しい。
私にもっと身長があって、思わず触れてみたくなるぐらい大きくてふんわり柔らかな胸があったなら……。
あんな憎まれ口を叩かれずに、久遠寺くんみたいに「大丈夫?」とか聞いてくれていたのかしら。
一応「気をつけていけよ」とは言ってくれたけど! それにしても、よ!
「春川さん? ――もしかしてどこか痛いところでも……」
いつの間にか眉間に皺を寄せてしまっていたみたいで、久遠寺くんに物凄く心配そうな顔をされてしまった。
「あっ、ち、違っ。私ウリ坊じゃないし、――」
それにどこも何ともなくてっ。
助けてもらったくせに他所事を考えてしまって、あまつさえ変なことまで口走ってしまった。
「……ウリ坊?」
久遠寺くんにキョトンとされて、ブワリと顔が熱を持つ。
恥ずかしさに慌てて口を押さえようたけれど、ギュッと周りから押しつぶされるみたいにすし詰め状態。久遠寺くんの腕の中も思いのほか狭くて、手なんて上げられそうにない。
顔を隠したいのに隠せないとか……満員電車って本当デンジャラス!
ついでに言うと、顔をうつむけたくてもそれすら許されないほどの乗車率。鉄道会社め! 乗客をもっと大事にしなさいよ!
半ば八つ当たりのようにそう思ったのと同時、電車が大きく傾いて、私はムギューッと押しつぶされそうになった。
こっ、これは心の中で電車の母体に悪態をついた報復ですかっ!?
「……ちょっとごめん」
と、そんな声と同時に抱きしめられたまま壁際に押しやられた私は、久遠寺くんが周りの乗客たちからガードするみたいに私の前に立ち塞がってくれたのに気がついた。
彼は王子様タイプの優しそうなキラキラ男子。
ミディアムショートの暗茶の髪の毛が、真面目そうな好青年といった雰囲気。そうしてその見た目通り、物腰も仕草も柔らかくて、何よりとっても紳士的な男性です。
そんな彼は、私みたいなちんちくりんのことだって、まるでお姫様のように扱ってくれる。
そう。隆ちゃんとは大違い……。
心の中でふと先ほど出会ったばかりの兄的存在の幼なじみのことを思い浮かべる。
ぶつかりそうになった私に、隆ちゃんが言ったのは「ウリ坊」っていう屈辱的な言葉だった。
誰がウリ坊よ!
言われたときは隆ちゃんに出会えた嬉しさと、遅刻しそうっていう焦りで怒り損ねてしまったけれど、今更のように思い出してモヤモヤとしてきてしまう。
ウリ坊に見えてしまうような女の子のことなんて、きっと隆ちゃんは“小動物”くらいにしか思っていないはずだ。
それが、すごくすごく悔しい。
私にもっと身長があって、思わず触れてみたくなるぐらい大きくてふんわり柔らかな胸があったなら……。
あんな憎まれ口を叩かれずに、久遠寺くんみたいに「大丈夫?」とか聞いてくれていたのかしら。
一応「気をつけていけよ」とは言ってくれたけど! それにしても、よ!
「春川さん? ――もしかしてどこか痛いところでも……」
いつの間にか眉間に皺を寄せてしまっていたみたいで、久遠寺くんに物凄く心配そうな顔をされてしまった。
「あっ、ち、違っ。私ウリ坊じゃないし、――」
それにどこも何ともなくてっ。
助けてもらったくせに他所事を考えてしまって、あまつさえ変なことまで口走ってしまった。
「……ウリ坊?」
久遠寺くんにキョトンとされて、ブワリと顔が熱を持つ。
恥ずかしさに慌てて口を押さえようたけれど、ギュッと周りから押しつぶされるみたいにすし詰め状態。久遠寺くんの腕の中も思いのほか狭くて、手なんて上げられそうにない。
顔を隠したいのに隠せないとか……満員電車って本当デンジャラス!
ついでに言うと、顔をうつむけたくてもそれすら許されないほどの乗車率。鉄道会社め! 乗客をもっと大事にしなさいよ!
半ば八つ当たりのようにそう思ったのと同時、電車が大きく傾いて、私はムギューッと押しつぶされそうになった。
こっ、これは心の中で電車の母体に悪態をついた報復ですかっ!?
「……ちょっとごめん」
と、そんな声と同時に抱きしめられたまま壁際に押しやられた私は、久遠寺くんが周りの乗客たちからガードするみたいに私の前に立ち塞がってくれたのに気がついた。
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