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42.みんなまとめて地獄へ送ってあげる
醜い被害者面
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「岳斗……さん」
杏子の声に何も言わずギュッと手を握る指先に力を込めると、岳斗は目の前にいる安井や笹尾らを静かに睨めつけた。
今や岳斗の手にしたスマートフォンからは、笹尾からの安井への不平不満がダラダラと流れ続けていて……【いい加減乗り換えてぇのよ】という言葉が聴こえてきたと同時、「最低!」と言う声とともに、パンッと、惚れ惚れするような平手打ちの音が廊下へ響き渡った。
笹尾は、「わぁー、痛そう」という周りの驚きの声に包まれてもなお現状が把握できないのか、突然の安井からの暴行に驚いた様子で頬を押さえたまま固まっている。
志波と笹尾が【女が男のすることに口出しすんな】だの、杏子の従順そうなところに目を付けただの言う声が続くと、ビンタされた笹尾に同情する声なんて微塵もわいてこなくて、そればかりか「笹尾さんも志波さんも女の敵ね」と囁き合う女性陣の非難の声が強くなっていった。
この後は杏子の容姿についての、実に下世話な話題が続くだけだったはずだ。そんなのを杏子はもちろんのこと、野次馬どもにも聞かせたくなかった岳斗は、これで十分だとばかりに停止ボタンを押す。
「さて、これで杏子ちゃんの方こそが被害者だったって分かって頂けましたか?」
安井らに向けて冷え冷えとした声音で告げた言葉は、実際にはこの場にいる皆へ向けたのと同義だった。
「わ、分かったわよ! でも! 違うなら違うって美住さん自身が否定すれば済んだだけなんじゃないの!? こんなみんなを巻き込んでショーじみたことするなんて……悲劇のヒロインぶるのも大概にしたらどう!?」
自分が信じていた笹尾からコケにされていたことを知って、あまつさえそれを皆の前で公表されたことが相当腹立たしかったのだろう。
この期に及んで物凄い剣幕でそんなバカなことを訴えてくる安井に、岳斗は心底吐き気を覚えた。
「杏子ちゃんの言うことを誰一人として聞こうとしなかったのに? そういう状況を作り出した張本人は貴女だと思っていたんですけど違いましたか?」
岳斗の言葉に、ギャラリーが「確かにそうよね。安井さんの取り巻きをしてる古田さんと木坂さんが中心になって美住さんの悪口を言いふらしてるの見たもの」だの「私もあの二人から美住さんを無視するように言われた」だの囁き合う声が聞えてきて、取り巻き二人がそそくさと視線を落とすのが分かった。
「わ、私はっ! 別に古田さんや木坂さんにそんな指示なんて出してないわよ!? ね!? そうよね!?」
それを形勢不利と見るや否や、安井が二人に詰め寄って。うつむいたままの木坂が、「し、指示はされてないけど……安井さんが美住さんに罰が当たればいい言ったから。私、安井さんのためを思って動いただけだよ?」とゴニョゴニョ言って、古田もそれに便乗してコクコクとうなずく。
安井はそんな二人に「頼んでもいないのに……勝手に酷い!」と被害者面を決め込んだ。
途端、古田がしゃがみ込んでワッと泣き出して、木坂は安井を見詰めたまま呆然自失の体で立ち尽くす。
杏子の声に何も言わずギュッと手を握る指先に力を込めると、岳斗は目の前にいる安井や笹尾らを静かに睨めつけた。
今や岳斗の手にしたスマートフォンからは、笹尾からの安井への不平不満がダラダラと流れ続けていて……【いい加減乗り換えてぇのよ】という言葉が聴こえてきたと同時、「最低!」と言う声とともに、パンッと、惚れ惚れするような平手打ちの音が廊下へ響き渡った。
笹尾は、「わぁー、痛そう」という周りの驚きの声に包まれてもなお現状が把握できないのか、突然の安井からの暴行に驚いた様子で頬を押さえたまま固まっている。
志波と笹尾が【女が男のすることに口出しすんな】だの、杏子の従順そうなところに目を付けただの言う声が続くと、ビンタされた笹尾に同情する声なんて微塵もわいてこなくて、そればかりか「笹尾さんも志波さんも女の敵ね」と囁き合う女性陣の非難の声が強くなっていった。
この後は杏子の容姿についての、実に下世話な話題が続くだけだったはずだ。そんなのを杏子はもちろんのこと、野次馬どもにも聞かせたくなかった岳斗は、これで十分だとばかりに停止ボタンを押す。
「さて、これで杏子ちゃんの方こそが被害者だったって分かって頂けましたか?」
安井らに向けて冷え冷えとした声音で告げた言葉は、実際にはこの場にいる皆へ向けたのと同義だった。
「わ、分かったわよ! でも! 違うなら違うって美住さん自身が否定すれば済んだだけなんじゃないの!? こんなみんなを巻き込んでショーじみたことするなんて……悲劇のヒロインぶるのも大概にしたらどう!?」
自分が信じていた笹尾からコケにされていたことを知って、あまつさえそれを皆の前で公表されたことが相当腹立たしかったのだろう。
この期に及んで物凄い剣幕でそんなバカなことを訴えてくる安井に、岳斗は心底吐き気を覚えた。
「杏子ちゃんの言うことを誰一人として聞こうとしなかったのに? そういう状況を作り出した張本人は貴女だと思っていたんですけど違いましたか?」
岳斗の言葉に、ギャラリーが「確かにそうよね。安井さんの取り巻きをしてる古田さんと木坂さんが中心になって美住さんの悪口を言いふらしてるの見たもの」だの「私もあの二人から美住さんを無視するように言われた」だの囁き合う声が聞えてきて、取り巻き二人がそそくさと視線を落とすのが分かった。
「わ、私はっ! 別に古田さんや木坂さんにそんな指示なんて出してないわよ!? ね!? そうよね!?」
それを形勢不利と見るや否や、安井が二人に詰め寄って。うつむいたままの木坂が、「し、指示はされてないけど……安井さんが美住さんに罰が当たればいい言ったから。私、安井さんのためを思って動いただけだよ?」とゴニョゴニョ言って、古田もそれに便乗してコクコクとうなずく。
安井はそんな二人に「頼んでもいないのに……勝手に酷い!」と被害者面を決め込んだ。
途端、古田がしゃがみ込んでワッと泣き出して、木坂は安井を見詰めたまま呆然自失の体で立ち尽くす。
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