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39.コノエ産業開発株式会社
神様が味方?
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エレベーターホールと階段の間には社内のフロアマップが貼られていた。経理課が何階にあるか知りたくて受付けに挨拶した岳斗だったけれど、もしかしたらしれっとそのまま侵入しても、差し支えなかったかもしれない。
受付け通過後に社員証をかざすなどするゲートがあったわけでもないことを考えると――。
(ここ、セキュリティ面が微妙だな。――けど……まぁ相手側の防犯面はどうあれ、窓口通すのは社会人としては常識か)
杏子のためならば少々問題を起こしても構わないと思っているのと同じ頭でそんなことを考えてから、岳斗は我ながら考え方が破綻してるな、と苦笑せずにはいられない。
受付けで土恵商事の名刺を出したのは、暴走し過ぎないようにという自制のためでもあったことを思い出した岳斗は、(大葉さんの信頼を裏切らないようにしないと)と気持ちを引き締めた。
階段をゆっくりと上がりながらタクシー内で杏子に折り返した電話のことを反芻した岳斗である。
受付けで用件を伝えた時、すんなり話が通ったことからも、杏子はちゃんと岳斗の言い付け通りアポが取られている体で受付けに根回ししてくれたんだろう。
そういうことが出来たと言うことは、音声データを送ってきた時のような逼迫した状況にはないはずだ。いくら防犯意識が低い会社でも、アポなしの人間をすんなりフロア内へ野放しにすることはないと信じれば、の話だが。
電話した時は会議室にいると言っていた杏子に、「個室に一人は危ないかも知れないから」と言って「人がいるところにいて?」とお願いしたのだが、真面目な彼女のことだ。ちゃんと言いつけは守っているだろう。
(さて、どこにいるかな?)
スーツの内ポケットに仕舞っていたスマートフォンを取り出しながら(もう一度杏子ちゃんに電話をかけてみる?)と思った岳斗だけれど、彼女の性格を考えると経理課の自席に戻っていそうな気がして、(電話は極力控えた方が無難かな?)と考え直す。
杏子が今、職場でどんな扱いをされているのか岳斗には分からない。そんな状況で私的な電話を受けさせるのは、攻撃される隙を与えかねないではないか。
(とりあえず杏子ちゃんが送ってきた音声データに入ってた〝ササオ〟ってヤツが何者かを探るのが最優先事項かな)
中村経理課長が杏子に不埒なことをしようとしたとき、『先日のササオくんとの件でみんなとギクシャクしてるみたいだけど』とか何とか言って、彼女を気遣う素振りを見せていた。あの口振りからすると、杏子はササオのせいで、社内で孤立しているのではないだろうか。だとすれば、そこを調べないわけにはいかない。
そう思っていた岳斗だったのだけれど――。
「ホント笹尾さん、災難でしたねぇー」
どうやらどこかにいるらしい〝神様〟は、岳斗の味方らしい。
受付け通過後に社員証をかざすなどするゲートがあったわけでもないことを考えると――。
(ここ、セキュリティ面が微妙だな。――けど……まぁ相手側の防犯面はどうあれ、窓口通すのは社会人としては常識か)
杏子のためならば少々問題を起こしても構わないと思っているのと同じ頭でそんなことを考えてから、岳斗は我ながら考え方が破綻してるな、と苦笑せずにはいられない。
受付けで土恵商事の名刺を出したのは、暴走し過ぎないようにという自制のためでもあったことを思い出した岳斗は、(大葉さんの信頼を裏切らないようにしないと)と気持ちを引き締めた。
階段をゆっくりと上がりながらタクシー内で杏子に折り返した電話のことを反芻した岳斗である。
受付けで用件を伝えた時、すんなり話が通ったことからも、杏子はちゃんと岳斗の言い付け通りアポが取られている体で受付けに根回ししてくれたんだろう。
そういうことが出来たと言うことは、音声データを送ってきた時のような逼迫した状況にはないはずだ。いくら防犯意識が低い会社でも、アポなしの人間をすんなりフロア内へ野放しにすることはないと信じれば、の話だが。
電話した時は会議室にいると言っていた杏子に、「個室に一人は危ないかも知れないから」と言って「人がいるところにいて?」とお願いしたのだが、真面目な彼女のことだ。ちゃんと言いつけは守っているだろう。
(さて、どこにいるかな?)
スーツの内ポケットに仕舞っていたスマートフォンを取り出しながら(もう一度杏子ちゃんに電話をかけてみる?)と思った岳斗だけれど、彼女の性格を考えると経理課の自席に戻っていそうな気がして、(電話は極力控えた方が無難かな?)と考え直す。
杏子が今、職場でどんな扱いをされているのか岳斗には分からない。そんな状況で私的な電話を受けさせるのは、攻撃される隙を与えかねないではないか。
(とりあえず杏子ちゃんが送ってきた音声データに入ってた〝ササオ〟ってヤツが何者かを探るのが最優先事項かな)
中村経理課長が杏子に不埒なことをしようとしたとき、『先日のササオくんとの件でみんなとギクシャクしてるみたいだけど』とか何とか言って、彼女を気遣う素振りを見せていた。あの口振りからすると、杏子はササオのせいで、社内で孤立しているのではないだろうか。だとすれば、そこを調べないわけにはいかない。
そう思っていた岳斗だったのだけれど――。
「ホント笹尾さん、災難でしたねぇー」
どうやらどこかにいるらしい〝神様〟は、岳斗の味方らしい。
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