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32.嫌だから、嫌なんです!
たまたま?
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自分の横には大葉の愛犬キュウリちゃんもいて、まるで『早く話してスッキリしちゃいなさいな?』と言わんばかりの表情で飼い主を見上げていた。
羽理は時折、そんなキュウリちゃんが自分の味方に思えて仕方がない。
大葉はまだ思考がまとまっていないのか、自分用のアイスコーヒーを一気に半分ばかりガブ飲みすると、ほぅっと吐息を落としてちょっとだけ思案深げに瞳を揺らせた。
「――何かたまたまらしいんだけどな。岳斗のやつ、俺たちと別れた直後の……落ち込んだ様子の杏子に出会ったそうなんだ」
「え? 倍相課長がたまたま杏子さんに、です、か……?」
「そう、岳斗がたまたま杏子に」
羽理に応えてくれながら、大葉はどこか自分に言い聞かせているようにも見えて――。
(ひょっとして大葉、他にも何か隠してる?)
女の勘とでも言おうか。そんな風に思った羽理だったのだけれど、実はビンゴだった。
***
大葉は岳斗から、『荒木さんの家のすぐ近所にある居間猫神社で杏子ちゃんと出会いました』と聞かされたのだが、羽理にはそれが言えなかった。
『実は……余り言いたくないんですけど、杏子ちゃんの住んでるところ、荒木さんの家の物凄い近くなんです。それこそ偶然鉢合わせても不思議じゃないくらいの場所なんで……僕としては出来れば荒木さんを大葉さんの家に引っ越しさせちゃって欲しいんですよね。正直な話、たまたまとはいえ杏子ちゃんと大葉さんが出会っちゃったりしたら……杏子ちゃん、心がかき乱されてしまうと思うんです。僕はこれ以上大葉さんには杏子ちゃんに干渉して欲しくないですし、実際問題荒木さんだって大葉さんのお見合い相手が自分家のすぐ近くに住んでるって知ったらきっといい気はしないでしょう?』
電話の切り際、岳斗から言われた言葉が頭の中をぐるぐる回って……それがどうしても歯切れの悪い言動に繋がってしまった。恋心にはめちゃくちゃ疎いくせに、変なことには鋭い羽理に不審がられていることにも気付けないまま、大葉はぼんやりと考える。
(杏子の家が居間猫神社の近くって……実際どの辺りなんだよ!)
居間猫神社といえば、大葉と羽理を結び付けた猫神様の御座します有り難ぁーい神社だ。
場所的には羽理の住んでいるアパートから目と鼻の先。そこで杏子と出会ったとなると、本当に羽理の住まいと近いところに杏子は住んでいるんだろう。
岳斗は杏子の家がどこなのかだけは大葉に明かしたくないみたいで、そこは最後までぼかし続けた。
羽理は時折、そんなキュウリちゃんが自分の味方に思えて仕方がない。
大葉はまだ思考がまとまっていないのか、自分用のアイスコーヒーを一気に半分ばかりガブ飲みすると、ほぅっと吐息を落としてちょっとだけ思案深げに瞳を揺らせた。
「――何かたまたまらしいんだけどな。岳斗のやつ、俺たちと別れた直後の……落ち込んだ様子の杏子に出会ったそうなんだ」
「え? 倍相課長がたまたま杏子さんに、です、か……?」
「そう、岳斗がたまたま杏子に」
羽理に応えてくれながら、大葉はどこか自分に言い聞かせているようにも見えて――。
(ひょっとして大葉、他にも何か隠してる?)
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(杏子の家が居間猫神社の近くって……実際どの辺りなんだよ!)
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