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31.メッセージ

マンションに着いてからでも遅くない

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「俺があいつに感じてるのは……えっと……あれだ! 単なる友情のきずなってやつ! ――なぁ羽理うり。さっきも言っただろ? 俺が男として愛情を注ぎたいのも、思い切り愛したいのも……心の底から抱きたい、欲しいって思えるのも、お前だけだ」

 そのまま持ち上げられた手の甲へチュッと口付けられた羽理は、「いい加減分かれよ」とつやのあるバリトンボイスで懇願こんがんされて、身体がブワリと熱を持った。

大葉たいよぉ……」

 身体の芯がうずくような劣情きもちを追い払いたいみたいに吐息へ乗せてつぶやいた愛しい人の名が、トロンととろけてしまったのは仕方がないだろう。


***


 どうやら羽理うりの嫉妬の対象は、異性あんずだけに留まらないのだと知って、大葉たいようは不謹慎にも口の端が緩むのを止められなかった。

 運転中じゃなかったら、可愛い顔をして不安がる羽理のことを腕の中へ抱き締めて、思う存分自分がどれだけ羽理のことだけを愛しているのか身体で教えてやれたのに!
 そう思って吐息を落としてから、大葉たいようは今更ながらふと名案を思い付いた。

(それすんの、別にマンションに着いてからでも遅くないよな?)

 岳斗がくとに、送られてきたメッセージの詳細を聞いてから、思う存分――。

 そこでちらりと横目でとした羽理の色っぽい横顔を盗み見したら、期せずして彼女のひざの上に鎮座した愛犬まなむすめのキュウリと視線がかち合ってしまった。

『パパしゃん、しゃてはイケナイことを考えてましゅね?』

 キュウリのうるんだ黒瞳こくどうに対向車のヘッドライトが当たって、曇りなきつぶらな瞳がキラリと光る。
 そのきらめきさえ、『あたちはおしゃの考えてること、まりゅっとお見通しでしゅよ!?』と確信を持たれているように思えて、大葉たいようは慌てて視線を前方へ戻した。

 そうしておいて心のなか。大葉たいようは『さすがに今夜は無理させるつもりはありまちぇんからね? どうか目をつぶってて下しゃい、ウリちゃん!』と懸命に言い訳をした。


***
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