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31.メッセージ
いい加減仲直りしろ
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さて、羽理と二人で実家をお暇しようとしたら、柚子が「私も……」とか言うから、大葉は丁寧にお断り申し上げた。
「悪いけど柚子は乗せらんねぇよ。いい加減旦那さんの待つ自宅へ帰れ」
「何でよ!」
「羽理と二人きりになりたいからに決まってんだろ! っていうか」
そこでじっと姉を見つめると、大葉は小さく吐息を落とした。
「どんな喧嘩したのかは知らねぇけど……いい加減仲直りしないと柚子も落ち着かねぇだろ?」
羽理とほんの数時間すれ違っただけで、大葉は物凄く辛かった。
ここ数日柚子がやたらと自分たちにお節介なのは、きっと旦那のことが気になっている裏返しに違いない。
「お義兄さんだって柚子と今のままはしんどいと思うぞ?」
「何よ、たいちゃんのくせに……分かったようなこと言って」
「少なくともパートナーにそっぽを向かれる苦痛は身をもって実感したばかりなんだけど?」
大葉の言葉に羽理が申し訳なさそうに「ごめんなさい」とつぶやくから、大葉は「俺こそすまん」と素直に謝った。
そんな三人の様子を、足元のキュウリが交互にキョロキョロと見上げている。
「あー、もう! すぐイチャイチャする!」
「ん? 俺と羽理のラブラブぶりを見て、柚子も優一さんが恋しくなったか?」
「うるさい!」
姉の旦那の名をわざと出してニヤリとしてみせた大葉に、柚子がどこか照れたような顔で噛みついて。
羽理がすぐ横で「大葉!」と照れ隠しみたいに大葉の手をペシッと叩いた。
そんな三人の様子を見ていた果恵が、夫の聡志へしたり顔で目配せをして、聡志が「柚子。さっき、父さん、優一くんと電話で話したからもうちょっとしたら柚子にもお迎えが来ると思うぞ?」とにっこり笑う。
「えっ、ちょっと! 父さんまでなに勝手なことを!」
「父さんと母さんも夫婦水入らずで過ごしたいんだ。仕方ないだろう?」
両親にまで仲直りしたいけれど素直になり切れない気持ちを見透かされたみたいな気がして、柚子はぷぅっと頬を膨らませた。
と、そこでちょうどブブッと誰かの携帯のバイブレーションの音が響いて、思わず自分の携帯へ視線を落とした柚子は、「ほら、貴女も優一さんからの連絡、期待してるんじゃない」と果恵にクスクス笑われてしまう。
結局通知が来ていたのは大葉のスマートフォンで、メッセージの送り主は優一ではなく部下の倍相岳斗だった。
***
---------------------
※ずいぶん前のことなので一応補足を。
柚子の喧嘩については【17.ちぐはぐな二人】の章の「下着がない」に、サラリとですが書かれています。
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「悪いけど柚子は乗せらんねぇよ。いい加減旦那さんの待つ自宅へ帰れ」
「何でよ!」
「羽理と二人きりになりたいからに決まってんだろ! っていうか」
そこでじっと姉を見つめると、大葉は小さく吐息を落とした。
「どんな喧嘩したのかは知らねぇけど……いい加減仲直りしないと柚子も落ち着かねぇだろ?」
羽理とほんの数時間すれ違っただけで、大葉は物凄く辛かった。
ここ数日柚子がやたらと自分たちにお節介なのは、きっと旦那のことが気になっている裏返しに違いない。
「お義兄さんだって柚子と今のままはしんどいと思うぞ?」
「何よ、たいちゃんのくせに……分かったようなこと言って」
「少なくともパートナーにそっぽを向かれる苦痛は身をもって実感したばかりなんだけど?」
大葉の言葉に羽理が申し訳なさそうに「ごめんなさい」とつぶやくから、大葉は「俺こそすまん」と素直に謝った。
そんな三人の様子を、足元のキュウリが交互にキョロキョロと見上げている。
「あー、もう! すぐイチャイチャする!」
「ん? 俺と羽理のラブラブぶりを見て、柚子も優一さんが恋しくなったか?」
「うるさい!」
姉の旦那の名をわざと出してニヤリとしてみせた大葉に、柚子がどこか照れたような顔で噛みついて。
羽理がすぐ横で「大葉!」と照れ隠しみたいに大葉の手をペシッと叩いた。
そんな三人の様子を見ていた果恵が、夫の聡志へしたり顔で目配せをして、聡志が「柚子。さっき、父さん、優一くんと電話で話したからもうちょっとしたら柚子にもお迎えが来ると思うぞ?」とにっこり笑う。
「えっ、ちょっと! 父さんまでなに勝手なことを!」
「父さんと母さんも夫婦水入らずで過ごしたいんだ。仕方ないだろう?」
両親にまで仲直りしたいけれど素直になり切れない気持ちを見透かされたみたいな気がして、柚子はぷぅっと頬を膨らませた。
と、そこでちょうどブブッと誰かの携帯のバイブレーションの音が響いて、思わず自分の携帯へ視線を落とした柚子は、「ほら、貴女も優一さんからの連絡、期待してるんじゃない」と果恵にクスクス笑われてしまう。
結局通知が来ていたのは大葉のスマートフォンで、メッセージの送り主は優一ではなく部下の倍相岳斗だった。
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※ずいぶん前のことなので一応補足を。
柚子の喧嘩については【17.ちぐはぐな二人】の章の「下着がない」に、サラリとですが書かれています。
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