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31.メッセージ
誰にでも優しい人間は
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杏子の口振りからすると、彼女のことを憎からず思っていたらしい恵介伯父が、その感情のおもむくまま。杏子に言わなくてもいいことを言ってしまったのは明白だったし、そのことが杏子を余計に傷付ける要因になってしまったのだから。
羽理の罪悪感に引っ張られるように、大葉がそんな風に思ってしまったのを見透かしたみたいに、柚子があからさまに吐息を落とした。
「たいちゃん。お姉ちゃん、貴方が何を考えているのか大体想像がつくんだけど……誰かを選ぶってことは誰かを切るってことなの。どちらを選ぶか決めたなら、選ばなかった方へは中途半端な同情をしちゃダメ」
「柚子……」
「あっちにもこっちにもいい顔をするっていうのはね、たいちゃんの心は安らぐかも知れないけど巻き込まれた方は振り回されて、たまったものじゃないの」
誰にでも優しい人間は、実際のところ誰にも優しくないのだと示唆された大葉は、小さく吐息を落とした。
柚子の言う通り。下手に杏子に心を砕いて、羽理を不安にさせたのでは本末転倒だ。
「肝に銘じとく」
大葉は姉のアドバイスを素直に受け取ることにした。
***
結局夕飯を食べていきなさいと言われて、実家で羽理とともに夕飯を済ませた大葉だったのだが、おかずの大半は自分が忙しい両親のために作り置きしておいたものばかりで。何となく納得がいかなくて結局あり合わせのもので少しだけアレンジしてちょっぴり体裁を整えたりした。『こんなんだったら一から作っても一緒だったんじゃないか?』とか思ったりしたのはここだけの話だ。
食事の途中で父・屋久蓑聡志も帰ってきて、元々、【今日は彼氏のご家族との顔合わせ!】みたいに構えて来たわけではなかった羽理は当然というべきか、やたらと緊張している様子だった。
そんな様子を見ていた大葉は、予定外とはいえ両親に自分が見初めた婚約者の紹介ができて一石二鳥。一気に外堀を固められた気がして内心しめしめと思っていたりしたのだが、羽理に怒られそうなので黙っておいた。
***
「羽理ちゃん、また遊びに来てね」
母・果恵にニコッと微笑みかけられて、彼女の背後に立つ父・聡志からも静かにうなずかれた羽理が、「ひゃ、ひゃいっ! 有難うございましゅっ」と、やたら裏返った声でしどろもどろ答えているのが、無性に可愛く思えた大葉である。
上司であるはずの自分と裸で対峙した初っ端のときに、バスローブ姿でぶっ飛んだ発言をしまくっていた女性と同一人物とは思えないカチンコチンぶりに、羽理が自分との結婚を意識してくれているような気がして嬉しかったからだ。
羽理の罪悪感に引っ張られるように、大葉がそんな風に思ってしまったのを見透かしたみたいに、柚子があからさまに吐息を落とした。
「たいちゃん。お姉ちゃん、貴方が何を考えているのか大体想像がつくんだけど……誰かを選ぶってことは誰かを切るってことなの。どちらを選ぶか決めたなら、選ばなかった方へは中途半端な同情をしちゃダメ」
「柚子……」
「あっちにもこっちにもいい顔をするっていうのはね、たいちゃんの心は安らぐかも知れないけど巻き込まれた方は振り回されて、たまったものじゃないの」
誰にでも優しい人間は、実際のところ誰にも優しくないのだと示唆された大葉は、小さく吐息を落とした。
柚子の言う通り。下手に杏子に心を砕いて、羽理を不安にさせたのでは本末転倒だ。
「肝に銘じとく」
大葉は姉のアドバイスを素直に受け取ることにした。
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結局夕飯を食べていきなさいと言われて、実家で羽理とともに夕飯を済ませた大葉だったのだが、おかずの大半は自分が忙しい両親のために作り置きしておいたものばかりで。何となく納得がいかなくて結局あり合わせのもので少しだけアレンジしてちょっぴり体裁を整えたりした。『こんなんだったら一から作っても一緒だったんじゃないか?』とか思ったりしたのはここだけの話だ。
食事の途中で父・屋久蓑聡志も帰ってきて、元々、【今日は彼氏のご家族との顔合わせ!】みたいに構えて来たわけではなかった羽理は当然というべきか、やたらと緊張している様子だった。
そんな様子を見ていた大葉は、予定外とはいえ両親に自分が見初めた婚約者の紹介ができて一石二鳥。一気に外堀を固められた気がして内心しめしめと思っていたりしたのだが、羽理に怒られそうなので黙っておいた。
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「羽理ちゃん、また遊びに来てね」
母・果恵にニコッと微笑みかけられて、彼女の背後に立つ父・聡志からも静かにうなずかれた羽理が、「ひゃ、ひゃいっ! 有難うございましゅっ」と、やたら裏返った声でしどろもどろ答えているのが、無性に可愛く思えた大葉である。
上司であるはずの自分と裸で対峙した初っ端のときに、バスローブ姿でぶっ飛んだ発言をしまくっていた女性と同一人物とは思えないカチンコチンぶりに、羽理が自分との結婚を意識してくれているような気がして嬉しかったからだ。
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