191 / 292
29.心配しなくていいと伝えたいだけなのに
予想外の叱咤激励
しおりを挟む
どうやら果恵、各方面から羽理の引き留めは頼まれたものの、その経緯までは詳しく聞かされていないらしい。
羽理は気遣うような眼差しで自分を見つめてくる果恵を見て、正直戸惑った。
そもそも羽理が一方的にプンスカしているだけで、喧嘩ではない。
それに、例え話したとしてもきっとまた、『大葉は羽理が不安に感じるようなことをする子じゃない』と言われるのが落ちなのだ。
羽理だってそんなことは分かっている。分かっているけれど……心が納得しないのだから仕方がないではないか。
「たいちゃんがね、恵介伯父さんからお見合いを打診されてたのを羽理ちゃんに伝えてなかったの」
黙り込んでしまった羽理を見かねたんだろう。「あちち……」と言いながら電子レンジから温めたものを取り出した柚子が端的にそう説明して、それを聞いた果恵が「まぁ!」と口に手を当てて瞳を見開いた。
(どうせまた、大葉が庇われて、私の気持ちはおざなりになっちゃうんだ)
そう思ってしゅんとした羽理だったのだけれど――。
「それは大葉が良くないわねっ!?」
ややして、やや食い気味につぶやいた果恵が、ギュッと羽理の手を握りしめてきて、「そんな大事なこと隠しておかれたとか……知ったとき、辛かったでしょう!? 怒って当然だわ! 本当、うちの馬鹿息子がごめんなさいね? あの子が来たら思いっきり責めてやりましょう!? 私も加勢するから!」と、握ったままの羽理の手をブンブン振りながら激励してくれる。
柚子からは大葉を擁護する言葉ばかりだったから、羽理は勝手に、きっと果恵からもそうされるものだと思い込んでいた。
でも実際はそうではなくて、自分の気持ちに寄り添ってもらえたことが、鼻の奥がツンと痛むくらい嬉しくて――。
でも、それと同時に〝あの子が来たら〟という文言が引っかかってしまう。
「あ、あの……果恵、さん……今」
「やだ、羽理ちゃん! 果恵さんだなんて他人行儀よぅ? 『お義母さん』って呼んで?」
ぎゅうっと掴まれたままの両手に力を込められた羽理は、戸惑いながらも「お、かあ、さま……?」と呼び掛けたのだけれど。
途端、果恵がぱぁっと瞳を輝かせて「なぁに、羽理ちゃん?」とこちらを見詰めてくるから。
羽理は大葉と似た美貌の義母(?)の視線にソワソワしながら「あの……聞き間違いだったらすみません。もしかして……大葉、こちらに向かっていたり……します、か?」としどろもどろになりながら言葉を紡いだ。
「ええ、さっき、羽理ちゃんのこと引き留めといて欲しいって連絡があったから。……もう着く頃じゃないかしら?」
のほほんとした調子で小首をかしげる果恵に、羽理は瞳を見開いた。
羽理は気遣うような眼差しで自分を見つめてくる果恵を見て、正直戸惑った。
そもそも羽理が一方的にプンスカしているだけで、喧嘩ではない。
それに、例え話したとしてもきっとまた、『大葉は羽理が不安に感じるようなことをする子じゃない』と言われるのが落ちなのだ。
羽理だってそんなことは分かっている。分かっているけれど……心が納得しないのだから仕方がないではないか。
「たいちゃんがね、恵介伯父さんからお見合いを打診されてたのを羽理ちゃんに伝えてなかったの」
黙り込んでしまった羽理を見かねたんだろう。「あちち……」と言いながら電子レンジから温めたものを取り出した柚子が端的にそう説明して、それを聞いた果恵が「まぁ!」と口に手を当てて瞳を見開いた。
(どうせまた、大葉が庇われて、私の気持ちはおざなりになっちゃうんだ)
そう思ってしゅんとした羽理だったのだけれど――。
「それは大葉が良くないわねっ!?」
ややして、やや食い気味につぶやいた果恵が、ギュッと羽理の手を握りしめてきて、「そんな大事なこと隠しておかれたとか……知ったとき、辛かったでしょう!? 怒って当然だわ! 本当、うちの馬鹿息子がごめんなさいね? あの子が来たら思いっきり責めてやりましょう!? 私も加勢するから!」と、握ったままの羽理の手をブンブン振りながら激励してくれる。
柚子からは大葉を擁護する言葉ばかりだったから、羽理は勝手に、きっと果恵からもそうされるものだと思い込んでいた。
でも実際はそうではなくて、自分の気持ちに寄り添ってもらえたことが、鼻の奥がツンと痛むくらい嬉しくて――。
でも、それと同時に〝あの子が来たら〟という文言が引っかかってしまう。
「あ、あの……果恵、さん……今」
「やだ、羽理ちゃん! 果恵さんだなんて他人行儀よぅ? 『お義母さん』って呼んで?」
ぎゅうっと掴まれたままの両手に力を込められた羽理は、戸惑いながらも「お、かあ、さま……?」と呼び掛けたのだけれど。
途端、果恵がぱぁっと瞳を輝かせて「なぁに、羽理ちゃん?」とこちらを見詰めてくるから。
羽理は大葉と似た美貌の義母(?)の視線にソワソワしながら「あの……聞き間違いだったらすみません。もしかして……大葉、こちらに向かっていたり……します、か?」としどろもどろになりながら言葉を紡いだ。
「ええ、さっき、羽理ちゃんのこと引き留めといて欲しいって連絡があったから。……もう着く頃じゃないかしら?」
のほほんとした調子で小首をかしげる果恵に、羽理は瞳を見開いた。
21
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
冷徹上司の、甘い秘密。
青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。
「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」
「別に誰も気にしませんよ?」
「いや俺が気にする」
ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。
※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる