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29.心配しなくていいと伝えたいだけなのに
予想外の叱咤激励
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どうやら果恵、各方面から羽理の引き留めは頼まれたものの、その経緯までは詳しく聞かされていないらしい。
羽理は気遣うような眼差しで自分を見つめてくる果恵を見て、正直戸惑った。
そもそも羽理が一方的にプンスカしているだけで、喧嘩ではない。
それに、例え話したとしてもきっとまた、『大葉は羽理が不安に感じるようなことをする子じゃない』と言われるのが落ちなのだ。
羽理だってそんなことは分かっている。分かっているけれど……心が納得しないのだから仕方がないではないか。
「たいちゃんがね、恵介伯父さんからお見合いを打診されてたのを羽理ちゃんに伝えてなかったの」
黙り込んでしまった羽理を見かねたんだろう。「あちち……」と言いながら電子レンジから温めたものを取り出した柚子が端的にそう説明して、それを聞いた果恵が「まぁ!」と口に手を当てて瞳を見開いた。
(どうせまた、大葉が庇われて、私の気持ちはおざなりになっちゃうんだ)
そう思ってしゅんとした羽理だったのだけれど――。
「それは大葉が良くないわねっ!?」
ややして、やや食い気味につぶやいた果恵が、ギュッと羽理の手を握りしめてきて、「そんな大事なこと隠しておかれたとか……知ったとき、辛かったでしょう!? 怒って当然だわ! 本当、うちの馬鹿息子がごめんなさいね? あの子が来たら思いっきり責めてやりましょう!? 私も加勢するから!」と、握ったままの羽理の手をブンブン振りながら激励してくれる。
柚子からは大葉を擁護する言葉ばかりだったから、羽理は勝手に、きっと果恵からもそうされるものだと思い込んでいた。
でも実際はそうではなくて、自分の気持ちに寄り添ってもらえたことが、鼻の奥がツンと痛むくらい嬉しくて――。
でも、それと同時に〝あの子が来たら〟という文言が引っかかってしまう。
「あ、あの……果恵、さん……今」
「やだ、羽理ちゃん! 果恵さんだなんて他人行儀よぅ? 『お義母さん』って呼んで?」
ぎゅうっと掴まれたままの両手に力を込められた羽理は、戸惑いながらも「お、かあ、さま……?」と呼び掛けたのだけれど。
途端、果恵がぱぁっと瞳を輝かせて「なぁに、羽理ちゃん?」とこちらを見詰めてくるから。
羽理は大葉と似た美貌の義母(?)の視線にソワソワしながら「あの……聞き間違いだったらすみません。もしかして……大葉、こちらに向かっていたり……します、か?」としどろもどろになりながら言葉を紡いだ。
「ええ、さっき、羽理ちゃんのこと引き留めといて欲しいって連絡があったから。……もう着く頃じゃないかしら?」
のほほんとした調子で小首をかしげる果恵に、羽理は瞳を見開いた。
羽理は気遣うような眼差しで自分を見つめてくる果恵を見て、正直戸惑った。
そもそも羽理が一方的にプンスカしているだけで、喧嘩ではない。
それに、例え話したとしてもきっとまた、『大葉は羽理が不安に感じるようなことをする子じゃない』と言われるのが落ちなのだ。
羽理だってそんなことは分かっている。分かっているけれど……心が納得しないのだから仕方がないではないか。
「たいちゃんがね、恵介伯父さんからお見合いを打診されてたのを羽理ちゃんに伝えてなかったの」
黙り込んでしまった羽理を見かねたんだろう。「あちち……」と言いながら電子レンジから温めたものを取り出した柚子が端的にそう説明して、それを聞いた果恵が「まぁ!」と口に手を当てて瞳を見開いた。
(どうせまた、大葉が庇われて、私の気持ちはおざなりになっちゃうんだ)
そう思ってしゅんとした羽理だったのだけれど――。
「それは大葉が良くないわねっ!?」
ややして、やや食い気味につぶやいた果恵が、ギュッと羽理の手を握りしめてきて、「そんな大事なこと隠しておかれたとか……知ったとき、辛かったでしょう!? 怒って当然だわ! 本当、うちの馬鹿息子がごめんなさいね? あの子が来たら思いっきり責めてやりましょう!? 私も加勢するから!」と、握ったままの羽理の手をブンブン振りながら激励してくれる。
柚子からは大葉を擁護する言葉ばかりだったから、羽理は勝手に、きっと果恵からもそうされるものだと思い込んでいた。
でも実際はそうではなくて、自分の気持ちに寄り添ってもらえたことが、鼻の奥がツンと痛むくらい嬉しくて――。
でも、それと同時に〝あの子が来たら〟という文言が引っかかってしまう。
「あ、あの……果恵、さん……今」
「やだ、羽理ちゃん! 果恵さんだなんて他人行儀よぅ? 『お義母さん』って呼んで?」
ぎゅうっと掴まれたままの両手に力を込められた羽理は、戸惑いながらも「お、かあ、さま……?」と呼び掛けたのだけれど。
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「ええ、さっき、羽理ちゃんのこと引き留めといて欲しいって連絡があったから。……もう着く頃じゃないかしら?」
のほほんとした調子で小首をかしげる果恵に、羽理は瞳を見開いた。
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