【完結】【R18】あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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28.裏目

大嫌い

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 大葉たいようが事実を有耶無耶うやむやにしてそう問い掛けた途端、電話口の羽理うりがヒュッと息を呑んだのが分かった。

『……大葉たいようのバカ! 嘘つき! 私を泣かせたのは貴方だもん! 大嫌い!』

 一瞬の沈黙の後、悲鳴を上げるみたいに矢継ぎ早にまくし立てた羽理に、電話をブチッと切られてしまう。

「あ、おい! 羽理っ!」

 慌てて呼びかけたけれど、通話口からは無情にもツーツー……と無機質な機械音が聴こえてくるばかり。
 そんな携帯電話を握りしめたまま、大葉たいようは「どういうことだよ……」とつぶやいて呆然と立ち尽くして――。数秒後ハッとしたように気が付いて、もう一度柚子ゆずに電話を掛け直してみたのだけれど、羽理に出るなと止められているのだろうか? 姉は一向に応答してくれなかった。
 もちろん、同様に羽理の電話にもアクセスしてみたのだけれど、こちらは電源自体が切られてしまっているようで、『お掛けになった電話番号は、電源が切られているか――』などという非情なアナウンスを流してくるばかり。

「あー、くそっ!」

 仕事を切り上げて、今すぐにでも羽理の元へ駆け付けたいと思った大葉たいようだったのだけれど――。
「どこにいるんだよ……!」
 一番最初にそれを聞きそびれてしまったことを、心の底から後悔せずにはいられなかった。


***


 次女の柚子ゆず――ではなく長女の七味ななみから電話がかかってきたのは、結局大葉たいようが悶々としながらも定時まで真面目に仕事をこなしたあとだった。

『もしもし、たいちゃん?』

 すぐ上の姉――柚子よりも気持ち低めで落ち着いた声。喋り方も声に合わせたように〝ザ・長子〟と言う感じで少し貫禄がある。

七味ななみ……」

 いつもならば柚子からの電話よりも七味ななみからの着信の方が安心して応答出来るのだが、今回ばかりはちょっぴり落胆してしまった。

あからさまにガッカリしない』

 とがめるように吐息を落とされて、心の中を見透かされた気がした大葉たいようは、グッと言葉に詰まる。この感じ。どうやら七味ななみがこのタイミングで自分に電話してきたのはたまたまではないらしい。

「柚子から何か聞いたのか?」

 恐る恐る問い掛けてみれば、『まぁね』という返事。

「じゃあ羽理うりのことっ、何か言ってなかったかっ!?」

 七味ななみの言葉に思わず身を乗り出すようにして問い掛ければ、再度小さく吐息を落とされた。

『まぁそう焦らないで聞きなさい、大葉たいよう

 日頃は〝たいちゃん〟と呼ぶくせに、大葉たいように何か言い聞かせたいことがある時には愛称ではなく、ちゃんと名前で呼ぶところがある七味ななみである。姉のそんなところを熟知している大葉たいようは、はやる気持ちを懸命に堪えて七味ななみの言葉を待った。

『今日は柚子、貴方の恋人――婚約者って言った方がいいかしら? その子を連れて実家へ行ったらしいのね』

 大葉たいようの車を借りたいと言ったのは、どうやら実家への移動のためだったらしい。ひとまず、羽理に何かがあってのことではないと知って、大葉たいようは現状も忘れてホッと胸を撫で下ろした。
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