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27.実家とアルバムと、可愛いアレコレ

困った伯父さん

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「それにしても……やっぱりたいちゃんのだけ異常に多いよねー?」

 柚子ゆずがそう問いかけてくるから、羽理うりは『柚子お姉さま、やっぱりご自分の写真が少ないの、気にしておられるのかな?』と思って、恐る恐る「はい」と答えた。

「実は私たちの写真を撮ってくれたのって、殆んどが母方の伯父なんだけどね、その伯父さんが妹――つまりは私たちの母親を溺愛してて……。たいちゃんは母親似だから無意識にシャッターを切りまくっちゃったんだと思うの」

 すぐさま「ホント、困った伯父さんなのよー」と付け加えて苦笑する柚子に、羽理が何気なく「伯父さまが……」とつぶやいたら、「そうなの。ほら、うちの両親商社勤めだからね、出張が多くて家を空けがちだったの。それで小さい頃は自営業を営んでる伯父さんが沢山面倒を見てくれたのよ」と柚子が補足説明をしてくれる。

 自営業……ということはその伯父様が畑を手伝っていらっしゃるということかしら? と思った羽理だったのだけれど、さっき後継者がいなくて土恵商事うちの会社が見ていると言っていなかったかな? と思い出して、すぐさま小首をかしげた。

「伯父さんってば、いっつもカメラを構える側だったから……沢山一緒にいた割に、ほとんど写真に写ってないの」

 小さく吐息を落としながら、「えっと……確かこの辺に……」とつぶやいた柚子ゆずが「あ。この人! この人がその、うちの母とたいちゃんをエコ贔屓ひいきしまくりの困ったちゃんな恵介けいすけ伯父さんよ? 羽理うりちゃんも知ってる人じゃない?」と一葉の写真を指さした。

 そこには一歳くらいの大葉たいようを膝に抱っこして、嬉しそうに目尻を細めた一人の男性が写っていた。
 写真の中のその人からは、自分たちにカメラを向けた相手が愛しくて堪らないのだという想いが、画面一杯にあふれていて、羽理はちょっぴり圧倒されてしまう。

「これは母が撮ったらしいのね。伯父さんがバカみたいにデレてるのはそのせい」

 柚子の言葉を聞きながら、羽理はそのデレていると評された人物をよーく見て、「えっ? うそ。しゃ、ちょ……!?」とこぼさずにはいられなかった。

 だってどう見てもその人は――年齢こそかなりお若いし、表情が緩みまくっていてちょっと分かりづらいけれど――、羽理が勤める会社の代表取締役社長・土井どい恵介けいすけに他ならなかったのだ。
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