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27.実家とアルバムと、可愛いアレコレ
全てお見通し
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「さっき庭の畑を見たとき、手入れがちょっぴり手薄になってたの、気付かなかった?」
畑にはキュウリやトマト、ナス、トウモロコシ、サヤインゲンなどが植えられていた。
水やりが若干足りていないのか、葉っぱが少しシナッとしているように見えたけれど、あまり水を与え過ぎない方が野菜の味が濃厚になったりすると言うから、そういう意図があってのことかな?と思っていたのだけれど。
自分では野菜などを育てていなくても、一応青果専門に扱う土恵商事の人間として、そのくらいは知っていた羽理である。
でも素人に毛が生えた程度の羽理が知っていることなんて、専業農家を営む祖父母を持つ柚子ならばきっと知っていそうだ。
「葉っぱの虫食い、多いなって思わなかった?」
羽理の疑問を感じ取ったのだろう。柚子がそう言って微笑んだ。
「あ……」
遠目だったからそこまでじっくり見たわけではないけれど、言われてみればそうだった気もする。
「たいちゃん、無農薬にこだわってるから……。ちょっと気を抜くとすぐ虫が付くのよ」
言われて、何となく分かっていたけれど、庭の畑の管理者は大葉なんだなと羽理は確信したのだけれど。
だからと言って、そのことと先程の柚子の含みを持った笑みの関連性が見出せなくて、羽理がソワソワと柚子を見詰めたら、またしてもクスッと笑われてしまった。
「知っての通りたいちゃんって変なところで不器用じゃない? このところ溺愛されてたはずのキュウリちゃんがちょっぴり蔑ろにされてるのでも分かると思うけど……あの子、今は羽理ちゃんに全振りなのよ」
「へ……?」
靴をそろえて脱いで、柚子に支えられながら上がり框に上がったところでいきなり柚子にギュウッと抱き締められて。
「だからってこんなになるまでシちゃダメよねぇ? 可哀想に……羽理ちゃんボロボロじゃない」
そう耳元で囁かれた羽理は、真っ赤になってすぐそばの柚子を恐る恐る見上げた。
「羽理ちゃん、きっと初めてだったんでしょう? うちの弟がごめんなさいね」
ヨシヨシと頭を撫でられながら、羽理は心の中。
『大葉の馬鹿ぁーっ! 柚子お姉さまは全てお見通しだったではないですかぁぁぁぁ!』
と、声なき悲鳴を上げた。
***
外観はどう見ても日本家屋な屋久蓑家だけれど、中へ入ってみると十七畳ちょっとあるというだだっ広いLDKの足元は、全てフローリングになっていた。
キッチンは今どきのペニンシュラキッチンで、四ツくちコンロ側が壁に面している形。その作業スペースと向き合うようにスツールが三つ置かれているさまは、まるでバーカウンターのようにお洒落だった。
そこから視線をパーンすれば、部屋の真ん中よりややキッチン寄りの場所へ、大理石調の白い天板を冠した大きなダイニングテーブルセットが置かれているのが目に入る。羽理が驚いたのは、そのテーブル上に三〇センチ幅のライトグレーのテーブルランナーが敷かれていたことだ。
(一体どこのお貴族様のお屋敷ですかっ)
羽理の実家の小さなダイニングテーブルには、長年愛用してきた天板の汚れと傷を隠すため、近所のホームセンターで買ってきた花柄のテーブルクロスが掛けてあったが、それとはえらい違いである。
そのお貴族様仕様のテーブル横を通り過ぎて、ソファなどが置かれた前――。ふかふかのペルシャ絨毯の上へ座るように言われた羽理は、痛みに眉根を寄せながらそっと腰を下ろしたのだけれど。
支えにした革張りソファの手触りもさることながら、
「はわぁー」
絨毯の、余りの肌触りのよさに思わず感嘆の声が漏れてしまった。
畑にはキュウリやトマト、ナス、トウモロコシ、サヤインゲンなどが植えられていた。
水やりが若干足りていないのか、葉っぱが少しシナッとしているように見えたけれど、あまり水を与え過ぎない方が野菜の味が濃厚になったりすると言うから、そういう意図があってのことかな?と思っていたのだけれど。
自分では野菜などを育てていなくても、一応青果専門に扱う土恵商事の人間として、そのくらいは知っていた羽理である。
でも素人に毛が生えた程度の羽理が知っていることなんて、専業農家を営む祖父母を持つ柚子ならばきっと知っていそうだ。
「葉っぱの虫食い、多いなって思わなかった?」
羽理の疑問を感じ取ったのだろう。柚子がそう言って微笑んだ。
「あ……」
遠目だったからそこまでじっくり見たわけではないけれど、言われてみればそうだった気もする。
「たいちゃん、無農薬にこだわってるから……。ちょっと気を抜くとすぐ虫が付くのよ」
言われて、何となく分かっていたけれど、庭の畑の管理者は大葉なんだなと羽理は確信したのだけれど。
だからと言って、そのことと先程の柚子の含みを持った笑みの関連性が見出せなくて、羽理がソワソワと柚子を見詰めたら、またしてもクスッと笑われてしまった。
「知っての通りたいちゃんって変なところで不器用じゃない? このところ溺愛されてたはずのキュウリちゃんがちょっぴり蔑ろにされてるのでも分かると思うけど……あの子、今は羽理ちゃんに全振りなのよ」
「へ……?」
靴をそろえて脱いで、柚子に支えられながら上がり框に上がったところでいきなり柚子にギュウッと抱き締められて。
「だからってこんなになるまでシちゃダメよねぇ? 可哀想に……羽理ちゃんボロボロじゃない」
そう耳元で囁かれた羽理は、真っ赤になってすぐそばの柚子を恐る恐る見上げた。
「羽理ちゃん、きっと初めてだったんでしょう? うちの弟がごめんなさいね」
ヨシヨシと頭を撫でられながら、羽理は心の中。
『大葉の馬鹿ぁーっ! 柚子お姉さまは全てお見通しだったではないですかぁぁぁぁ!』
と、声なき悲鳴を上げた。
***
外観はどう見ても日本家屋な屋久蓑家だけれど、中へ入ってみると十七畳ちょっとあるというだだっ広いLDKの足元は、全てフローリングになっていた。
キッチンは今どきのペニンシュラキッチンで、四ツくちコンロ側が壁に面している形。その作業スペースと向き合うようにスツールが三つ置かれているさまは、まるでバーカウンターのようにお洒落だった。
そこから視線をパーンすれば、部屋の真ん中よりややキッチン寄りの場所へ、大理石調の白い天板を冠した大きなダイニングテーブルセットが置かれているのが目に入る。羽理が驚いたのは、そのテーブル上に三〇センチ幅のライトグレーのテーブルランナーが敷かれていたことだ。
(一体どこのお貴族様のお屋敷ですかっ)
羽理の実家の小さなダイニングテーブルには、長年愛用してきた天板の汚れと傷を隠すため、近所のホームセンターで買ってきた花柄のテーブルクロスが掛けてあったが、それとはえらい違いである。
そのお貴族様仕様のテーブル横を通り過ぎて、ソファなどが置かれた前――。ふかふかのペルシャ絨毯の上へ座るように言われた羽理は、痛みに眉根を寄せながらそっと腰を下ろしたのだけれど。
支えにした革張りソファの手触りもさることながら、
「はわぁー」
絨毯の、余りの肌触りのよさに思わず感嘆の声が漏れてしまった。
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