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27.実家とアルバムと、可愛いアレコレ

料亭か旅館のような門をくぐると

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 大葉たいようの家から――つまりは土恵つちけい商事からそれほど離れていないはずなのに、周りの家々よりも三倍は広く見える敷地のなかに、屋久蓑家やくみのけはあった。

「ほら、遠慮せず入って入って」

 大葉たいようの幼少期の写真見たさに、つい深く考えもせず柚子ゆずについてきた羽理うりだたけれど、 威風いふう堂々どうどうとした数寄屋門すきやもんを前に、今更のように〝彼氏のご実家〟という重圧にビクビクしていた。

 しかも――。
(立派すぎるんですけどぉぉぉ!)

 何せ羽理の実家は四階建て市営住宅(エレベーターなし)、三階の一室。
 3LDKと家族向け想定の間取りなのは、もともとそこが母の両親の実家で、羽理がまだ幼い頃は祖母も含めた三人家族だったときの名残なごりだ。
 ちなみに祖父は、母が大学生の頃に病気で他界したらしい。一緒に住んでいたという祖母も、羽理が保育園へ上がる前には亡くなっていて、ほとんど記憶に残っていない。
 生まれたときから父親のいない私生子しせいしだった羽理にとって、父方の祖父母なんて最初から居ないも同然だったから、一戸建ての家自体に無縁でここまできた。

 柚子から急かされるようにして、痛む身体を叱咤しった激励げきれいしつつ通り抜けた立派な門は、飴色に変化した味わい深いヒノキ材の柱と、格子こうし引き戸が特徴的で、見上げれば三州瓦さんしゅうがわらの屋根まで冠していた。

(こんな立派な門があるのって、料亭とか旅館だけだと思ってた!)

 門を抜けると、そこから御影石みかげいしで作られた石畳が真っすぐ伸びていて、その先にいかにも〝由緒正しきお屋敷ござーい♪〟といった風情ふぜいの重厚な作りの日本家屋が鎮座ましましている。

 土地が広いからだろう。大きなその邸宅は、平屋でもたっぷり居住空間を確保しているように見えた。

 家自体の大きさにも圧倒された羽理うりだったけれど、何より驚かされたのは庭の広さだ。

 でも――。
「え? ……はた、け?」
 目の前に広がる敷地の大半を占めているのは、いわゆる日本庭園と呼ばれるようなものではなくて……。そう、いま羽理が思わずつぶやいてしまったように、一言でいえば〝畑〟だった。

「面白いでしょう? 車で三〇分ほど行ったところには三ヘクタール超えのだだっ広い畑もあるのよ? なのに家までこんなにしちゃって」

 ビニールハウスもあるらしい広大な畑の方の経営は、ほぼ土恵つちけい商事がになっているのだと説明された羽理は、「え?」とつぶやいた。

「何でうちの会社が?」

「あれ? たいちゃんから聞いてない? うちの両親、総合商社勤務だから……畑にはほぼノータッチなのよ」

 父方ではなく、母方のほうのご実家が専業農家らしいのだが、子供が後を継いでくれなかったから家業継続のため外部へ業務委託に出していると言うことかしら?と思った羽理だ。
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