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26.岳斗の告白
羽理に託した願い
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そこでグッとこぶしを握り締めて、何かを決意したようにじっと倍相から見詰められた大葉は、我知らず息を詰めた。
「ですが――もし……もしも……こんな僕のことを少しでも信じてやってもいいと思って頂けたなら……。僕は全力で今まで大葉さんにしてきたことの償いをしたいと思っています。僕が手塩にかけて育ててきた荒木羽理さんが幸せになれるお手伝いを……僕にもさせて欲しいんです。……ダメ、でしょうか……?」
手塩にかけてきた、というのは羽理のことを気に入っていたという言葉の変換ではないだろうか?
「なぁ、倍相。お前、まだ羽理のこと――」
そんなことを思ってしまった大葉は、本来ならば前半部分へ先に答えてやらねばならないと頭では理解しているのに、つい愛する羽理のことを先に聞いてしまったのだけれど。
「……? ああ、安心してください。荒木さんのことは可愛い部下だと思っていますが、本当にそれだけです。……実は先日、彼女の家で大葉さんから思いっきり牽制された時に憑き物が落ちたみたいにストンと気持ちの整理がつきました。何て言うんでしょう? 僕が荒木さんに執着していたのはきっと……彼女が母子家庭だったからだなって思ったんです」
倍相は、羽理の見た目が好みだったのもあって、元々羽理にはちょっぴり肩入れしていたのだが、上司としてそんな彼女と接する中で、羽理が自分と同じように片親家庭で育ってきたことを知ってからはその想いが加速した。
自分が母と過ごしてきた……貧しかったけれど幸せだった幼少時代を羽理に重ねて、自分がもしも母親と引き離されずにあのまま過ごせていたならば、自分も彼女のように屈託なく笑える人間になれていたのだろうか?と思ったらつい目で追うようになっていたらしい。
「今になってみれば、あれが恋心じゃなかったのは明白です。大葉さんに対する執着とは違う意味で、僕はきっと、荒木さんに固執していたんだと思います」
だから二人のことは何の確執もなく応援できると言い切った倍相が、ふと吐息を落として……「あ、けど……何の執心もなく、と言うのは嘘かも知れません」とつぶやいた。
「えっ?」
まだ何かあるのだろうかと大葉が構えそうになったのを見て、倍相が淡く笑って顔の前で手を振ってみせる。
「ああ、変な意味じゃないです。――荒木さんには……僕とは違って絶対幸せになってもらわなくちゃ困るなって……。母子家庭でも幸せになれるんだって思いたい僕の願望をまだ背負わせちゃってるなって……そう思っただけです」
「ですが――もし……もしも……こんな僕のことを少しでも信じてやってもいいと思って頂けたなら……。僕は全力で今まで大葉さんにしてきたことの償いをしたいと思っています。僕が手塩にかけて育ててきた荒木羽理さんが幸せになれるお手伝いを……僕にもさせて欲しいんです。……ダメ、でしょうか……?」
手塩にかけてきた、というのは羽理のことを気に入っていたという言葉の変換ではないだろうか?
「なぁ、倍相。お前、まだ羽理のこと――」
そんなことを思ってしまった大葉は、本来ならば前半部分へ先に答えてやらねばならないと頭では理解しているのに、つい愛する羽理のことを先に聞いてしまったのだけれど。
「……? ああ、安心してください。荒木さんのことは可愛い部下だと思っていますが、本当にそれだけです。……実は先日、彼女の家で大葉さんから思いっきり牽制された時に憑き物が落ちたみたいにストンと気持ちの整理がつきました。何て言うんでしょう? 僕が荒木さんに執着していたのはきっと……彼女が母子家庭だったからだなって思ったんです」
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「えっ?」
まだ何かあるのだろうかと大葉が構えそうになったのを見て、倍相が淡く笑って顔の前で手を振ってみせる。
「ああ、変な意味じゃないです。――荒木さんには……僕とは違って絶対幸せになってもらわなくちゃ困るなって……。母子家庭でも幸せになれるんだって思いたい僕の願望をまだ背負わせちゃってるなって……そう思っただけです」
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