【完結】【R18】あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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26.岳斗の告白

部長室への呼び出し

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倍相ばいしょう課長、ちょっとよろしいですか?』

 内線電話が鳴って、部長室に引っ込んだ屋久蓑やくみの大葉たいようから呼び出しが掛かったのは、倍相ばいしょう岳斗がくとがちょうど昔のことに思いをせていた時のことだった。

「はい。大丈夫です」

『でしたら仕事の切りがいいところで部長室まで来てもらえますか?』

 言われて、岳斗は「かしこまりました」と答えながら、受話器を握りしめる手にグッと力を込めた。


***


荒木あらき羽理うりとのことは、しばらく社内では伏せることになった」

 部長室へ入るなりすぐ、大葉たいようからそう告げられた岳斗がくとは、「えっ?」と間の抜けた声を発した。

「ですがそれだと――」

「まぁ聞け」

 大葉たいように応接セットへの着座を勧められた岳斗は、言いたい言葉を飲み込んで言われた通りにする。

「キミも知っての通り俺は不愛想で通っている。だが……女性の中にはそれでもいいから俺と近付きたいなんて言う奇特な人間もわずかながらいるんだ」

 吐息交じりに落とされた大葉たいようからの言葉を聞いて、岳斗は(この人は自分を過小評価し過ぎだな)と思った。

大葉たいようさんは……貴方が思っている以上に人気があると思いますよ?」

 現に、人事課長になっている大葉たいようの同期、那須なすみのりなんかは今でも目の前の男にご執心のはずだ。
 もっとも、それが高じ過ぎて大葉たいようへのアプローチを無下にされた彼女が逆恨みして、【屋久蓑やくみの大葉たいようは男にしか興味がない性癖の持ち主だから、どんな女性が告白してもなびかない】などと言うガセネタを流したのを岳斗は知っている。

(ま、それに尾ひれを付けて広めたのは僕なんだけど)

 ちょっと前までの岳斗がくとは、大葉たいようおとしいれることに余念がなかったから。

 岳斗自身屋久蓑やくみの大葉たいようという人間を知れば知るほど、彼に惹かれる人間がいるのは当然だと納得させられたし、それが妙に鼻持ちならなかったのも、ただの嫉妬だったと今なら素直に認められる。

 実際、屋久蓑やくみの大葉たいようという男は仕事には厳しいし、物言いは素っ気ない。だが、だからと言って決して理不尽なことは言わないし、注意するときにもちゃんとどうすればうまくいくかまで含めて指導してくれる。
 叱り方も皆の前で恥をかかせるようなやり方はしないし、部下のミスを知らんぷりすることなんて皆無だ。
 もっと言えば、失敗すれば必ず尻ぬぐいしてくれるし、責任だって上司なのだからとちゃんと取ってくれる。

 悔しいけれど岳斗は入社以来ずっと、大葉たいようの仕事のやり方を真似て部下たちから慕われてきたのだ。

 大葉たいようと違うところがあるとすれば、あえて人当たりを良くしていることくらいか。

 それにしたって、大葉たいようからそういう親しみやすさを奪ったのは自分がしてきたことが原因だと岳斗は知っている。

 岳斗が入社したばかりの頃。
 岳斗の直属の上司だった屋久蓑やくみの大葉たいようは、ちょっぴり可愛いところのある感じのいい男だった。
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