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24.土井恵介という男
ハンサムな男
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(残念と言うべきか幸いと言うべきか……果恵に似たのは三人の中で唯一の黒一点……。大葉だけとか……)
思わず見とれてしまうような美貌も、かなり気配り上手で優しいところも。
皮肉なことに男である大葉が一番、恵介の愛する果恵の面影を色濃く引き継いでいる。
だが、いま目の前にいる姪っ子たちが果恵に似ていたりしたらこんな風に純粋に伯父として接するのは難しかったかも知れない。
そう思うと、屋久蓑三姉妹弟の中、唯一男として生まれた大葉が果恵に似ていたのは不幸中の幸いだったのかも知れない。
(さすがに僕も同性相手に変な気は起こらないしね)
お陰様で、良い伯父を出来ていると思っている。
***
「そっかそっか。たいちゃんが財務経理課長かぁ~。お祝いしてあげなきゃね。もちろん! サプライズでっ♪」
ニヒヒ……と企み顔で笑う柚子に、七味が「あの子、クソ真面目なんだから……あんまりいじめないのよ?」と吐息を落として。
柚子が「あら、ななちゃん。私が可愛い弟にそんな酷いことをするお姉ちゃんに見える?」と抗議した。
「見えるわね」
「残念ながら」
七味と恵介がほぼ同時に柚子の抗議を否定したら、柚子がムムッと愛らしい唇を突き出した。
「伯父さんもななちゃんも覚えてなさいよぉ!?」
そんな柚子の様子に七味と二人で顔を見合わせて笑ったと同時――。
仕切りに挟まれた、恵介からは背面の位置に座っていた男が会計のためか立ち上がって、恵介たちの横を通って行った。
姪っ子二人との会話に夢中で、意識をそちらに持って行かれていた恵介は、その男を斜め後方からしか見られなかったけれど。
(倍相くん?)
休日で、スーツこそ着ていなかったけれど。背格好やチラリと一瞬だけ垣間見えた横顔が、期待の新人としてよく名の上がってくる男――倍相岳斗に見えた。
その証拠と言うか――。
「今の男の子、めっちゃ優しそうな顔のハンサムくんだった!」
自分のすぐ前に座る柚子が嬉しそうに声を弾ませて。
「確かにふわっとした印象の綺麗な子だったけど……貴女、既婚者なんだからもう少し節度を持った発言をなさい」
七味もその男のことをハンサムだと認めている。
基本的に彼女たち自身はもちろん、両親にしてもその弟の大葉にしてもかなり顔面偏差値は高い方なのだ。
その二人が〝いい男〟認定をする人間なんて、そうそういないだろう。
そう考えると、やっぱり今出て行った男は、倍相岳斗ではないかと思ってしまった恵介だ。
思わず見とれてしまうような美貌も、かなり気配り上手で優しいところも。
皮肉なことに男である大葉が一番、恵介の愛する果恵の面影を色濃く引き継いでいる。
だが、いま目の前にいる姪っ子たちが果恵に似ていたりしたらこんな風に純粋に伯父として接するのは難しかったかも知れない。
そう思うと、屋久蓑三姉妹弟の中、唯一男として生まれた大葉が果恵に似ていたのは不幸中の幸いだったのかも知れない。
(さすがに僕も同性相手に変な気は起こらないしね)
お陰様で、良い伯父を出来ていると思っている。
***
「そっかそっか。たいちゃんが財務経理課長かぁ~。お祝いしてあげなきゃね。もちろん! サプライズでっ♪」
ニヒヒ……と企み顔で笑う柚子に、七味が「あの子、クソ真面目なんだから……あんまりいじめないのよ?」と吐息を落として。
柚子が「あら、ななちゃん。私が可愛い弟にそんな酷いことをするお姉ちゃんに見える?」と抗議した。
「見えるわね」
「残念ながら」
七味と恵介がほぼ同時に柚子の抗議を否定したら、柚子がムムッと愛らしい唇を突き出した。
「伯父さんもななちゃんも覚えてなさいよぉ!?」
そんな柚子の様子に七味と二人で顔を見合わせて笑ったと同時――。
仕切りに挟まれた、恵介からは背面の位置に座っていた男が会計のためか立ち上がって、恵介たちの横を通って行った。
姪っ子二人との会話に夢中で、意識をそちらに持って行かれていた恵介は、その男を斜め後方からしか見られなかったけれど。
(倍相くん?)
休日で、スーツこそ着ていなかったけれど。背格好やチラリと一瞬だけ垣間見えた横顔が、期待の新人としてよく名の上がってくる男――倍相岳斗に見えた。
その証拠と言うか――。
「今の男の子、めっちゃ優しそうな顔のハンサムくんだった!」
自分のすぐ前に座る柚子が嬉しそうに声を弾ませて。
「確かにふわっとした印象の綺麗な子だったけど……貴女、既婚者なんだからもう少し節度を持った発言をなさい」
七味もその男のことをハンサムだと認めている。
基本的に彼女たち自身はもちろん、両親にしてもその弟の大葉にしてもかなり顔面偏差値は高い方なのだ。
その二人が〝いい男〟認定をする人間なんて、そうそういないだろう。
そう考えると、やっぱり今出て行った男は、倍相岳斗ではないかと思ってしまった恵介だ。
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