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21.朝チュンではないけれど
仁子からの電話
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『あ、あのっ、屋久蓑部長! 時間がないのは分かってるんですが、ちょっとだけ羽理に変わって頂けますか? あの子ってば昨日早退してからそのまま音信不通になっちゃってるんで心配で……』
そこだけは譲れない、と言った調子で畳み掛けられた。
羽理の携帯電話は、羽理が大葉宅の風呂場に飛ばされてきてから長いこと電池切れでダウンしていたから、法忍仁子の言い分はもっともで。
朝になってやっと繋がったと思ったら、代理が出て本人が応答しないとあっては、彼女が羽理の安否を気遣うのも無理はないと思えた。
「もちろんだ。そもそも羽理の携帯でキミと俺が長々と話していること自体おかしな状況だしな」
大葉はすぐそばで自分を見詰めている羽理をちらりと見遣ると、画面をササッと服の袖口で綺麗に拭って、羽理に携帯を差し出した。
***
「もしもし、仁子?」
大葉から携帯を受け取って、恐る恐る応答したら『もぉー、羽理ぃー! メッセしても既読スルーだし、電話しても電源切れてるってアナウンスが流れるばっかだし……! 何の音沙汰もないからめっちゃ心配したんだよ!?』と、思わず電話を耳から離さないといけないくらいの大音量でまくし立てられた。
「ごめん! その……寝込んでる間に携帯の電源が落ちてたみたいで」
厳密にはずっと寝込んでいたわけではないが、そこは嘘も方便だ。
そもそも、今日も羽理は〝別の理由〟で仕事に行けるような状態ではないわけで……ゴニョゴニョ……。
「もぉ! しっかりしなさいよね!? ……そういえば、体調はどうなの? 余りにも連絡がつかないから私、昨日の夕方、ちょっとアンタの家、行ってみたのよ?」
「嘘……」
「嘘じゃないわよ。けど、羽理、チャイム鳴らしても出てこなかったでしょ? もしかして病院行ってた? それとも……ひょっとして寝込んでて出らんなかったとか!?」
もし後者だったら申し訳ないことをしたと謝ってくる仁子に、羽理は言葉に詰まった。
「昨日は……その……夕方、たいよ……じゃなくて……えっと、や、屋久蓑部長のお家でお世話になってて……それで――」
「〝大葉〟でいいわよ。さっき部長から二人の関係、聞いちゃったし。そっか、そっか部長の家にねぇー。へぇー、そうかそうかー。その辺もまた詳しく聞かせてもらうからね!?」
と付け足されてから再度。
「で、体調はどうなの?」
そう問いかけられた。
そこだけは譲れない、と言った調子で畳み掛けられた。
羽理の携帯電話は、羽理が大葉宅の風呂場に飛ばされてきてから長いこと電池切れでダウンしていたから、法忍仁子の言い分はもっともで。
朝になってやっと繋がったと思ったら、代理が出て本人が応答しないとあっては、彼女が羽理の安否を気遣うのも無理はないと思えた。
「もちろんだ。そもそも羽理の携帯でキミと俺が長々と話していること自体おかしな状況だしな」
大葉はすぐそばで自分を見詰めている羽理をちらりと見遣ると、画面をササッと服の袖口で綺麗に拭って、羽理に携帯を差し出した。
***
「もしもし、仁子?」
大葉から携帯を受け取って、恐る恐る応答したら『もぉー、羽理ぃー! メッセしても既読スルーだし、電話しても電源切れてるってアナウンスが流れるばっかだし……! 何の音沙汰もないからめっちゃ心配したんだよ!?』と、思わず電話を耳から離さないといけないくらいの大音量でまくし立てられた。
「ごめん! その……寝込んでる間に携帯の電源が落ちてたみたいで」
厳密にはずっと寝込んでいたわけではないが、そこは嘘も方便だ。
そもそも、今日も羽理は〝別の理由〟で仕事に行けるような状態ではないわけで……ゴニョゴニョ……。
「もぉ! しっかりしなさいよね!? ……そういえば、体調はどうなの? 余りにも連絡がつかないから私、昨日の夕方、ちょっとアンタの家、行ってみたのよ?」
「嘘……」
「嘘じゃないわよ。けど、羽理、チャイム鳴らしても出てこなかったでしょ? もしかして病院行ってた? それとも……ひょっとして寝込んでて出らんなかったとか!?」
もし後者だったら申し訳ないことをしたと謝ってくる仁子に、羽理は言葉に詰まった。
「昨日は……その……夕方、たいよ……じゃなくて……えっと、や、屋久蓑部長のお家でお世話になってて……それで――」
「〝大葉〟でいいわよ。さっき部長から二人の関係、聞いちゃったし。そっか、そっか部長の家にねぇー。へぇー、そうかそうかー。その辺もまた詳しく聞かせてもらうからね!?」
と付け足されてから再度。
「で、体調はどうなの?」
そう問いかけられた。
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