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20.お願い、抱かせて?
キスしてもいい?
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「こっ、これ以上そっちへ行ったらさすがにまずい」
背中を引っ張る羽理からじりじりとさらにベッド脇へと逃げると、背後の羽理が「でも! 大葉があんまりそっちに行ったら……私、背中が出て寒いんですっ」とか言ってくるから。
「ああああーーーっ!」
と悶絶しながらむくりと起き上がった大葉は、自分の方へ巻き込まれて落ちそうになっていた掛け布団をグイッと引っ張って羽理の上に着せ掛け直してやった。
だが――。
「う、ぁっ!」
緊張の余りバランスを崩した大葉は、期せずして羽理の上に覆い被さる形ですぐ間近。
羽理の顔を見下ろすようになってしまって。
結果、変な声を上げる羽目になった。
(何だってこんな薄暗がりのなか、俺の目はこんなに優秀なんだ!)
本来ならば見えないはずなのに、お互いの吐息すら感じ取れるくらいに近付いてしまったからだろうか?
「……大葉?」
ちょっぴり眦の吊り上がった猫のようなアーモンドアイをした羽理が、驚いたようにじっと大葉を見上げてくる、その目元のまつ毛の一本一本まで事細かに確認出来てドギマギしてしまう。
ああ、そう言えばベッドに入る前、羽理が「慣れない部屋で大葉がテーブルとかにつまずいたらいけないから」とか言って、シーリングライトの豆球をひとつ、点けっぱなしにしてくれていたんだったなっ!?と今更のように思い至った大葉だ。
(……にしたって見えすぎだろ!)
それに、そのことを思い出したからと言って、現状が変わるわけではない。
(ちょっ、待っ……、そもそも何で俺、こんなバカな格好になってる!?)
パニックの余り、羽理の上に影を落としたまま、身動きの取れなくなった大葉は、誰にともなく問い掛けてみたのだけれど――。
当然答えなんて返ってくるはずがない。
ばかりか――。
「あ、あの……大葉……」
そっと大葉の腕に触れてきた羽理が、ギュゥッと目を閉じて。まるでキス待ちのように「んー」っと唇を突き出してくるから。
(ば、バカっ。その顔は反則だろ!)
と思った大葉だ。
本来ならば、二十歳を越えたいい年の女性が、こんな風に分かりやすく唇を突き出すのは笑える行動だと思う。
目のつぶり方だって、そんな力を入れたら逆にギャグだと思うのだけれど。
そう言うぎこちなさを感じさせられる全てが、羽理の不慣れさを象徴しているようで、愛しくてたまらないのだ。
「なぁ羽理。……キス、しても……いいか?」
それでも四角四面にそう問いかけてしまったのは、もしも羽理に本当はそんなつもりがなかった場合、彼女の意志を無視することになってしまうと懸念したからだ。
自分も大概スマートじゃないなと頭の片隅で苦笑しつつ……。
背中を引っ張る羽理からじりじりとさらにベッド脇へと逃げると、背後の羽理が「でも! 大葉があんまりそっちに行ったら……私、背中が出て寒いんですっ」とか言ってくるから。
「ああああーーーっ!」
と悶絶しながらむくりと起き上がった大葉は、自分の方へ巻き込まれて落ちそうになっていた掛け布団をグイッと引っ張って羽理の上に着せ掛け直してやった。
だが――。
「う、ぁっ!」
緊張の余りバランスを崩した大葉は、期せずして羽理の上に覆い被さる形ですぐ間近。
羽理の顔を見下ろすようになってしまって。
結果、変な声を上げる羽目になった。
(何だってこんな薄暗がりのなか、俺の目はこんなに優秀なんだ!)
本来ならば見えないはずなのに、お互いの吐息すら感じ取れるくらいに近付いてしまったからだろうか?
「……大葉?」
ちょっぴり眦の吊り上がった猫のようなアーモンドアイをした羽理が、驚いたようにじっと大葉を見上げてくる、その目元のまつ毛の一本一本まで事細かに確認出来てドギマギしてしまう。
ああ、そう言えばベッドに入る前、羽理が「慣れない部屋で大葉がテーブルとかにつまずいたらいけないから」とか言って、シーリングライトの豆球をひとつ、点けっぱなしにしてくれていたんだったなっ!?と今更のように思い至った大葉だ。
(……にしたって見えすぎだろ!)
それに、そのことを思い出したからと言って、現状が変わるわけではない。
(ちょっ、待っ……、そもそも何で俺、こんなバカな格好になってる!?)
パニックの余り、羽理の上に影を落としたまま、身動きの取れなくなった大葉は、誰にともなく問い掛けてみたのだけれど――。
当然答えなんて返ってくるはずがない。
ばかりか――。
「あ、あの……大葉……」
そっと大葉の腕に触れてきた羽理が、ギュゥッと目を閉じて。まるでキス待ちのように「んー」っと唇を突き出してくるから。
(ば、バカっ。その顔は反則だろ!)
と思った大葉だ。
本来ならば、二十歳を越えたいい年の女性が、こんな風に分かりやすく唇を突き出すのは笑える行動だと思う。
目のつぶり方だって、そんな力を入れたら逆にギャグだと思うのだけれど。
そう言うぎこちなさを感じさせられる全てが、羽理の不慣れさを象徴しているようで、愛しくてたまらないのだ。
「なぁ羽理。……キス、しても……いいか?」
それでも四角四面にそう問いかけてしまったのは、もしも羽理に本当はそんなつもりがなかった場合、彼女の意志を無視することになってしまうと懸念したからだ。
自分も大概スマートじゃないなと頭の片隅で苦笑しつつ……。
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