【完結】【R18】あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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19.僕じゃダメかな?

ライバル変更!?

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***

「……大葉たいよう?」

「んー? 着替えたか?」

 上のパーカーはそのままに、長ズボンに履き替えてきた羽理うりを見て、大葉たいようが満足げに微笑んだ。

 だが、羽理は大葉たいようとは対照的に困惑顔のまま。

「あ、あの……。今、倍相ばいしょう課長とすっごく、すっごく! くっ付いてなかったですか……?」

「あー、見られちまったか。ま、気にするな。羽理には内緒で男同士のイケナイ話をしてただけだから。――そうだよな? 倍相ばいしょう

「はい。〝大葉たいようさん〟と、ドキドキするような時間を共有していただけです」

 どこか上気したような顔で、岳斗がくと大葉たいようをうっとりと見つめるから。

 羽理は何だか余計にそわそわしてしまう。

(ちょっ、もしかしてコレ。『皆星ミナホシ』で連載中の、『あ~ん、課長っ♥ こんなところでそんなっ♥』のヒロインのライバル役を男性に置き換えなきゃいけないんじゃないの!?)

 なんてことを思ってしまうような……そんな雰囲気なのだ。

大葉たいようにその気がなさそうなのがせめてもの救いだけど)

 これで大葉たいようにまでそんな雰囲気を醸し出されてしまったら、羽理の立つ瀬がない。


***


 まさか羽理うりBL展開そんなことを心配されているだなんてこれっぽちも思っていない大葉たいようは、急に岳斗がくとから「大葉たいようさん」だなんて呼ばれて、ポーカーフェイスのまま実はゾワリと全身に鳥肌を立てていた。

(な、何なんだっ、いきなり!)

 口裏を合わせてくれたのは有難いが、妙に親密な空気をかもし出されて――。

 さっきまで羽理うりを挟んで火花バチバチだったはずなのに何事だ?と思わずにはいられない。

(俺が羽理にヤツの悪事をバラさなかったからか?)

 ただ単に、大葉たいようとしては羽理が敬愛している上司さまのイメージを崩すのは忍びないと思っただけだったのだが。

 信頼している倍相ばいしょう岳斗がくとが、まさか自分をおとしいれるような嘘をついただなんて知ったら、羽理が傷付く。
 それだけは何としても避けたかった。

(俺は羽理が悲しい思いをすんのは嫌なんだよ)

 本当にただそれだけだったのだが――。

 案外大葉たいようは、目の前の男から弱みを握られたとでも思われて絶対服従の権利を得てしまったのかも知れない。


***


 倍相ばいしょう岳斗がくと屋久蓑やくみの大葉たいよう荒木羽理こいびとのために本気で怒る姿を見た瞬間、電撃が走るような衝撃を覚えた。

 今まで自分に対してこんな風にあからさまに牙を剥いてきた相手はいなかったし、ましてやそれが全て愛しい彼女のためとか。

(かっこよすぎでしょう、屋久蓑やくみの大葉たいよう!)

 今でも大葉たいようが耳元でささやいてきたバリトンボイスが岳斗の脳内を侵食している。
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