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18.飛ばしすぎ?
不思議の国の鶏ネコ
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(何だかティーンズラブの世界みたいだもの!)
恋愛に疎い羽理が、自分には縁遠いからこそ興味を惹かれまくってしまう恋愛モノにありそうな、一風変わった設定みたいで。
上手くいけば〝夏乃トマト〟の執筆活動のネタになりそうだよ!?とか思ってしまった。
本当はそんな理由で軽々しく結論を出すべき事柄ではないことは、百も承知だ。
でも――。
それでも初っ端からお互いに真っ裸で「初めまして」をした大葉と自分なら、それもありかな?と思えてしまったから不思議だ。
「――はい、喜んでっ!」
勢いよくそう答えたら、大葉から即座に「居酒屋か!」と突っ込まれてしまった。
でも、羽理を抱きしめる大葉の表情はとても幸せそうで。
羽理は、大葉の嬉しそうな顔を見た途端、大学時代に付き合っていた初カレから告白された時には感じたことのなかった、キュンキュンするような胸の高鳴りを覚えた。
今まではずっと……。キューッと胸が締め付けられるたび、死んでしまうんじゃないかと恐ろしくて堪らなかったはずの〝不整脈〟が、どこか甘く心地良いものに感じられたのは、初めてかも知れない――。
***
本当は「恋人になってくれますか?」と言おうと思っていたのに、気が付いたら羽理を自分にもっと縛り付けたいみたいに〝結婚〟という契約を持ち出してしまっていた大葉だ。
もしかしたら、伯父から見合い話を持ち掛けられていることが心の片隅にあったことも関与していたのかも知れない。
――俺には結婚を約束した恋人がいるので見合いはお受け出来ません。
大葉は、腕の中の羽理を見下ろしながら、彼女を思い浮かべた上で毅然とした態度で伯父にそう言えたら最高だなと思ったのだ。
(お、OKもらったし……キスしたいって言っても受けてくれる、よ、な?)
そんなことを思いながら「羽理……」と声を掛けようとした矢先、羽理が「あっ」と小さくつぶやいて足元に視線を落として。
くそっ、タイミング!と悔しく思いながらも羽理の視線を追ってみれば、いつの間に来たのだろうか?
二人の足元に尻尾の短い小太りな三毛猫が来ていて、抱き合う羽理と大葉を見上げてしたり顔でスゥッと目を細めた。
「にゃぁぁぁぁーん」
そのくせ見た目のイメージとは随分かけ離れた愛らしい声で甘えたように鳴くから、大葉は、(もっと野太い声を出せ!)と心の中で突っ込んだのだけれど。
次の瞬間、その猫から小馬鹿にしたようにニタリと笑われた気がしてしまった大葉だ。
(チェシャ猫!)
まるで『不思議の国のアリス』に出てくる、わけもなくニヤニヤ笑う大口をしたあの猫じゃないか、と思って。
気味悪さにヒッとなって、思わず腕が緩んだと同時。
「焼き鳥の三毛ちゃん!」
言って、羽理がスルリと大葉の腕をすり抜けてしまう。
本当はしゃがみ込んで撫でたかったんだろうが、一瞬腰を落としかけてノーパンな心許なさに負けたみたいに中腰のまま中途半端に動きを止めた。
でも手は猫の方へ伸びたままで。
「お、おいっ、羽理っ! 下手に手を出すと不思議の国に連れて行かれちまうぞ!?」
自分の中ではすっかり〝チェシャ猫〟認識なので、思わずそう言ってしまったのだけれど。
幸い、三毛猫は羽理が手を伸ばすより先にタタッと駆け出すと、神社脇の植込みに姿を消した。
それを無言で見送ってすぐ――。
「あのっ、不思議の国って何ですか?」
と羽理が大葉を見上げたのと、
「なんで猫なのに鳥なんだ!?」
と大葉が羽理に問い掛けたのとがほぼ同時で。
即座に二人して
「どう見てもチェシャ猫だからだ!」
「あの子と焼き鳥をシェアしたからです!」
とこれまた同時に答えて、何だか可笑しくなって顔を見合わせて笑ってしまった。
恋愛に疎い羽理が、自分には縁遠いからこそ興味を惹かれまくってしまう恋愛モノにありそうな、一風変わった設定みたいで。
上手くいけば〝夏乃トマト〟の執筆活動のネタになりそうだよ!?とか思ってしまった。
本当はそんな理由で軽々しく結論を出すべき事柄ではないことは、百も承知だ。
でも――。
それでも初っ端からお互いに真っ裸で「初めまして」をした大葉と自分なら、それもありかな?と思えてしまったから不思議だ。
「――はい、喜んでっ!」
勢いよくそう答えたら、大葉から即座に「居酒屋か!」と突っ込まれてしまった。
でも、羽理を抱きしめる大葉の表情はとても幸せそうで。
羽理は、大葉の嬉しそうな顔を見た途端、大学時代に付き合っていた初カレから告白された時には感じたことのなかった、キュンキュンするような胸の高鳴りを覚えた。
今まではずっと……。キューッと胸が締め付けられるたび、死んでしまうんじゃないかと恐ろしくて堪らなかったはずの〝不整脈〟が、どこか甘く心地良いものに感じられたのは、初めてかも知れない――。
***
本当は「恋人になってくれますか?」と言おうと思っていたのに、気が付いたら羽理を自分にもっと縛り付けたいみたいに〝結婚〟という契約を持ち出してしまっていた大葉だ。
もしかしたら、伯父から見合い話を持ち掛けられていることが心の片隅にあったことも関与していたのかも知れない。
――俺には結婚を約束した恋人がいるので見合いはお受け出来ません。
大葉は、腕の中の羽理を見下ろしながら、彼女を思い浮かべた上で毅然とした態度で伯父にそう言えたら最高だなと思ったのだ。
(お、OKもらったし……キスしたいって言っても受けてくれる、よ、な?)
そんなことを思いながら「羽理……」と声を掛けようとした矢先、羽理が「あっ」と小さくつぶやいて足元に視線を落として。
くそっ、タイミング!と悔しく思いながらも羽理の視線を追ってみれば、いつの間に来たのだろうか?
二人の足元に尻尾の短い小太りな三毛猫が来ていて、抱き合う羽理と大葉を見上げてしたり顔でスゥッと目を細めた。
「にゃぁぁぁぁーん」
そのくせ見た目のイメージとは随分かけ離れた愛らしい声で甘えたように鳴くから、大葉は、(もっと野太い声を出せ!)と心の中で突っ込んだのだけれど。
次の瞬間、その猫から小馬鹿にしたようにニタリと笑われた気がしてしまった大葉だ。
(チェシャ猫!)
まるで『不思議の国のアリス』に出てくる、わけもなくニヤニヤ笑う大口をしたあの猫じゃないか、と思って。
気味悪さにヒッとなって、思わず腕が緩んだと同時。
「焼き鳥の三毛ちゃん!」
言って、羽理がスルリと大葉の腕をすり抜けてしまう。
本当はしゃがみ込んで撫でたかったんだろうが、一瞬腰を落としかけてノーパンな心許なさに負けたみたいに中腰のまま中途半端に動きを止めた。
でも手は猫の方へ伸びたままで。
「お、おいっ、羽理っ! 下手に手を出すと不思議の国に連れて行かれちまうぞ!?」
自分の中ではすっかり〝チェシャ猫〟認識なので、思わずそう言ってしまったのだけれど。
幸い、三毛猫は羽理が手を伸ばすより先にタタッと駆け出すと、神社脇の植込みに姿を消した。
それを無言で見送ってすぐ――。
「あのっ、不思議の国って何ですか?」
と羽理が大葉を見上げたのと、
「なんで猫なのに鳥なんだ!?」
と大葉が羽理に問い掛けたのとがほぼ同時で。
即座に二人して
「どう見てもチェシャ猫だからだ!」
「あの子と焼き鳥をシェアしたからです!」
とこれまた同時に答えて、何だか可笑しくなって顔を見合わせて笑ってしまった。
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