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17.ちぐはぐな二人
二人きりで話がしたい
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「あの……た、大葉は……その、わ、私と付き合ってるつもり、だった……の?」
恐る恐るといった調子で羽理から問われた大葉は、視線を柚子から隣の羽理に移した。
「ああ」
と照れ臭さも手伝ってぶっきら棒に肯定してみたものの、柚子からの視線が全身に突き刺さってくるようで、何だか居心地が悪い。
(ちゃんと『付き合ってくれ』って……言えってこと、だよ、な?)
そう思いはするけれど、身内の前で異性を口説くだなんて恥ずかしい真似、出来るはずがない。
「……大葉?」
「たいちゃんっ!」
女性陣二人の視線が物凄く痛くて、針の筵状態だ。
加えて。
(う、ウリちゃんまで何でそんな目でパパを見詰めてきまちゅかねっ!?)
真ん丸な愛犬キュウリの黒瞳が、柚子のひざの上から『パパ、しっかりして下ちゃい』と言わんばかりに大葉をじっと凝視してくるから。
「あああああっ!」
大葉はとうとう重圧に耐えきれなくなってガシガシと頭を掻きむしると、その場に立ち上がった。
そうして――。
「柚子、ウリちゃんを頼む。……羽理と二人きりで話がしたい」
すぐ横でキョトンと自分を見上げてくる羽理の腕を引いて立たせると、「今夜は帰らねぇから」と付け加えて「羽理、行くぞ」とやや強引に羽理の手を引いて歩き出す。
柚子に出鼻をくじかれて伝え損ねていたが、元々羽理がこちらに飛ばされてきた時から、柚子にキュウリを任せて羽理の家へ泊まりに行こうと思っていた大葉だ。
羽理に昼間何をしていたのか?とか……聞きたいことが山盛りだったし、実際そういう諸々も告白と同じくらい姉の前では切り出しづらい。
「あ、あのっ、大葉……っ」
オロオロと大葉の名を呼ぶ羽理に、「下着なしのまんまはしんどいだろ。お前ん家行くぞ」と吐き捨てたのだけれど。
「ちょっと待って、たいちゃんっ!」
姉が必死の様子で呼び止めてきて、キュウリを抱いたまま目の前に立ち塞がってくるから。
「な、何だよ……」
(この勢いを削がれたら気持ちが萎えちまうだろ!)
大葉のそういう性格は、自分自身が一番知っている。
だが、姉である柚子だって、ある程度は弟の特性を熟知していると思うのに。
告白しろと言ったくせに邪魔してこようとする姉を睨み付けたら、「私のご飯作りがまだ途中よ!」とか。
「何だよ、それ!」
大葉は羽理と手を繋いだまま、思わずその場にヘタリ込みそうになった。
***
「……お姉さん、面白い人でしたね」
助手席でふふっと笑う羽理の横顔にちらりと視線を向けてから、大葉は「自由人過ぎるんだよ」と溜め息を落とす。
結局、あのあと羽理に一旦ソファへ座り直してもらってから、大葉は柚子のために夕飯と翌朝の朝食の準備をしたのだけれど。
ついでだったので、羽理の弁当へ入れられそうな作り置き常備菜を冷凍庫から出して大きめの食品保存容器にいくつか詰め直してから、保冷袋に入れて持ち出せるようにした。
汁物を作りながら手際よく夕飯と明日の朝食を準備する大葉の横で、柚子は始終ご機嫌で。
恐る恐るといった調子で羽理から問われた大葉は、視線を柚子から隣の羽理に移した。
「ああ」
と照れ臭さも手伝ってぶっきら棒に肯定してみたものの、柚子からの視線が全身に突き刺さってくるようで、何だか居心地が悪い。
(ちゃんと『付き合ってくれ』って……言えってこと、だよ、な?)
そう思いはするけれど、身内の前で異性を口説くだなんて恥ずかしい真似、出来るはずがない。
「……大葉?」
「たいちゃんっ!」
女性陣二人の視線が物凄く痛くて、針の筵状態だ。
加えて。
(う、ウリちゃんまで何でそんな目でパパを見詰めてきまちゅかねっ!?)
真ん丸な愛犬キュウリの黒瞳が、柚子のひざの上から『パパ、しっかりして下ちゃい』と言わんばかりに大葉をじっと凝視してくるから。
「あああああっ!」
大葉はとうとう重圧に耐えきれなくなってガシガシと頭を掻きむしると、その場に立ち上がった。
そうして――。
「柚子、ウリちゃんを頼む。……羽理と二人きりで話がしたい」
すぐ横でキョトンと自分を見上げてくる羽理の腕を引いて立たせると、「今夜は帰らねぇから」と付け加えて「羽理、行くぞ」とやや強引に羽理の手を引いて歩き出す。
柚子に出鼻をくじかれて伝え損ねていたが、元々羽理がこちらに飛ばされてきた時から、柚子にキュウリを任せて羽理の家へ泊まりに行こうと思っていた大葉だ。
羽理に昼間何をしていたのか?とか……聞きたいことが山盛りだったし、実際そういう諸々も告白と同じくらい姉の前では切り出しづらい。
「あ、あのっ、大葉……っ」
オロオロと大葉の名を呼ぶ羽理に、「下着なしのまんまはしんどいだろ。お前ん家行くぞ」と吐き捨てたのだけれど。
「ちょっと待って、たいちゃんっ!」
姉が必死の様子で呼び止めてきて、キュウリを抱いたまま目の前に立ち塞がってくるから。
「な、何だよ……」
(この勢いを削がれたら気持ちが萎えちまうだろ!)
大葉のそういう性格は、自分自身が一番知っている。
だが、姉である柚子だって、ある程度は弟の特性を熟知していると思うのに。
告白しろと言ったくせに邪魔してこようとする姉を睨み付けたら、「私のご飯作りがまだ途中よ!」とか。
「何だよ、それ!」
大葉は羽理と手を繋いだまま、思わずその場にヘタリ込みそうになった。
***
「……お姉さん、面白い人でしたね」
助手席でふふっと笑う羽理の横顔にちらりと視線を向けてから、大葉は「自由人過ぎるんだよ」と溜め息を落とす。
結局、あのあと羽理に一旦ソファへ座り直してもらってから、大葉は柚子のために夕飯と翌朝の朝食の準備をしたのだけれど。
ついでだったので、羽理の弁当へ入れられそうな作り置き常備菜を冷凍庫から出して大きめの食品保存容器にいくつか詰め直してから、保冷袋に入れて持ち出せるようにした。
汁物を作りながら手際よく夕飯と明日の朝食を準備する大葉の横で、柚子は始終ご機嫌で。
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