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16.その女性(ひと)は誰ですか?
柚子の疑問
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***
「ねぇ、たいちゃん。そういえばさ、羽理ちゃん、いきなりワープしてきたみたいに感じちゃったんだけど……実際はいつどうやって来たの? お姉ちゃんがお風呂にいるのに入浴しておいで?ってたいちゃんが言ったの?」
弟に脱衣所を追い出されてからずっと、柚子は大葉が作りかけていたおかずをつまみ食いしながら考えていた。
(羽理ちゃんの登場の仕方、おかしかったよね?)
どう考えても扉を開けようとしたら向こうから開いて――。
なのに脱衣所にいたはずの彼女は、自分同様まるで風呂上がりみたいにびしょ濡れの裸だったのだ。
「……羽理ちゃん、何で脱衣所にいたのにあんなにびしょ濡れだったの? あの子、確かに小柄だけどシンクで湯浴み出来るほどちっこくないし……そもそもあんなに濡れそぼったまま脱衣所まで裸で歩いたら、床も濡れるよね?」
だが、足元の床は何事もなかったみたいにカラリと乾いていた。
柚子には解せないことだらけなのだ。
***
いつになく真剣な顔で自分を見詰めてくる姉に、大葉はどう答えたらいいのか考えあぐねて。
「ちょっ、説明長くなりそうだし、先に羽理に着替え持ってって来るわ」
裸で待っている羽理を理由に、一旦保留させてもらうことにした。
***
脱衣所で羽理に洗い立てのルームウェアを手渡しながら、「頭、ちゃんと乾かして出てこいよ?」と言ったら、何故か不安そうな瞳でこちらを見上げられた。
いつもなら「乾かしてやるよ」と羽理を甘やかすところなのに自分でやれと言ったからかも知れない。
そう気が付いた大葉だ。
ここ最近は心臓が痛いからあまり近付かないで?と言われまくってきた大葉としては、捨て猫のような表情でこちらを見詰めてくる羽理をめちゃくちゃワシャワシャしたいところだ。
だが――。
「たいちゃん、まだぁー? お姉ちゃんのこと忘れて羽理ちゃんとイチャイチャしてなーい?」
コンコン……と脱衣所の扉がノックされて、柚子からそんな声を掛けられては諦めざるを得ない。
吐息混じりに「すぐ行く」と答えて、大葉は「身支度整えたらお前もリビングな?」と羽理のタオルドライ後の湿った頭をポンポンと名残惜し気に撫でた。
脱衣所から出て来るなりキュウリを足元に侍らせた柚子が仁王立ちで待ち構えていて、思わず吐息のこぼれた大葉だ。
「まぁ落ち着けよ。飲み物用意するから」
そんな柚子をリビングで待たせると、大葉は電気ポットに水を半分くらい入れて沸騰スイッチを押す。
身体が冷え切ってしまった羽理に、温かいココアを飲ませてやりたいと言うのが本音だが、そのついでに柚子にも何か飲ませてやってもいいと思ったのだ。
ついで……とか思いながらも、結局自分と柚子には、ドリップケトルで沸かしたお湯を使って、いつだったか贈答でもらったドリップコーヒーを淹れた。
「ねぇ、たいちゃん。そういえばさ、羽理ちゃん、いきなりワープしてきたみたいに感じちゃったんだけど……実際はいつどうやって来たの? お姉ちゃんがお風呂にいるのに入浴しておいで?ってたいちゃんが言ったの?」
弟に脱衣所を追い出されてからずっと、柚子は大葉が作りかけていたおかずをつまみ食いしながら考えていた。
(羽理ちゃんの登場の仕方、おかしかったよね?)
どう考えても扉を開けようとしたら向こうから開いて――。
なのに脱衣所にいたはずの彼女は、自分同様まるで風呂上がりみたいにびしょ濡れの裸だったのだ。
「……羽理ちゃん、何で脱衣所にいたのにあんなにびしょ濡れだったの? あの子、確かに小柄だけどシンクで湯浴み出来るほどちっこくないし……そもそもあんなに濡れそぼったまま脱衣所まで裸で歩いたら、床も濡れるよね?」
だが、足元の床は何事もなかったみたいにカラリと乾いていた。
柚子には解せないことだらけなのだ。
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いつになく真剣な顔で自分を見詰めてくる姉に、大葉はどう答えたらいいのか考えあぐねて。
「ちょっ、説明長くなりそうだし、先に羽理に着替え持ってって来るわ」
裸で待っている羽理を理由に、一旦保留させてもらうことにした。
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脱衣所で羽理に洗い立てのルームウェアを手渡しながら、「頭、ちゃんと乾かして出てこいよ?」と言ったら、何故か不安そうな瞳でこちらを見上げられた。
いつもなら「乾かしてやるよ」と羽理を甘やかすところなのに自分でやれと言ったからかも知れない。
そう気が付いた大葉だ。
ここ最近は心臓が痛いからあまり近付かないで?と言われまくってきた大葉としては、捨て猫のような表情でこちらを見詰めてくる羽理をめちゃくちゃワシャワシャしたいところだ。
だが――。
「たいちゃん、まだぁー? お姉ちゃんのこと忘れて羽理ちゃんとイチャイチャしてなーい?」
コンコン……と脱衣所の扉がノックされて、柚子からそんな声を掛けられては諦めざるを得ない。
吐息混じりに「すぐ行く」と答えて、大葉は「身支度整えたらお前もリビングな?」と羽理のタオルドライ後の湿った頭をポンポンと名残惜し気に撫でた。
脱衣所から出て来るなりキュウリを足元に侍らせた柚子が仁王立ちで待ち構えていて、思わず吐息のこぼれた大葉だ。
「まぁ落ち着けよ。飲み物用意するから」
そんな柚子をリビングで待たせると、大葉は電気ポットに水を半分くらい入れて沸騰スイッチを押す。
身体が冷え切ってしまった羽理に、温かいココアを飲ませてやりたいと言うのが本音だが、そのついでに柚子にも何か飲ませてやってもいいと思ったのだ。
ついで……とか思いながらも、結局自分と柚子には、ドリップケトルで沸かしたお湯を使って、いつだったか贈答でもらったドリップコーヒーを淹れた。
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