89 / 342
15.腹黒課長の猛攻
裸男お手製
しおりを挟む
そう問い掛けようとしたと同時、「だって相手には彼女さんがいるんでしょう? それなのに荒木さんとも不必要に仲良くしようとしてるだなんて……僕には性質の悪い男としか思えない。そんな奴に大事な部下は任せられないよ」と岳斗が続けて。
羽理は思わず大葉への誤解を解きたい一心で、「あ、あのっ。勘違いさせてしまっているようなんですけどっ。実は裸男さんの彼女さんはワンちゃんなんです! 人間の彼女さんじゃありません!」と力説してしまっていた。
***
羽理から裸男の彼女は犬だと告白された岳斗は、今度こそ本当に言葉に詰まって。
(え? 待って? どういうこと? 今の話が本当だとしたら……荒木さんは独り暮らしの男の家へ何度もお泊りに行ってたってこと?)
着替えまで置いてあるとか……まるで恋人同士ではないか。
そうとしか思えないのに、羽理の口振りからは、まだ深い仲にはなっていないようにも感じられて……それが何とも腑に落ちない岳斗だ。
こんな魅力的な女性を家に連れ込んでおいて何もしないとか……。実は裸男は男性的な機能が不全なんじゃないかと思ってしまった。
だが、羽理のことを手放したくないと言っている感じからして……相手も羽理のことを憎からず思っているのは確かだな?とも思って。
そう言えば、羽理が食べていた手の込んだ弁当だって、裸男とやらの恋人が作ったものではないとなると、もしや裸男自身のお手製?と気が付いた岳斗だ。
あんな手間暇かけた弁当を作って持たせてやるとか……どう考えても羽理のことを溺愛しているとしか思えないではないか。
(ニンジンとかも荒木さんの好きな猫型にしてあったし……相当な入れ込みようだよね!?)
以前、意中の男性の胃袋を掴むと懇意になれると信じているらしい女性から、やたら手作り料理を渡されまくったことがある岳斗だったけれど、想いが強すぎる相手からの手作り品なんて、何が入っているか分からなくて気持ち悪くて……。
食べる気にもなれなかったのを思い出す。
だが、羽理はどう見ても嬉しそうにそれを食べていたし、何なら岳斗にその素晴らしさについて説いてくれもした。
(ちょっと待ってよ荒木さん。キミはもう、恋心はおろか胃袋まで、裸男にガッツリ掴まれちゃってるってことなんじゃない……?)
そう気付いたと同時――。
(屋久蓑部長や五代懇乃介なんかより、裸男の方がよっぽど要注意人物だった!)
今更だが、裸男には勝ち目がないのではないかとすら思ってしまった岳斗だ。
(彼女持ちだと軽視してたけど……そうじゃなかったんだ)
――荒木羽理の背後に裸男の影が散らつき始めてからずっと。やたら感じていた胸騒ぎは伊達じゃなかったらしい。
見知らぬ敵を相手に戦うのは分が悪いな?と思った岳斗だったけれど、それでも荒木羽理のことを簡単には諦めきれないことも自覚してしまったから……。
初めて感じるどうしようもないくらいの悔しさと焦燥感を、長々とした吐息に乗せて吐き出した。
羽理は思わず大葉への誤解を解きたい一心で、「あ、あのっ。勘違いさせてしまっているようなんですけどっ。実は裸男さんの彼女さんはワンちゃんなんです! 人間の彼女さんじゃありません!」と力説してしまっていた。
***
羽理から裸男の彼女は犬だと告白された岳斗は、今度こそ本当に言葉に詰まって。
(え? 待って? どういうこと? 今の話が本当だとしたら……荒木さんは独り暮らしの男の家へ何度もお泊りに行ってたってこと?)
着替えまで置いてあるとか……まるで恋人同士ではないか。
そうとしか思えないのに、羽理の口振りからは、まだ深い仲にはなっていないようにも感じられて……それが何とも腑に落ちない岳斗だ。
こんな魅力的な女性を家に連れ込んでおいて何もしないとか……。実は裸男は男性的な機能が不全なんじゃないかと思ってしまった。
だが、羽理のことを手放したくないと言っている感じからして……相手も羽理のことを憎からず思っているのは確かだな?とも思って。
そう言えば、羽理が食べていた手の込んだ弁当だって、裸男とやらの恋人が作ったものではないとなると、もしや裸男自身のお手製?と気が付いた岳斗だ。
あんな手間暇かけた弁当を作って持たせてやるとか……どう考えても羽理のことを溺愛しているとしか思えないではないか。
(ニンジンとかも荒木さんの好きな猫型にしてあったし……相当な入れ込みようだよね!?)
以前、意中の男性の胃袋を掴むと懇意になれると信じているらしい女性から、やたら手作り料理を渡されまくったことがある岳斗だったけれど、想いが強すぎる相手からの手作り品なんて、何が入っているか分からなくて気持ち悪くて……。
食べる気にもなれなかったのを思い出す。
だが、羽理はどう見ても嬉しそうにそれを食べていたし、何なら岳斗にその素晴らしさについて説いてくれもした。
(ちょっと待ってよ荒木さん。キミはもう、恋心はおろか胃袋まで、裸男にガッツリ掴まれちゃってるってことなんじゃない……?)
そう気付いたと同時――。
(屋久蓑部長や五代懇乃介なんかより、裸男の方がよっぽど要注意人物だった!)
今更だが、裸男には勝ち目がないのではないかとすら思ってしまった岳斗だ。
(彼女持ちだと軽視してたけど……そうじゃなかったんだ)
――荒木羽理の背後に裸男の影が散らつき始めてからずっと。やたら感じていた胸騒ぎは伊達じゃなかったらしい。
見知らぬ敵を相手に戦うのは分が悪いな?と思った岳斗だったけれど、それでも荒木羽理のことを簡単には諦めきれないことも自覚してしまったから……。
初めて感じるどうしようもないくらいの悔しさと焦燥感を、長々とした吐息に乗せて吐き出した。
1
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
【R18・完結】甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
花室 芽苳
恋愛
【本編完結/番外編完結】
この人なら愛せそうだと思ったお見合い相手は、私の妹を愛してしまった。
2人の間を邪魔して壊そうとしたけど、逆に2人の想いを見せつけられて……
そんな時叔父が用意した新しいお見合い相手は大企業の御曹司。
両親と叔父の勧めで、あっという間に俺様御曹司との新婚初夜!?
「夜のお相手は、他の女性に任せます!」
「は!?お前が妻なんだから、諦めて抱かれろよ!」
絶対にお断りよ!どうして毎夜毎夜そんな事で喧嘩をしなきゃならないの?
大きな会社の社長だからって「あれするな、これするな」って、偉そうに命令してこないでよ!
私は私の好きにさせてもらうわ!
狭山 聖壱 《さやま せいいち》 34歳 185㎝
江藤 香津美 《えとう かつみ》 25歳 165㎝
※ 花吹は経営や経済についてはよくわかっていないため、作中におかしな点があるかと思います。申し訳ありません。m(__)m
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる