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15.腹黒課長の猛攻
お弁当
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外でお弁当だなんて嫌がられるかな?と心配していた羽理だったけれど、岳斗に「こういランチも悪くない」と言ってもらえてホッとして。
「はい、今日は風もそよそよ吹いていて気持ちいいですし、絶好のお外ランチ日和です♪」
春先に、岳斗がここでたんぽぽの綿毛を吹き飛ばしていたのを見て、なんて可愛い人なのっ♥と悶えたのをふと思い出した羽理は、一人口の端にフフッと笑みを浮かべた。
「もう少ししたら梅雨入りして、こんな風に外で過ごすこと自体難しくなっちゃうんだろうね」
ほわんと言われて、「はい」とうなずきながら足元をふと見れば、まだ綿毛を付けたたんぽぽがあちらこちらにポツポツと点在している。
「ん? 何か楽しいことでも思い出したの?」
「あ、いえ……たんぽぽの綿毛が可愛いなぁと思って」
(本当はそれを吹き飛ばしていた課長が可愛かったんですけどねっ♪)
もっと言うと、社に戻って来た時、髪の毛に綿毛がくっ付いたままの課長の様子が最高に愛らしく見えて、帰宅するなり勢いに任せて一気に一本短編が書けてしまったくらいだったのだが。
さすがにそれをバラすわけにはいかないので、羽理は曖昧に言葉を濁して誤魔化した。
「あー、たんぽぽの綿毛ってさ、見てると何だか童心にかえって吹き飛ばしてみたくならない? 僕さ、大人気ないなって思いながらこっそり吹き飛ばしてみることあるんだ」
荒木さんだけに言うね、とウインクされて、羽理は心の中で(ええ、存じ上げておりますとも!)とこぶしを振り上げた。
「ね、ところで荒木さんの弁当、手作り?」
「あ、はいっ」
岳斗のひざの上に載っている弁当は、会社近くの仕出し屋の幕の内だ。
かさの部分にアスタリスク型の飾り切りが入った大きなシイタケと、花形にくりぬかれたニンジンが目にも楽しいお煮しめ。それから皮の焼き目が絶妙なサバの塩焼きが美味しそうな一品。
卵焼きも鮮やかな黄色が目に眩しくて、ほうれん草のバターソテーの緑色とのコントラストが何とも食欲をそそられる。
対して羽理の弁当は、一品一品大葉が真心を込めて作ってくれた愛情弁当で、彩りだってきっと、岳斗の広げている幕の内弁当にだって、引けを取らない。
今日は小さく刻まれた肉じゃがが入ったちょっぴり茶色っぽい卵焼きと、マヨダレが美味しいテカテカの鶏の照り焼き、ひじきと水菜のサラダ、猫の顔型にくりぬかれたニンジンで作られた艶々のグラッセ、十三穀米のおにぎりが入っている。
いつも思うけれど、大葉は本当に料理上手だ。
冷蔵庫の中はいつも綺麗に整理整頓されていて、チルド室には手作りの冷凍食品が常にアレコレと潤沢に収納されている。
照れ隠しからだろうか? 「冷凍してんのをテキトーに取り出してレンジでチンしただけだ」と、どこかぶっきら棒に言いながら、色んなおかずを弁当箱の中に詰め込んでくれるのだ。
今朝、見るとはなしに眺めていたら、冷凍品を解凍しただけだ、とか言いながら、ニンジンのグラッセは一から作ってくれていた。
興味津々で見守る羽理の前で、大葉は少し厚めの輪切りにしたニンジンをレンジで柔らかくしてから、羽理のためだろう。わざわざ可愛く見えるようクッキーの型で猫の顔型にくり抜くなどと言うひと手間を加えてから、バター風味の甘塩っぱいグラッセにしてくれた。
「はい、今日は風もそよそよ吹いていて気持ちいいですし、絶好のお外ランチ日和です♪」
春先に、岳斗がここでたんぽぽの綿毛を吹き飛ばしていたのを見て、なんて可愛い人なのっ♥と悶えたのをふと思い出した羽理は、一人口の端にフフッと笑みを浮かべた。
「もう少ししたら梅雨入りして、こんな風に外で過ごすこと自体難しくなっちゃうんだろうね」
ほわんと言われて、「はい」とうなずきながら足元をふと見れば、まだ綿毛を付けたたんぽぽがあちらこちらにポツポツと点在している。
「ん? 何か楽しいことでも思い出したの?」
「あ、いえ……たんぽぽの綿毛が可愛いなぁと思って」
(本当はそれを吹き飛ばしていた課長が可愛かったんですけどねっ♪)
もっと言うと、社に戻って来た時、髪の毛に綿毛がくっ付いたままの課長の様子が最高に愛らしく見えて、帰宅するなり勢いに任せて一気に一本短編が書けてしまったくらいだったのだが。
さすがにそれをバラすわけにはいかないので、羽理は曖昧に言葉を濁して誤魔化した。
「あー、たんぽぽの綿毛ってさ、見てると何だか童心にかえって吹き飛ばしてみたくならない? 僕さ、大人気ないなって思いながらこっそり吹き飛ばしてみることあるんだ」
荒木さんだけに言うね、とウインクされて、羽理は心の中で(ええ、存じ上げておりますとも!)とこぶしを振り上げた。
「ね、ところで荒木さんの弁当、手作り?」
「あ、はいっ」
岳斗のひざの上に載っている弁当は、会社近くの仕出し屋の幕の内だ。
かさの部分にアスタリスク型の飾り切りが入った大きなシイタケと、花形にくりぬかれたニンジンが目にも楽しいお煮しめ。それから皮の焼き目が絶妙なサバの塩焼きが美味しそうな一品。
卵焼きも鮮やかな黄色が目に眩しくて、ほうれん草のバターソテーの緑色とのコントラストが何とも食欲をそそられる。
対して羽理の弁当は、一品一品大葉が真心を込めて作ってくれた愛情弁当で、彩りだってきっと、岳斗の広げている幕の内弁当にだって、引けを取らない。
今日は小さく刻まれた肉じゃがが入ったちょっぴり茶色っぽい卵焼きと、マヨダレが美味しいテカテカの鶏の照り焼き、ひじきと水菜のサラダ、猫の顔型にくりぬかれたニンジンで作られた艶々のグラッセ、十三穀米のおにぎりが入っている。
いつも思うけれど、大葉は本当に料理上手だ。
冷蔵庫の中はいつも綺麗に整理整頓されていて、チルド室には手作りの冷凍食品が常にアレコレと潤沢に収納されている。
照れ隠しからだろうか? 「冷凍してんのをテキトーに取り出してレンジでチンしただけだ」と、どこかぶっきら棒に言いながら、色んなおかずを弁当箱の中に詰め込んでくれるのだ。
今朝、見るとはなしに眺めていたら、冷凍品を解凍しただけだ、とか言いながら、ニンジンのグラッセは一から作ってくれていた。
興味津々で見守る羽理の前で、大葉は少し厚めの輪切りにしたニンジンをレンジで柔らかくしてから、羽理のためだろう。わざわざ可愛く見えるようクッキーの型で猫の顔型にくり抜くなどと言うひと手間を加えてから、バター風味の甘塩っぱいグラッセにしてくれた。
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