81 / 279
15.腹黒課長の猛攻
ランチに行かない?
しおりを挟む
さすがに公開しているサイトが「皆星」なことや、ペンネームが夏乃トマトであること、それから問題の作品タイトルが『あーん、課長っ♥ こんなところでそんなっ♥』なんて破廉恥なものだということまでは教えていない。
でも……もし倍相岳斗をモデルに小説を書いていることを課長本人にポロリとバラされて……岳斗自身から「そういうのは気持ち悪いからやめて欲しいな?」とか言われてしまったら、羽理は作品を引き下げるしかなくなってしまう。
折角少しずつ読者が増えてきた作品を途中で非公開にしてしまうのは忍びないし、それに――。
(尊敬する上司から軽蔑されるのだけは何としても避けたいっ!)
そもそも、そんなことになったら仕事がしづらくなってしまうではないか。
羽理は仁子の耳元にスッと唇を寄せて『お願い、仁子っ。小説のことは話さないでっ?』と小声で耳打ちをした。
仁子がコクコクとうなずいてくれたのを確認して恐る恐る手を離すと、仁子がぷはぁーっと吐息を落として。
「息できなくて死ぬかと思ったぁー!」
とか大袈裟なことを言ってくる。
「鼻は塞いでなかったでしょ?」
「バレたか」
二人でいつものようなやり取りをしていたら、岳斗が恐る恐るといった調子で問い掛けてきた。
「あの……違ってたら申し訳ないんだけど……ひょっとして荒木さんは僕のことを気に入ってくれてると思っていい?」
岳斗から、羽理の大好きなキュルンとした表情で小首を傾げられては、否定なんて出来るはずがない。
「……はいっ。倍相課長のふんわりとした雰囲気が好きで……私、密かに課長の笑顔にいつも癒されてました」
言ってからマズいと思った羽理は、慌てて「き、気持ち悪いこと言ってすみません!」と付け加えたのだけれど。
「部下に慕われてるのを知って、嫌な気持ちになる上司はいないと思うんだけどな? むしろ今の話を聞いて僕、可愛い部下たちのためなら、何でも出来ちゃえそうだなって……改めて実感しちゃったくらいだよ」
眉根を寄せられる覚悟もしていたというのに、予想に反して岳斗からニコッと極上のふんわりスマイルを向けられた羽理は、岳斗の背後にぱぁぁぁっとパステルカラーの柔らかな色合いの花々が一斉にほころぶ錯覚を覚えてしまう。
仁子から、「推し活、本人に公認してもらえてよかったね♪」とクスクス笑われた羽理は、ひとまずホッと胸を撫で下ろして。
それと同時、岳斗の〝何でも出来る〟と言う言葉に、〝至らない自分の尻ぬぐいをさせてしまっているかも?〟という問題を思い出して、(今日は無理だけど、後日にでも改める形で穴埋めのお誘いをするべきかしら?)と岳斗を見詰めた。
「あ」
「ねぇ、荒木さん。今日こそはずっと伸ばし伸ばしになっていたランチに行かない?」
明日にでも、と前置きをした上で岳斗をランチに誘おうと決意した羽理が口を開いたよりもわずかに早く。
出始めの〝あ〟に被せるようにして、岳斗からランチの提案されてしまった羽理は戸惑いに瞳を揺らせた。
「あ、あの……今日は……」
昨日の買い物で、大葉が新しく用意してくれた猫の絵柄の可愛いランチボックスと、同じく猫柄の保冷バッグに入れられた彼お手製のお弁当があるので、別日にして欲しいと告げようとしたのだけれど。
でも……もし倍相岳斗をモデルに小説を書いていることを課長本人にポロリとバラされて……岳斗自身から「そういうのは気持ち悪いからやめて欲しいな?」とか言われてしまったら、羽理は作品を引き下げるしかなくなってしまう。
折角少しずつ読者が増えてきた作品を途中で非公開にしてしまうのは忍びないし、それに――。
(尊敬する上司から軽蔑されるのだけは何としても避けたいっ!)
そもそも、そんなことになったら仕事がしづらくなってしまうではないか。
羽理は仁子の耳元にスッと唇を寄せて『お願い、仁子っ。小説のことは話さないでっ?』と小声で耳打ちをした。
仁子がコクコクとうなずいてくれたのを確認して恐る恐る手を離すと、仁子がぷはぁーっと吐息を落として。
「息できなくて死ぬかと思ったぁー!」
とか大袈裟なことを言ってくる。
「鼻は塞いでなかったでしょ?」
「バレたか」
二人でいつものようなやり取りをしていたら、岳斗が恐る恐るといった調子で問い掛けてきた。
「あの……違ってたら申し訳ないんだけど……ひょっとして荒木さんは僕のことを気に入ってくれてると思っていい?」
岳斗から、羽理の大好きなキュルンとした表情で小首を傾げられては、否定なんて出来るはずがない。
「……はいっ。倍相課長のふんわりとした雰囲気が好きで……私、密かに課長の笑顔にいつも癒されてました」
言ってからマズいと思った羽理は、慌てて「き、気持ち悪いこと言ってすみません!」と付け加えたのだけれど。
「部下に慕われてるのを知って、嫌な気持ちになる上司はいないと思うんだけどな? むしろ今の話を聞いて僕、可愛い部下たちのためなら、何でも出来ちゃえそうだなって……改めて実感しちゃったくらいだよ」
眉根を寄せられる覚悟もしていたというのに、予想に反して岳斗からニコッと極上のふんわりスマイルを向けられた羽理は、岳斗の背後にぱぁぁぁっとパステルカラーの柔らかな色合いの花々が一斉にほころぶ錯覚を覚えてしまう。
仁子から、「推し活、本人に公認してもらえてよかったね♪」とクスクス笑われた羽理は、ひとまずホッと胸を撫で下ろして。
それと同時、岳斗の〝何でも出来る〟と言う言葉に、〝至らない自分の尻ぬぐいをさせてしまっているかも?〟という問題を思い出して、(今日は無理だけど、後日にでも改める形で穴埋めのお誘いをするべきかしら?)と岳斗を見詰めた。
「あ」
「ねぇ、荒木さん。今日こそはずっと伸ばし伸ばしになっていたランチに行かない?」
明日にでも、と前置きをした上で岳斗をランチに誘おうと決意した羽理が口を開いたよりもわずかに早く。
出始めの〝あ〟に被せるようにして、岳斗からランチの提案されてしまった羽理は戸惑いに瞳を揺らせた。
「あ、あの……今日は……」
昨日の買い物で、大葉が新しく用意してくれた猫の絵柄の可愛いランチボックスと、同じく猫柄の保冷バッグに入れられた彼お手製のお弁当があるので、別日にして欲しいと告げようとしたのだけれど。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる