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15.腹黒課長の猛攻
ランチに行かない?
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さすがに公開しているサイトが「皆星」なことや、ペンネームが夏乃トマトであること、それから問題の作品タイトルが『あーん、課長っ♥ こんなところでそんなっ♥』なんて破廉恥なものだということまでは教えていない。
でも……もし倍相岳斗をモデルに小説を書いていることを課長本人にポロリとバラされて……岳斗自身から「そういうのは気持ち悪いからやめて欲しいな?」とか言われてしまったら、羽理は作品を引き下げるしかなくなってしまう。
折角少しずつ読者が増えてきた作品を途中で非公開にしてしまうのは忍びないし、それに――。
(尊敬する上司から軽蔑されるのだけは何としても避けたいっ!)
そもそも、そんなことになったら仕事がしづらくなってしまうではないか。
羽理は仁子の耳元にスッと唇を寄せて『お願い、仁子っ。小説のことは話さないでっ?』と小声で耳打ちをした。
仁子がコクコクとうなずいてくれたのを確認して恐る恐る手を離すと、仁子がぷはぁーっと吐息を落として。
「息できなくて死ぬかと思ったぁー!」
とか大袈裟なことを言ってくる。
「鼻は塞いでなかったでしょ?」
「バレたか」
二人でいつものようなやり取りをしていたら、岳斗が恐る恐るといった調子で問い掛けてきた。
「あの……違ってたら申し訳ないんだけど……ひょっとして荒木さんは僕のことを気に入ってくれてると思っていい?」
岳斗から、羽理の大好きなキュルンとした表情で小首を傾げられては、否定なんて出来るはずがない。
「……はいっ。倍相課長のふんわりとした雰囲気が好きで……私、密かに課長の笑顔にいつも癒されてました」
言ってからマズいと思った羽理は、慌てて「き、気持ち悪いこと言ってすみません!」と付け加えたのだけれど。
「部下に慕われてるのを知って、嫌な気持ちになる上司はいないと思うんだけどな? むしろ今の話を聞いて僕、可愛い部下たちのためなら、何でも出来ちゃえそうだなって……改めて実感しちゃったくらいだよ」
眉根を寄せられる覚悟もしていたというのに、予想に反して岳斗からニコッと極上のふんわりスマイルを向けられた羽理は、岳斗の背後にぱぁぁぁっとパステルカラーの柔らかな色合いの花々が一斉にほころぶ錯覚を覚えてしまう。
仁子から、「推し活、本人に公認してもらえてよかったね♪」とクスクス笑われた羽理は、ひとまずホッと胸を撫で下ろして。
それと同時、岳斗の〝何でも出来る〟と言う言葉に、〝至らない自分の尻ぬぐいをさせてしまっているかも?〟という問題を思い出して、(今日は無理だけど、後日にでも改める形で穴埋めのお誘いをするべきかしら?)と岳斗を見詰めた。
「あ」
「ねぇ、荒木さん。今日こそはずっと伸ばし伸ばしになっていたランチに行かない?」
明日にでも、と前置きをした上で岳斗をランチに誘おうと決意した羽理が口を開いたよりもわずかに早く。
出始めの〝あ〟に被せるようにして、岳斗からランチの提案されてしまった羽理は戸惑いに瞳を揺らせた。
「あ、あの……今日は……」
昨日の買い物で、大葉が新しく用意してくれた猫の絵柄の可愛いランチボックスと、同じく猫柄の保冷バッグに入れられた彼お手製のお弁当があるので、別日にして欲しいと告げようとしたのだけれど。
でも……もし倍相岳斗をモデルに小説を書いていることを課長本人にポロリとバラされて……岳斗自身から「そういうのは気持ち悪いからやめて欲しいな?」とか言われてしまったら、羽理は作品を引き下げるしかなくなってしまう。
折角少しずつ読者が増えてきた作品を途中で非公開にしてしまうのは忍びないし、それに――。
(尊敬する上司から軽蔑されるのだけは何としても避けたいっ!)
そもそも、そんなことになったら仕事がしづらくなってしまうではないか。
羽理は仁子の耳元にスッと唇を寄せて『お願い、仁子っ。小説のことは話さないでっ?』と小声で耳打ちをした。
仁子がコクコクとうなずいてくれたのを確認して恐る恐る手を離すと、仁子がぷはぁーっと吐息を落として。
「息できなくて死ぬかと思ったぁー!」
とか大袈裟なことを言ってくる。
「鼻は塞いでなかったでしょ?」
「バレたか」
二人でいつものようなやり取りをしていたら、岳斗が恐る恐るといった調子で問い掛けてきた。
「あの……違ってたら申し訳ないんだけど……ひょっとして荒木さんは僕のことを気に入ってくれてると思っていい?」
岳斗から、羽理の大好きなキュルンとした表情で小首を傾げられては、否定なんて出来るはずがない。
「……はいっ。倍相課長のふんわりとした雰囲気が好きで……私、密かに課長の笑顔にいつも癒されてました」
言ってからマズいと思った羽理は、慌てて「き、気持ち悪いこと言ってすみません!」と付け加えたのだけれど。
「部下に慕われてるのを知って、嫌な気持ちになる上司はいないと思うんだけどな? むしろ今の話を聞いて僕、可愛い部下たちのためなら、何でも出来ちゃえそうだなって……改めて実感しちゃったくらいだよ」
眉根を寄せられる覚悟もしていたというのに、予想に反して岳斗からニコッと極上のふんわりスマイルを向けられた羽理は、岳斗の背後にぱぁぁぁっとパステルカラーの柔らかな色合いの花々が一斉にほころぶ錯覚を覚えてしまう。
仁子から、「推し活、本人に公認してもらえてよかったね♪」とクスクス笑われた羽理は、ひとまずホッと胸を撫で下ろして。
それと同時、岳斗の〝何でも出来る〟と言う言葉に、〝至らない自分の尻ぬぐいをさせてしまっているかも?〟という問題を思い出して、(今日は無理だけど、後日にでも改める形で穴埋めのお誘いをするべきかしら?)と岳斗を見詰めた。
「あ」
「ねぇ、荒木さん。今日こそはずっと伸ばし伸ばしになっていたランチに行かない?」
明日にでも、と前置きをした上で岳斗をランチに誘おうと決意した羽理が口を開いたよりもわずかに早く。
出始めの〝あ〟に被せるようにして、岳斗からランチの提案されてしまった羽理は戸惑いに瞳を揺らせた。
「あ、あの……今日は……」
昨日の買い物で、大葉が新しく用意してくれた猫の絵柄の可愛いランチボックスと、同じく猫柄の保冷バッグに入れられた彼お手製のお弁当があるので、別日にして欲しいと告げようとしたのだけれど。
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