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14.いなくならないでくれ
何でサラッとお酒なんか出してくるんですかぁっ!
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「たい、よ……は心臓痛くな……るの、怖くない、の?」
いつキュッと胸を締め付けられて、心臓が止まってしまうか予測不能だと言うのに。
そんなことを思いながら胸の不快感に眉根を寄せたら、
「んー。お前がそばにいてくれることで起こる動悸や息切れなら、俺は割と平気だな。それよかむしろ――」
言いながら一本のワインを手に取った大葉に、「羽理、辛口ワインは飲めるか?」と聞かれて。
羽理がよく分からないままにコクッとうなずいたら、それをカゴに入れながら「俺は……お前がいなくなることの方が怖い」と付け加えられた。
「え……?」
「ま、あれだ。そういう想像したら死ぬほど胸が苦しくなるってだけの話。……そうならないよう俺も頑張るから……。頼む。いなくならないでくれ」
言うなり、ギュッと背後から抱き締めるように身体を包み込まれた羽理は、(そ、それはっ……逃がさない、の間違いではないですか、屋久蓑部長っ!)とオタオタしつつ。
それでも大葉が、切なげに自分へ向かってそんなことを言ってくれることが何だか嬉しくて。
なのにその理由に思い当たれないことが、羽理はもどかしくてたまらなかった。
***
「もぉ、もぉ、もぉ! 何でサラッとお酒なんか出してくるんですかぁっ! 私、ついうっかり飲んでしまったではないですかぁぁぁ! この手練れさんめっ!」
キュルンと潤んだ瞳が愛らしい、大葉の愛犬キュウリを膝の上に乗っけて撫で撫でしていたら、「飯出来たぞぉー」と大葉に呼ばれて。
食卓に並べられたレストランも顔負けといった感じの綺麗な盛り付けがなされた『鮭とほうれん草とマッシュルームのクリームパスタ』に、羽理が上機嫌で舌鼓を打っていたら、「これ、クリーム系のパスタに合うぞ」という触れ込みのもと、大葉から滅茶苦茶自然な感じでワイングラスに注がれた薄ら琥珀色をした飲み物が目の前に置かれた。
その流れのまま、淀みなく大葉から「乾杯」とグラスを掲げられた羽理は、つられるようにグラスを軽く持ち上げて乾杯の仕草をして一口中身を飲んで。
「わぁー、この白ワイン、スッキリしてて飲みやすいですぅ~♪」
と上機嫌でグラスをテーブルに戻してハッとした。
そう。そこにきて初めて……冒頭の「もぉ」の連呼から始まる「何でさらっと~」や「ついうっかり~」のセリフへと繋がった感じだ。
そんな羽理に対して大葉は
「もぉもぉもぉ、って……お前は牛かっ!」
とか何とか苦笑しつつ。
「いや、だって羽理……俺が売り場で辛口のワイン飲めるか?って聞いたとき、めっちゃスムーズにうなずいただろ? そんなんされたらてっきり飲むことを承諾したもんだと思うじゃねぇか」
大葉からそう畳みかけられた羽理は「うっ」と言葉に詰まって。
あの時は大葉に後ろから包み込まれるようにされて、それどころではなかった。
でも、そう明かすのは何だかちょっぴり腹立たしい。
いつキュッと胸を締め付けられて、心臓が止まってしまうか予測不能だと言うのに。
そんなことを思いながら胸の不快感に眉根を寄せたら、
「んー。お前がそばにいてくれることで起こる動悸や息切れなら、俺は割と平気だな。それよかむしろ――」
言いながら一本のワインを手に取った大葉に、「羽理、辛口ワインは飲めるか?」と聞かれて。
羽理がよく分からないままにコクッとうなずいたら、それをカゴに入れながら「俺は……お前がいなくなることの方が怖い」と付け加えられた。
「え……?」
「ま、あれだ。そういう想像したら死ぬほど胸が苦しくなるってだけの話。……そうならないよう俺も頑張るから……。頼む。いなくならないでくれ」
言うなり、ギュッと背後から抱き締めるように身体を包み込まれた羽理は、(そ、それはっ……逃がさない、の間違いではないですか、屋久蓑部長っ!)とオタオタしつつ。
それでも大葉が、切なげに自分へ向かってそんなことを言ってくれることが何だか嬉しくて。
なのにその理由に思い当たれないことが、羽理はもどかしくてたまらなかった。
***
「もぉ、もぉ、もぉ! 何でサラッとお酒なんか出してくるんですかぁっ! 私、ついうっかり飲んでしまったではないですかぁぁぁ! この手練れさんめっ!」
キュルンと潤んだ瞳が愛らしい、大葉の愛犬キュウリを膝の上に乗っけて撫で撫でしていたら、「飯出来たぞぉー」と大葉に呼ばれて。
食卓に並べられたレストランも顔負けといった感じの綺麗な盛り付けがなされた『鮭とほうれん草とマッシュルームのクリームパスタ』に、羽理が上機嫌で舌鼓を打っていたら、「これ、クリーム系のパスタに合うぞ」という触れ込みのもと、大葉から滅茶苦茶自然な感じでワイングラスに注がれた薄ら琥珀色をした飲み物が目の前に置かれた。
その流れのまま、淀みなく大葉から「乾杯」とグラスを掲げられた羽理は、つられるようにグラスを軽く持ち上げて乾杯の仕草をして一口中身を飲んで。
「わぁー、この白ワイン、スッキリしてて飲みやすいですぅ~♪」
と上機嫌でグラスをテーブルに戻してハッとした。
そう。そこにきて初めて……冒頭の「もぉ」の連呼から始まる「何でさらっと~」や「ついうっかり~」のセリフへと繋がった感じだ。
そんな羽理に対して大葉は
「もぉもぉもぉ、って……お前は牛かっ!」
とか何とか苦笑しつつ。
「いや、だって羽理……俺が売り場で辛口のワイン飲めるか?って聞いたとき、めっちゃスムーズにうなずいただろ? そんなんされたらてっきり飲むことを承諾したもんだと思うじゃねぇか」
大葉からそう畳みかけられた羽理は「うっ」と言葉に詰まって。
あの時は大葉に後ろから包み込まれるようにされて、それどころではなかった。
でも、そう明かすのは何だかちょっぴり腹立たしい。
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