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11.お買い物デート
不整脈!?
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「……あのね大葉! それ、質問の答えになってないですから! ……体調が悪いんですか、悪くないんですか、ハッキリおっしゃい!」
胸元をギュッと握りしめたまま呼吸を荒くした大葉の顔を下から覗き込んで、まるで年下の男の子にするみたいにそう言い放ったら、大葉が驚いたように瞳を見開いた。
そのあからさまに驚愕した顔は、自分より一〇歳以上も上のはずなのに髪を下ろしているからだろうか? 何だかすごく幼く見えて……。
「にぎゃっ……!?」
グッと年齢差を縮められたような錯覚を覚えた羽理は、思わず変な声を上げてしまう。
最近やたらと遠慮なく急接近されていたので失念していたけれど、元々屋久蓑大葉と言う男は、滅茶苦茶お顔の整った、どこか取っつきにくいぶっきら棒な美形の部長様だった。
その大葉と、期せずしてやたら至近距離で目が合ったと感じた瞬間、何故か心臓がトクンッと大きく飛び跳ねた羽理は、半ば無意識。大葉と同じように思わず胸に手を当てて――。
(ヤダ! 不整脈っ!?)
と思った。
きっと今この場に法忍仁子がいたならば、『バカなの、アンタ! それは恋のときめきよ!』とツッコミを入れてくれたんだろうが、あいにく今彼女はいない。
実は羽理、告白されて何となく付き合った元カレに対して、こういうドキドキを感じたことがなかったのだ。
もちろん、最推しであるところの倍相岳斗に対して感じているのも、現状では恋愛感情とは程遠い〝観察対象〟としての興味関心だったから。
トクン!の意味を、斜め上に解釈してしまった。
「あ、あのっ。……もしかして大葉も心臓が痛かったり?」
羽理は今まで会社が行う健康診断で、心電図などの検査で引っかかったことは一度もないのだが。
もしかしたら大葉は割と心臓が弱くて、【要精密検査】の常連なのかも?と思い至って……。
そわそわしながらそう問いかけた。
(そう思えば、やたらと彼が心配性なのも、もしかしたら部長自身、身体が弱いからだったんじゃ?)
なんてことまで思った羽理は、そこでふと、薄らぼんやりとではあるが、先日酔って帰った日に大葉から『今夜は危ないから風呂に入るな』と口うるさく言われたのを思い出した。
(あれはそう言うことだったんですね。何か言うこと聞かなくてホント、すみません)
幸い自分の方はそれほど酷い発作ではなかったようで、今は何ともない。
だけど背後から急に「わ!」と驚かされた時みたいに心臓が暴れてびっくりしたことは、まぎれもない事実だ。
(あれが今も継続中となると、相当苦しいんじゃない?)
「ホントに大丈夫ですか?」
大葉の胸元に乗せられたままの手にそっと触れて眉根を寄せたら、「いっ、いや! あのっ。い、痛いのは痛いが……別に病気ってわけじゃないからっ、ホント気にしなくていい。っていうか……余計悪化するからちょっと距離をあけてくれないかっ!?」と、やたらソワソワされて。
「あの……だったら……手を――、この手を放して頂けませんか……?」
ギュッと繋がれたままの手を持ち上げて、恐る恐る言ってみた羽理だった。
胸元をギュッと握りしめたまま呼吸を荒くした大葉の顔を下から覗き込んで、まるで年下の男の子にするみたいにそう言い放ったら、大葉が驚いたように瞳を見開いた。
そのあからさまに驚愕した顔は、自分より一〇歳以上も上のはずなのに髪を下ろしているからだろうか? 何だかすごく幼く見えて……。
「にぎゃっ……!?」
グッと年齢差を縮められたような錯覚を覚えた羽理は、思わず変な声を上げてしまう。
最近やたらと遠慮なく急接近されていたので失念していたけれど、元々屋久蓑大葉と言う男は、滅茶苦茶お顔の整った、どこか取っつきにくいぶっきら棒な美形の部長様だった。
その大葉と、期せずしてやたら至近距離で目が合ったと感じた瞬間、何故か心臓がトクンッと大きく飛び跳ねた羽理は、半ば無意識。大葉と同じように思わず胸に手を当てて――。
(ヤダ! 不整脈っ!?)
と思った。
きっと今この場に法忍仁子がいたならば、『バカなの、アンタ! それは恋のときめきよ!』とツッコミを入れてくれたんだろうが、あいにく今彼女はいない。
実は羽理、告白されて何となく付き合った元カレに対して、こういうドキドキを感じたことがなかったのだ。
もちろん、最推しであるところの倍相岳斗に対して感じているのも、現状では恋愛感情とは程遠い〝観察対象〟としての興味関心だったから。
トクン!の意味を、斜め上に解釈してしまった。
「あ、あのっ。……もしかして大葉も心臓が痛かったり?」
羽理は今まで会社が行う健康診断で、心電図などの検査で引っかかったことは一度もないのだが。
もしかしたら大葉は割と心臓が弱くて、【要精密検査】の常連なのかも?と思い至って……。
そわそわしながらそう問いかけた。
(そう思えば、やたらと彼が心配性なのも、もしかしたら部長自身、身体が弱いからだったんじゃ?)
なんてことまで思った羽理は、そこでふと、薄らぼんやりとではあるが、先日酔って帰った日に大葉から『今夜は危ないから風呂に入るな』と口うるさく言われたのを思い出した。
(あれはそう言うことだったんですね。何か言うこと聞かなくてホント、すみません)
幸い自分の方はそれほど酷い発作ではなかったようで、今は何ともない。
だけど背後から急に「わ!」と驚かされた時みたいに心臓が暴れてびっくりしたことは、まぎれもない事実だ。
(あれが今も継続中となると、相当苦しいんじゃない?)
「ホントに大丈夫ですか?」
大葉の胸元に乗せられたままの手にそっと触れて眉根を寄せたら、「いっ、いや! あのっ。い、痛いのは痛いが……別に病気ってわけじゃないからっ、ホント気にしなくていい。っていうか……余計悪化するからちょっと距離をあけてくれないかっ!?」と、やたらソワソワされて。
「あの……だったら……手を――、この手を放して頂けませんか……?」
ギュッと繋がれたままの手を持ち上げて、恐る恐る言ってみた羽理だった。
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