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10.夕方は予定をあけておくように!
勘違いなんかじゃねぇから!
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「……へっ?」
途端羽理に、鳩が豆鉄砲を喰らったみたいな真ん丸い目をされて、「何だよ。まだ何か文句あるのか⁉︎」と息巻いた大葉だ。
「あ、あの……文句と言うか……。その、ひ、ひとつ質問なんですけど……。屋久蓑部長って……もしかして……私のこと、好き……だったり……します、か?」
だが、ソワソワと落ち着かないみたいに羽理から恐る恐るそう確認されて、一気に怒りが冷めて。
「だっ、誰がっ! 誰をだ!?」
あわあわしながら、逆に羽理へ問いかけてしまっていた。
「だから……部長が……私を、です。……あ、あのっ。わ、私の勘違いならいいんです。……忘れて下さいっ」
言うなり、羽理がくるりと大葉に背中を向けて走り去ろうとするから。
大葉は慌てて彼女の手を掴んだ。
「バカっ。タクシーで来たのに歩いて帰る気かっ。そんなんしたら午後の業務に遅刻するだろっ」
(違う、言いたいのはそんな言葉じゃないっ!)
握った羽理の手首が自分とは比べ物にならないほど華奢で……。少しでも力を込め過ぎてしまえば折れてしまいそうに細かったから。
大葉は今更ながら、羽理は〝異性〟なのだとハッキリ認識させられてしまう。
こちらからは羽理の後ろ姿しか見えないけれど、ちらりと見える耳が真っ赤になっていて。
それが何だかたまらなく大葉の胸をキュンとときめかせた。
「た、タクシーくらい自分で拾えるので大丈夫ですっ」
なのに、そんな可愛い羽理がこちらを振り向かないままに、有り得ないくらい非情な言葉を投げ掛けてくるから。
大葉は、思わず背後から羽理をギュッと抱き締めてしまっていた。
「ひゃっ、部長!?」
「か、勘違いなんかじゃねぇから……! だから……その、俺を置いて行くなっ」
自分でも恥ずかしいくらい声が上ずっているのが分かって、大葉は一度だけ大きく深呼吸をする。
(心臓がうるさすぎて敵わん!)
加えて頭の中で自分の分身たちが、『こら、大葉! 今すぐ告白し直ちまえよ!』だの、『いっそのこと振り向かせてキスしたほうが手っ取り早いんじゃねぇか!?』だのてんでバラバラにやいのやいのと騒ぎ立ててくるからたまらない。
「……ぶちょ、苦し……」
それで無意識。
羽理を抱きしめる腕に力を込めすぎてしまったらしい。
「あ、すまんっ」
慌てて腕の力を緩めてからもう一度深呼吸をすると、大葉は腕の中の羽理を自分の方へ向き直らせた。
そうして、やっとの思いで胸の内を語り始める。
「……あ、荒木羽理……さ、ん。お察しの通り、俺は……キミのことが好きだ……。だから、その……お、俺と……」
――付き合って欲しい!
そう言えば済むだけの話だ。
だが、テンパる余り、大葉はしどろもどろ――。
途端羽理に、鳩が豆鉄砲を喰らったみたいな真ん丸い目をされて、「何だよ。まだ何か文句あるのか⁉︎」と息巻いた大葉だ。
「あ、あの……文句と言うか……。その、ひ、ひとつ質問なんですけど……。屋久蓑部長って……もしかして……私のこと、好き……だったり……します、か?」
だが、ソワソワと落ち着かないみたいに羽理から恐る恐るそう確認されて、一気に怒りが冷めて。
「だっ、誰がっ! 誰をだ!?」
あわあわしながら、逆に羽理へ問いかけてしまっていた。
「だから……部長が……私を、です。……あ、あのっ。わ、私の勘違いならいいんです。……忘れて下さいっ」
言うなり、羽理がくるりと大葉に背中を向けて走り去ろうとするから。
大葉は慌てて彼女の手を掴んだ。
「バカっ。タクシーで来たのに歩いて帰る気かっ。そんなんしたら午後の業務に遅刻するだろっ」
(違う、言いたいのはそんな言葉じゃないっ!)
握った羽理の手首が自分とは比べ物にならないほど華奢で……。少しでも力を込め過ぎてしまえば折れてしまいそうに細かったから。
大葉は今更ながら、羽理は〝異性〟なのだとハッキリ認識させられてしまう。
こちらからは羽理の後ろ姿しか見えないけれど、ちらりと見える耳が真っ赤になっていて。
それが何だかたまらなく大葉の胸をキュンとときめかせた。
「た、タクシーくらい自分で拾えるので大丈夫ですっ」
なのに、そんな可愛い羽理がこちらを振り向かないままに、有り得ないくらい非情な言葉を投げ掛けてくるから。
大葉は、思わず背後から羽理をギュッと抱き締めてしまっていた。
「ひゃっ、部長!?」
「か、勘違いなんかじゃねぇから……! だから……その、俺を置いて行くなっ」
自分でも恥ずかしいくらい声が上ずっているのが分かって、大葉は一度だけ大きく深呼吸をする。
(心臓がうるさすぎて敵わん!)
加えて頭の中で自分の分身たちが、『こら、大葉! 今すぐ告白し直ちまえよ!』だの、『いっそのこと振り向かせてキスしたほうが手っ取り早いんじゃねぇか!?』だのてんでバラバラにやいのやいのと騒ぎ立ててくるからたまらない。
「……ぶちょ、苦し……」
それで無意識。
羽理を抱きしめる腕に力を込めすぎてしまったらしい。
「あ、すまんっ」
慌てて腕の力を緩めてからもう一度深呼吸をすると、大葉は腕の中の羽理を自分の方へ向き直らせた。
そうして、やっとの思いで胸の内を語り始める。
「……あ、荒木羽理……さ、ん。お察しの通り、俺は……キミのことが好きだ……。だから、その……お、俺と……」
――付き合って欲しい!
そう言えば済むだけの話だ。
だが、テンパる余り、大葉はしどろもどろ――。
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