46 / 342
9.ワンコパニック
やけに渋い包みね!?
しおりを挟む
営業課長の雨衣 一悟に異議申し立てをしてみたけれど、懇乃介の他にも困った面子がいるとかで、聞き届けてもらえなかったらしい。
「えっ?」
(他の部署の人たちは問題社員が混ざっていようと何だろうと、基本的に個人個人が持ってきているのに……。営業課だけ何で特別扱い?)
確かによその部署に比べたら接待などの絡みで経費の計上が多いけれど、それにしたって。
「戻ったら私からも倍相課長に確認してみるね。チョコ、有難う。けど……差し入れとかホント気にしなくていいから。代わりに仕事、バリバリ頑張って私たちのボーナスに反映させて? あー、あと! 髪の毛、もっと黒っぽい方が五代くんには似合うと思うし、服装もピシッとしてる方が好感度上がると思うぞ?」
まくし立てるように一気に言って踵を返した羽理に、「す、すぐ美容院行きます!」と言う声が投げかけられて。
クスッと笑いながら可愛いワンコを振り返ったら、ワイシャツのボタンを留めてネクタイをキチッと整えている懇乃介が目に入った。
(ホント、基本的には素直でいい子なんだけど)
手のかかるワンコのような後輩は可愛いけれど、他部署なのだし、もう自分たちのことは気に掛けてくれなくてもいいのにな?と、手の中のチョロルチョコ二つを見ながら思った羽理だった。
***
ジリリリリリー!と言う、まるで目覚まし時計のようなこの音は、土恵商事では昼休憩ですよ、の合図だ。
「ねぇ羽理! 倍相課長が今日のお昼一緒にどう?って誘ってくれたんだけど……もちろん行くよね?」
ベルが鳴ると同時、羽理はパーン!とエンターキーを叩いてデータを保存したと思しき法忍仁子から、そう声を掛けられた。
会社ではキリリと澄ました、〝出来るオフィスレディ〟を気取っている羽理だけれど、家では基本ぐぅたら。
女子力なんてどこかに置き忘れて久しいので、入社して以来手作り弁当なんて作ってきたことがない。
ランチは大抵コンビニ弁当か、会社に出入りしている仕出し屋の弁当か、はたまた近場の飲食店へ仁子と一緒に食べに行ったりしている。
長い付き合いでそれを知っている仁子が、いつもの調子で「せっかくだし一緒に食べに行こうよ」と誘ってくれたのだけれど。
「ごめん、仁子! 実は私、今日はお弁当持ってきてて……」
「嘘でしょ!」
「嘘じゃないよぅ」
「もぉ! どこで買ったヤツよ? 消費期限、夜までとかじゃないの!? 確認してみなさいよ!」
買ってきた品だと決めつけている仁子の様子に、羽理は何となく意地になってしまう。
「残念ながら出来合い品じゃないから! そう言うの、分かんないし多分そんなには持たないと思う!」
言って、どこか得意げに若松菱模様の風呂敷に包まれた弁当を鞄から取り出したのだけれど。
「やけに渋い包みね!?」
朝、羽理自身が華麗にスルーした部分を、仁子が的確に拾い上げてきたから。
羽理は、不合理にも(裸男め!)とたまたま通りかかった屋久蓑大葉をキッと睨み付けたのだった。
***
昼休憩の合図音が鳴ったと同時。
屋久蓑大葉は(荒木のやつ、俺が作った弁当食ってるかな?)とソワソワし始めて。
(ちょっと覗くだけだ……)
そう心の中で誰にともなく言い訳をして、部長室から何気ない風を装って財務経理課のフロアへ出たと同時――。
「えっ?」
(他の部署の人たちは問題社員が混ざっていようと何だろうと、基本的に個人個人が持ってきているのに……。営業課だけ何で特別扱い?)
確かによその部署に比べたら接待などの絡みで経費の計上が多いけれど、それにしたって。
「戻ったら私からも倍相課長に確認してみるね。チョコ、有難う。けど……差し入れとかホント気にしなくていいから。代わりに仕事、バリバリ頑張って私たちのボーナスに反映させて? あー、あと! 髪の毛、もっと黒っぽい方が五代くんには似合うと思うし、服装もピシッとしてる方が好感度上がると思うぞ?」
まくし立てるように一気に言って踵を返した羽理に、「す、すぐ美容院行きます!」と言う声が投げかけられて。
クスッと笑いながら可愛いワンコを振り返ったら、ワイシャツのボタンを留めてネクタイをキチッと整えている懇乃介が目に入った。
(ホント、基本的には素直でいい子なんだけど)
手のかかるワンコのような後輩は可愛いけれど、他部署なのだし、もう自分たちのことは気に掛けてくれなくてもいいのにな?と、手の中のチョロルチョコ二つを見ながら思った羽理だった。
***
ジリリリリリー!と言う、まるで目覚まし時計のようなこの音は、土恵商事では昼休憩ですよ、の合図だ。
「ねぇ羽理! 倍相課長が今日のお昼一緒にどう?って誘ってくれたんだけど……もちろん行くよね?」
ベルが鳴ると同時、羽理はパーン!とエンターキーを叩いてデータを保存したと思しき法忍仁子から、そう声を掛けられた。
会社ではキリリと澄ました、〝出来るオフィスレディ〟を気取っている羽理だけれど、家では基本ぐぅたら。
女子力なんてどこかに置き忘れて久しいので、入社して以来手作り弁当なんて作ってきたことがない。
ランチは大抵コンビニ弁当か、会社に出入りしている仕出し屋の弁当か、はたまた近場の飲食店へ仁子と一緒に食べに行ったりしている。
長い付き合いでそれを知っている仁子が、いつもの調子で「せっかくだし一緒に食べに行こうよ」と誘ってくれたのだけれど。
「ごめん、仁子! 実は私、今日はお弁当持ってきてて……」
「嘘でしょ!」
「嘘じゃないよぅ」
「もぉ! どこで買ったヤツよ? 消費期限、夜までとかじゃないの!? 確認してみなさいよ!」
買ってきた品だと決めつけている仁子の様子に、羽理は何となく意地になってしまう。
「残念ながら出来合い品じゃないから! そう言うの、分かんないし多分そんなには持たないと思う!」
言って、どこか得意げに若松菱模様の風呂敷に包まれた弁当を鞄から取り出したのだけれど。
「やけに渋い包みね!?」
朝、羽理自身が華麗にスルーした部分を、仁子が的確に拾い上げてきたから。
羽理は、不合理にも(裸男め!)とたまたま通りかかった屋久蓑大葉をキッと睨み付けたのだった。
***
昼休憩の合図音が鳴ったと同時。
屋久蓑大葉は(荒木のやつ、俺が作った弁当食ってるかな?)とソワソワし始めて。
(ちょっと覗くだけだ……)
そう心の中で誰にともなく言い訳をして、部長室から何気ない風を装って財務経理課のフロアへ出たと同時――。
1
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
【R18・完結】甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
花室 芽苳
恋愛
【本編完結/番外編完結】
この人なら愛せそうだと思ったお見合い相手は、私の妹を愛してしまった。
2人の間を邪魔して壊そうとしたけど、逆に2人の想いを見せつけられて……
そんな時叔父が用意した新しいお見合い相手は大企業の御曹司。
両親と叔父の勧めで、あっという間に俺様御曹司との新婚初夜!?
「夜のお相手は、他の女性に任せます!」
「は!?お前が妻なんだから、諦めて抱かれろよ!」
絶対にお断りよ!どうして毎夜毎夜そんな事で喧嘩をしなきゃならないの?
大きな会社の社長だからって「あれするな、これするな」って、偉そうに命令してこないでよ!
私は私の好きにさせてもらうわ!
狭山 聖壱 《さやま せいいち》 34歳 185㎝
江藤 香津美 《えとう かつみ》 25歳 165㎝
※ 花吹は経営や経済についてはよくわかっていないため、作中におかしな点があるかと思います。申し訳ありません。m(__)m
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる