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9.ワンコパニック
チョロルチョコ
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懇乃介は配属先希望調書の第一希望にも第二希望にも第三希望にも、バカのひとつ覚えみたいに『財務経理課』と書いたらしい。
だが肝心の志望動機欄に『荒木先輩がいるから!』という何とも困ったちゃんな回答をしたため、『五代くんはそう言う押しの強さを買われる形で営業課へ配属になったんですよ。あと、思い入れが強すぎて……荒木さんのストーカーになられても困りますしね。少し距離をあけてもらいました』と倍相課長から苦笑まじりに聞かされたのを覚えている羽理だ。
(いくら何でもストーカーにはならないと思うけどな?)
真っすぐ思いを伝えてくる懇乃介は、可愛い弟だな?と思うことはあっても、そういう陰湿な面はないように思えた羽理だ。
まぁ、理由はどうあれ営業へ配属してみると、懇乃介の人懐っこさは外部の人たちからも可愛く見えるみたいで、営業成績は割と上々らしい。
よく言えば取っ付きやすい。悪く言えばチャラチャラしたその見てくれと内面を持つ懇乃介が、少し垂れ気味の目を細めて自分へ向かって嬉し気に手を振る姿に、羽理は吐息を落とさずにはいられなかった。
このところ、毎度毎度領収証の中に明らかに個人的なモノを入れてくる懇乃介が、大好きな飼い主を見つけたワンコみたいにこちらへ駆け寄ってくるのを見ながら、羽理は(今回も絶対わざとだ)と確信する。
「俺、月に一回は荒木先輩の顔見ないと息が詰まるんっすよ」
「はいはい、そうですか」
調子の良いことを訴えてくる後輩を適当にあしらいながら、仕事とは絶対に関係ないであろうレシートを懇乃介の眼前でヒラヒラさせて――。
「研修の時にも教えたでしょう? こういうことされると『違う』って分かってても私、一応確認しなきゃ気が済まなくなるの! お願いだから無駄な時間を使わせないで?」
羽理が溜め息混じりにガツン!と言い放ったと同時。
「えへへー。けど実は無駄な時間じゃないんっすよ。――はい、これ」
悪びれた様子もなくスッと目の前に手を突き出された羽理は、困惑を隠せない。
「ほら、ぼぉーっとしてないで手ぇ、出してください。溶けちゃうじゃないっすか」
言われるまま差し出した手のひらの上に、見慣れない包装紙に包まれたチョロルチョコが二つ落とされた。
「先輩、前にブルーチーズ好きだって言ってましたよね? チョロルのブルーチーズ味、期間限定品らしいんで見つけた時、先輩に差し入れようと思って買っておいたんっす。二個あるんで、法忍先輩と一緒にどうぞ」
「え?」
「これ渡したくてわざとそん時のレシート、紛れ込ませてました。すんません」
口では謝りながらも、平然とした様子でニコッと微笑まれて、羽理は「はぁー」と吐息を落とさずにはいられない。
「五代くん、こういうのは……」
「いや! 皆まで言われなくても分かります! お、俺だって! ホントは領収持って行きがてら、経理課へ差し入れに行きたかったんっすよ。けど――」
倍相課長に『営業は忙しい部署でしょう? わざわざ個々に領収を持って来ないで、ある程度取りまとめてから雨衣課長経由で回して下さい』と釘を刺されたのだと言う。
だが肝心の志望動機欄に『荒木先輩がいるから!』という何とも困ったちゃんな回答をしたため、『五代くんはそう言う押しの強さを買われる形で営業課へ配属になったんですよ。あと、思い入れが強すぎて……荒木さんのストーカーになられても困りますしね。少し距離をあけてもらいました』と倍相課長から苦笑まじりに聞かされたのを覚えている羽理だ。
(いくら何でもストーカーにはならないと思うけどな?)
真っすぐ思いを伝えてくる懇乃介は、可愛い弟だな?と思うことはあっても、そういう陰湿な面はないように思えた羽理だ。
まぁ、理由はどうあれ営業へ配属してみると、懇乃介の人懐っこさは外部の人たちからも可愛く見えるみたいで、営業成績は割と上々らしい。
よく言えば取っ付きやすい。悪く言えばチャラチャラしたその見てくれと内面を持つ懇乃介が、少し垂れ気味の目を細めて自分へ向かって嬉し気に手を振る姿に、羽理は吐息を落とさずにはいられなかった。
このところ、毎度毎度領収証の中に明らかに個人的なモノを入れてくる懇乃介が、大好きな飼い主を見つけたワンコみたいにこちらへ駆け寄ってくるのを見ながら、羽理は(今回も絶対わざとだ)と確信する。
「俺、月に一回は荒木先輩の顔見ないと息が詰まるんっすよ」
「はいはい、そうですか」
調子の良いことを訴えてくる後輩を適当にあしらいながら、仕事とは絶対に関係ないであろうレシートを懇乃介の眼前でヒラヒラさせて――。
「研修の時にも教えたでしょう? こういうことされると『違う』って分かってても私、一応確認しなきゃ気が済まなくなるの! お願いだから無駄な時間を使わせないで?」
羽理が溜め息混じりにガツン!と言い放ったと同時。
「えへへー。けど実は無駄な時間じゃないんっすよ。――はい、これ」
悪びれた様子もなくスッと目の前に手を突き出された羽理は、困惑を隠せない。
「ほら、ぼぉーっとしてないで手ぇ、出してください。溶けちゃうじゃないっすか」
言われるまま差し出した手のひらの上に、見慣れない包装紙に包まれたチョロルチョコが二つ落とされた。
「先輩、前にブルーチーズ好きだって言ってましたよね? チョロルのブルーチーズ味、期間限定品らしいんで見つけた時、先輩に差し入れようと思って買っておいたんっす。二個あるんで、法忍先輩と一緒にどうぞ」
「え?」
「これ渡したくてわざとそん時のレシート、紛れ込ませてました。すんません」
口では謝りながらも、平然とした様子でニコッと微笑まれて、羽理は「はぁー」と吐息を落とさずにはいられない。
「五代くん、こういうのは……」
「いや! 皆まで言われなくても分かります! お、俺だって! ホントは領収持って行きがてら、経理課へ差し入れに行きたかったんっすよ。けど――」
倍相課長に『営業は忙しい部署でしょう? わざわざ個々に領収を持って来ないで、ある程度取りまとめてから雨衣課長経由で回して下さい』と釘を刺されたのだと言う。
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