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7.今夜は泊まって行け

ひょっろしれ緊張しれましゅか?

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 まさかこんなに早く、羽理うりから託された着替えが役立つ日が来るとは思わなかった。

 本人からの言いつけを守って袋の中身は確認していないが、ちゃんとこうなることを想定して彼女自身が用意したものだからきっと大丈夫。

 そう思うのに、何故か胸騒ぎがするのは何故だろう。

 乾いてくるにしたがって、羽理の髪の毛から匂い立つ自分のモノとは明らかに違うフローラルなシャンプーの香りに照れ臭くなった大葉たいようは、ポタリと頬へ水滴が落ちたことを気にしたていで、羽理を拭き終えて湿っぽいままのタオルを使って、自分の頭をガシガシと適当に拭いた。

 そのせいで余計に羽理の香りを意識してしまって、動かす手に変な力が入ってしまう。

 それを鏡越しに見た羽理が、
「ああ、屋久蓑やくみにょぶちょ、しょんなに強く拭いたりゃ禿げちゃいましゅよぅ?」
 ――もぉ、困ったひろれしゅね、と言いながら椅子からヨロリと立ち上がると、大葉たいように向かって手を伸ばしてきて。

「ほりゃ、今度こんろ部長ぶちょぉを拭いれあげましゅ。しゃっしゃとしゅわっれくらしゃい」

 大葉たいようのむき出しの背中をペシペシと叩いて急かした。

 そんな羽理の覚束おぼつかない足取りに不安になったのか、キュウリがサッと足元から飛びのいて。

 大葉たいようはそれを見てドキッとする。

「う、キュウリ、ここは危ない……から、向こうへ行っておきま……おきなさい」

 思わずいつも通り。『ウリちゃん、ここは危ないでちゅから向こうへ行っておきまちょうね』なんて話しかけそうになるのを必死にこらえた。

「ぶちょ? ひょっろしれ緊張しれましゅか?」

(ああ、色々とな!)

 羽理うりの言葉に即座に心の中でそう返した途端、
「ホント、可愛いんらからぁ♥」
 ヘラリと笑われて「か、かわっ!?」と反応せずにはいられない。

(お、俺はっ。お前にだけは可愛いと言われるよりかっこいいと思われたい!)

 むしろ可愛いのは羽理の方なのだ。

 無理矢理手を引かれて座らされた椅子の上。

 羽理にほわほわと頭へ触れられながら、大葉たいようはそんなことを思った……のだが。

「わ、熱い、熱い! バカ! 荒木あらき、やっぱ自分でやる! 貸せ!」

 酔った羽理にドライヤーを渡したのは間違いだった。

 同じところにブォォォォと当てられ続ける熱風に、危うく火傷やけどしそうになった大葉たいようは、ガッと立ち上って羽理の手からドライヤーを奪い返したのだが……。

 それと同時、ハラリと羽理のタオルが外れて。

(んっ? やわらかっ……)

「やぁんっ! 屋久蓑やくみにょぶちょぉのえっちぃ」

 はずみで羽理の胸をギュッと掴んでしまった大葉たいようは、酔っぱらった羽理にペチッと力のこもらないビンタをされた。
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