26 / 273
6.気になって仕方がない
声にならない悲鳴
しおりを挟む
***
屋久蓑大葉は、帰宅するなりぴょんぴょんと飛び跳ねながら「お帰りなさい」をしてくれる愛犬キュウリに出迎えられて、デレデレで「ウリちゃんただいま」とその小さな頭を撫で繰り回す。
「ウリちゃん、パパが帰って来て喜んでくれるのは嬉しいけど……そんなに飛び跳ねたら駄目でちゅよ? 腰を痛めたら大変でちゅからね」
いつも通りやたら丁寧な幼児語でキュウリに語り掛けた大葉は、〝うり〟という響きに気付いた途端、照れ臭さに心臓をバクバクさせた。
「ウリちゃん、もしもお家に〝うり〟ちゃんがふたりになったらどうしまちゅか?」
ボソリと独り言のように問いかけてみたら、キュウリにキョトンとした顔で見上げられてしまう。
「いや、今の忘れて?」
はぁ~、と吐息をこぼしつつ……(風呂でも入ってシャキッとするか)と決意した大葉だ。
いつもより設定温度低めのぬるま湯を浴びれば、このよく分からないモヤモヤした感情もリセット出来るかも知れない。
(いっそ水でも浴びるか!?)
羽理には別れ際、ちゃんと明朝風呂へ入るよう指示を出して来たし、よもや裸でこんばんは♥なハプニングは起こらないだろうと思って。
よくは分からないけれど、何となく……。
荒木羽理と同時に入浴しなければ、あの妙な通路は開かれないんじゃないかと勝手に思っている大葉だ。
(荒木の、あの綺麗な裸が見られないのはちょっぴり残念だな……なんて、これっぽっちも考えてないからな!?)と、車の中で羽理の香りを意識しただけで半勃ちになりかけた愚息を吐息交じりに見下ろして。
(何だってお前はあいつにはやたらと反応するんだ!)
きっとスッピンの顔立ちが思いのほか好みのド・ストライクだった上に、やたらと唆られるプロポーションだったから……以外に理由なんてありはしないのだけれど、今まであんな可愛い社員が同じフロアにいたのに気付けなかったのは痛恨のミスだと思ってしまう。
だって、きっと……そのせいで倍相岳斗に一歩も二歩も先を越されているのだから。
ふとそんなことを考えて(俺はバカか……)と自分をたしなめた大葉は、尻尾を振りながらずっと足元に待機しているキュウリの頭を再度ヨシヨシ、と撫でてやる。
「とりあえず……パパはシャワー浴びてきまちゅね……」
一人玄関先へ立ち止まったまま百面相をする主人を見上げてくる純粋無垢なキュウリの視線に居た堪れなくなった大葉は、足元の愛犬に別れを告げるとそそくさと脱衣所へ向かった。
***
「冷てっ!」
シャワー水栓本体部、温度調節ハンドルを水にして勢いよく頭から冷水を浴びた大葉は、その冷たさにギュッと身体を縮こまらせた。
季節は初夏。
確実に夏へ向かって日々気温が高くなっている昨今とは言え、直射日光の当たる場所でなし。
夜の風呂場で浴びるには冷水は冷たすぎた。
お陰様で熱を持ちかけていた愚息もキュゥッと縮み上がって自己処理をする手間は省けたけれど……。
(風邪ひいちまうわ!)
ほんのちょっとハンドルを回してぬるま湯が出るように切り替えると、自分を甘やかした大葉だ。
シャンプーを適当に出してガシガシと髪を洗って……、頭に泡を乗っけたまま牛のマークの固形石鹸で全身を乱暴に清めてから……。
(上がるか……)
一気にシャワーで泡を洗い流してサッパリした身体から水滴を滴らせながらドアに手を伸ばした。
と――。
こちらから開ける前に勝手に扉が開いて。
「あれぇ? 屋久蓑部長? 何れまだうちにいるんれしゅかぁ?」
真っ裸の荒木羽理が水滴を滴らせ、フラフラしながら愛くるしい瞳でキョトンと大葉を見上げてきた。
(ちょっと待て。何でだ!!)
ぐわりと勃ち上がる息子に戸惑いながら、大葉が思わず声にならない悲鳴を上げたのは言うまでもない――。
屋久蓑大葉は、帰宅するなりぴょんぴょんと飛び跳ねながら「お帰りなさい」をしてくれる愛犬キュウリに出迎えられて、デレデレで「ウリちゃんただいま」とその小さな頭を撫で繰り回す。
「ウリちゃん、パパが帰って来て喜んでくれるのは嬉しいけど……そんなに飛び跳ねたら駄目でちゅよ? 腰を痛めたら大変でちゅからね」
いつも通りやたら丁寧な幼児語でキュウリに語り掛けた大葉は、〝うり〟という響きに気付いた途端、照れ臭さに心臓をバクバクさせた。
「ウリちゃん、もしもお家に〝うり〟ちゃんがふたりになったらどうしまちゅか?」
ボソリと独り言のように問いかけてみたら、キュウリにキョトンとした顔で見上げられてしまう。
「いや、今の忘れて?」
はぁ~、と吐息をこぼしつつ……(風呂でも入ってシャキッとするか)と決意した大葉だ。
いつもより設定温度低めのぬるま湯を浴びれば、このよく分からないモヤモヤした感情もリセット出来るかも知れない。
(いっそ水でも浴びるか!?)
羽理には別れ際、ちゃんと明朝風呂へ入るよう指示を出して来たし、よもや裸でこんばんは♥なハプニングは起こらないだろうと思って。
よくは分からないけれど、何となく……。
荒木羽理と同時に入浴しなければ、あの妙な通路は開かれないんじゃないかと勝手に思っている大葉だ。
(荒木の、あの綺麗な裸が見られないのはちょっぴり残念だな……なんて、これっぽっちも考えてないからな!?)と、車の中で羽理の香りを意識しただけで半勃ちになりかけた愚息を吐息交じりに見下ろして。
(何だってお前はあいつにはやたらと反応するんだ!)
きっとスッピンの顔立ちが思いのほか好みのド・ストライクだった上に、やたらと唆られるプロポーションだったから……以外に理由なんてありはしないのだけれど、今まであんな可愛い社員が同じフロアにいたのに気付けなかったのは痛恨のミスだと思ってしまう。
だって、きっと……そのせいで倍相岳斗に一歩も二歩も先を越されているのだから。
ふとそんなことを考えて(俺はバカか……)と自分をたしなめた大葉は、尻尾を振りながらずっと足元に待機しているキュウリの頭を再度ヨシヨシ、と撫でてやる。
「とりあえず……パパはシャワー浴びてきまちゅね……」
一人玄関先へ立ち止まったまま百面相をする主人を見上げてくる純粋無垢なキュウリの視線に居た堪れなくなった大葉は、足元の愛犬に別れを告げるとそそくさと脱衣所へ向かった。
***
「冷てっ!」
シャワー水栓本体部、温度調節ハンドルを水にして勢いよく頭から冷水を浴びた大葉は、その冷たさにギュッと身体を縮こまらせた。
季節は初夏。
確実に夏へ向かって日々気温が高くなっている昨今とは言え、直射日光の当たる場所でなし。
夜の風呂場で浴びるには冷水は冷たすぎた。
お陰様で熱を持ちかけていた愚息もキュゥッと縮み上がって自己処理をする手間は省けたけれど……。
(風邪ひいちまうわ!)
ほんのちょっとハンドルを回してぬるま湯が出るように切り替えると、自分を甘やかした大葉だ。
シャンプーを適当に出してガシガシと髪を洗って……、頭に泡を乗っけたまま牛のマークの固形石鹸で全身を乱暴に清めてから……。
(上がるか……)
一気にシャワーで泡を洗い流してサッパリした身体から水滴を滴らせながらドアに手を伸ばした。
と――。
こちらから開ける前に勝手に扉が開いて。
「あれぇ? 屋久蓑部長? 何れまだうちにいるんれしゅかぁ?」
真っ裸の荒木羽理が水滴を滴らせ、フラフラしながら愛くるしい瞳でキョトンと大葉を見上げてきた。
(ちょっと待て。何でだ!!)
ぐわりと勃ち上がる息子に戸惑いながら、大葉が思わず声にならない悲鳴を上げたのは言うまでもない――。
1
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「絶対にキモチイイと言わせてやる」
私に多額の借金を背負わせ、彼氏がいなくなりました!?
ヤバい取り立て屋から告げられた返済期限は一週間後。
少しでもどうにかならないかとキャバクラに体験入店したものの、ナンバーワンキャバ嬢の恨みを買い、騒ぎを起こしてしまいました……。
それだけでも絶望的なのに、私を庇ってきたのは弊社の御曹司で。
副業がバレてクビかと怯えていたら、借金の肩代わりに妊娠を強要されたんですが!?
跡取り身籠もり条件の愛のない関係のはずなのに、御曹司があまあまなのはなぜでしょう……?
坂下花音 さかしたかのん
28歳
不動産会社『マグネイトエステート』一般社員
真面目が服を着て歩いているような子
見た目も真面目そのもの
恋に関しては夢を見がちで、そのせいで男に騙された
×
盛重海星 もりしげかいせい
32歳
不動産会社『マグネイトエステート』開発本部長で御曹司
長男だけどなにやら訳ありであまり跡取りとして望まれていない
人当たりがよくていい人
だけど本当は強引!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる