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6.気になって仕方がない
合鍵はないのか?
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「なぁ荒木。一応聞いてみるんだが……。お前、風呂は自力で入れそうか?」
羽理のマンションに着いてはみたものの、そのまま建物前で「じゃあな」と言う気になれず、彼女の腕を支えて一緒にエレベーターへ乗り込んだ大葉だ。
部屋の前まで来てモタモタと鍵を探す羽理に焦れながら問い掛けてみたら、酒で潤んだ熱っぽい瞳を向けられてドキッとしてしまう。
「ふぇ~? お風呂れしゅかぁ? 大丈夫れす。しゃわぁでササッとすませましゅのれ」
しゃわぁ、と言うのはシャワーのことだろうかとふと考えて。
本人はその気なんてないだろうが、余りに色っぽい視線に当てられそうで、思わず顔を逸らしつつも、
「立ちっぱなしで湯なんか浴びて、ふらついて転倒したらどうするんだ!」
またしても母親めいたことを言ってしまった大葉だ。
かといって、温かいお湯を張って湯船に浸かったら、そのままブクブクと沈んでしまいかねないとも思ってしまう。
「あー、けどっ。風呂へ浸かるのもなしだ! 危なすぎる!」
「ふふっ。屋久蓑部長ってばホント心配性さんれしゅねー。良い奥しゃんになれしょうれしゅ♥」
腕の中でフラフラと揺れながら羽理がヘラリと微笑むのを見て、大葉は半ば無意識。(いや、妻になるのはお前だろ。俺は夫になりたい!)と思ってしまってから、「妻」「夫」と言う単語が妙に恥ずかしくなった。
(こいつが家にエプロン姿で、とか……悪くないかも知れん!とか……断じて思ってないからな!)
それで照れ隠し。
「こ、今夜は風呂なんぞ入らずそのまま寝ろ!」
つっけんどんにそう言い放ったら、羽理から盛大なブーイングを喰らってしまう。
「えぇぇー? 嫌れすよぅ。ベタベタして気持ち悪いのにぃ」
「明日早起きして入れば問題ない」
「ぶちょぉは髪の毛短いかりゃ分かんにゃいかも知んないれしゅけろぉ、長い髪は濡らしゅとなかなか乾かないんれしゅよぉ? 朝からドライヤーとか面倒っちぃじゃないれすか」
そんなことをしていたら遅刻しかねないとぷぅっと唇を膨らませる羽理を横目に、大葉は(可愛い顔はやめろ)と心の中でつぶやいて、溜め息を落とす。
「どうしても今から入るとか吐かすんなら俺が洗うぞ!? 良いのか!?」
わざとガシッと両肩を掴んで真顔で言ったら、さすがの羽理も「ひっ」とつぶやいて「き、着替えて寝ましゅ」と約束してくれた。
大葉は、なかなか手にした鍵が鍵穴へ刺せずにモダモダする羽理の覚束ない手元に苛立って鍵を奪うと、ガチャッと開けて羽理を支えたまま中へ入った。
「……合鍵はないのか」
靴を脱ぐのも怪しい羽理へそう声を掛けると、「何れれすか?」と至極まともな答えが返って来て。
「お前が向こうへ行くのを見届けたら、鍵を確実に閉めて帰るために決まってるだろ、馬鹿者め」
自分でも結構強引なことを言っているという自覚はある大葉だけど、羽理は気付いていないらしい。
羽理のマンションに着いてはみたものの、そのまま建物前で「じゃあな」と言う気になれず、彼女の腕を支えて一緒にエレベーターへ乗り込んだ大葉だ。
部屋の前まで来てモタモタと鍵を探す羽理に焦れながら問い掛けてみたら、酒で潤んだ熱っぽい瞳を向けられてドキッとしてしまう。
「ふぇ~? お風呂れしゅかぁ? 大丈夫れす。しゃわぁでササッとすませましゅのれ」
しゃわぁ、と言うのはシャワーのことだろうかとふと考えて。
本人はその気なんてないだろうが、余りに色っぽい視線に当てられそうで、思わず顔を逸らしつつも、
「立ちっぱなしで湯なんか浴びて、ふらついて転倒したらどうするんだ!」
またしても母親めいたことを言ってしまった大葉だ。
かといって、温かいお湯を張って湯船に浸かったら、そのままブクブクと沈んでしまいかねないとも思ってしまう。
「あー、けどっ。風呂へ浸かるのもなしだ! 危なすぎる!」
「ふふっ。屋久蓑部長ってばホント心配性さんれしゅねー。良い奥しゃんになれしょうれしゅ♥」
腕の中でフラフラと揺れながら羽理がヘラリと微笑むのを見て、大葉は半ば無意識。(いや、妻になるのはお前だろ。俺は夫になりたい!)と思ってしまってから、「妻」「夫」と言う単語が妙に恥ずかしくなった。
(こいつが家にエプロン姿で、とか……悪くないかも知れん!とか……断じて思ってないからな!)
それで照れ隠し。
「こ、今夜は風呂なんぞ入らずそのまま寝ろ!」
つっけんどんにそう言い放ったら、羽理から盛大なブーイングを喰らってしまう。
「えぇぇー? 嫌れすよぅ。ベタベタして気持ち悪いのにぃ」
「明日早起きして入れば問題ない」
「ぶちょぉは髪の毛短いかりゃ分かんにゃいかも知んないれしゅけろぉ、長い髪は濡らしゅとなかなか乾かないんれしゅよぉ? 朝からドライヤーとか面倒っちぃじゃないれすか」
そんなことをしていたら遅刻しかねないとぷぅっと唇を膨らませる羽理を横目に、大葉は(可愛い顔はやめろ)と心の中でつぶやいて、溜め息を落とす。
「どうしても今から入るとか吐かすんなら俺が洗うぞ!? 良いのか!?」
わざとガシッと両肩を掴んで真顔で言ったら、さすがの羽理も「ひっ」とつぶやいて「き、着替えて寝ましゅ」と約束してくれた。
大葉は、なかなか手にした鍵が鍵穴へ刺せずにモダモダする羽理の覚束ない手元に苛立って鍵を奪うと、ガチャッと開けて羽理を支えたまま中へ入った。
「……合鍵はないのか」
靴を脱ぐのも怪しい羽理へそう声を掛けると、「何れれすか?」と至極まともな答えが返って来て。
「お前が向こうへ行くのを見届けたら、鍵を確実に閉めて帰るために決まってるだろ、馬鹿者め」
自分でも結構強引なことを言っているという自覚はある大葉だけど、羽理は気付いていないらしい。
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