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5.俺はただ、風呂に入る時間がかち合うのが嫌なだけ
そんなに一気に飲んだら
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荒木羽理が、屋久蓑大葉と部長室でもめた(?)日の夕方――。
羽理は倍相岳斗に誘われて、法忍仁子とともに会社から徒歩数分圏内の居酒屋へ来ていた。
「二人とも急に誘ってごめんね?」
乾杯の後、労うみたいに倍相課長にそんな言葉を投げ掛けられた羽理は、「いえっ。嬉しかったので全然っ」と言いながら、最初は自分だけが誘われたのに、何故か強引についてきた仁子にチラチラと視線を流す。
「この子が課長と二人っきりだと緊張するって言うからっ。何か私まで強引に付いてきちゃって……ホントすみません」
羽理の視線を躱すように言い訳をした仁子に、倍相課長が「いやいや、僕も気が利かなくてごめんね。何か今日の荒木さんと屋久蓑部長のやり取りが妙に気になっちゃってつい。……けど、そりゃそうだよねぇ。上司と二人っきりとか緊張しちゃうよねー」と鼻の頭を掻いて。
(ああんっ、倍相課長のそういう仕草っ! ホント可愛くてたまりません!)
と、ビールジョッキ(中)で顔を隠した羽理を悶えさせた。
「ホントは二人っきりにしてあげるのが良いっていうのは私も分かってたんですよぉ? 何せ羽理は、経理課へ配属された時から倍相課長のファンですからぁっ」
そうこうしているうちに、仁子がとんでもない暴露をしてくれて、羽理は危うく手にしたばかりの二杯目の中ジョッキを取り落としそうになった。
なみなみ入ったままだったため、ピシャッと跳ねたビールが胸元を濡らして、冷たさに思わず「ひゃっ」と悲鳴を上げたと同時、テーブル越しに倍相の手が伸びてきて、濡れた胸元にお手拭きが当てられてしまう。
(きゃー、課長! 胸に手が当たってますぅ~!)
パニックに拍車がかかった羽理だったけれど、当の倍相は全く意に介した様子がなくて。
(薄っぺらすぎて膨らみに気付かれてないんですかねっ?)
真っ赤な顔をしてオロオロする羽理の様を、仁子がニヤニヤしながら見つめてきて。
羽理はもう、何が何だか分からないままに「もう大丈夫ですっ」と言いながらジョッキの中身をゴクゴクと喉を鳴らして豪快に煽った。
「あっ、羽理っ。そんなに一気に飲んだら……」
仁子の声がしたときには後の祭り。
クラクラと回る視界の中、カバンの中の携帯画面が明るく光って着信を知らせているのがふと見えた羽理だ。
時刻はそろそろ二十二時半になろうかと言う頃。
「あれぇ? 裸男が何の用らろぉー?」
カバンからスマートフォンを取り出して発信者の名前を確認してから、「はぁーい、もしもしぃー」と出たら、すぐ隣でその画面をのぞき込んでいた仁子が怪訝そうな顔をした。
羽理、部長室の一件の後、『屋久蓑大葉』で登録していた電話帳を、大事を取って『裸男』に変えていたのだが、それが良かったのか悪かったのか。
仁子はその着信名を見たのだ。
羽理は倍相岳斗に誘われて、法忍仁子とともに会社から徒歩数分圏内の居酒屋へ来ていた。
「二人とも急に誘ってごめんね?」
乾杯の後、労うみたいに倍相課長にそんな言葉を投げ掛けられた羽理は、「いえっ。嬉しかったので全然っ」と言いながら、最初は自分だけが誘われたのに、何故か強引についてきた仁子にチラチラと視線を流す。
「この子が課長と二人っきりだと緊張するって言うからっ。何か私まで強引に付いてきちゃって……ホントすみません」
羽理の視線を躱すように言い訳をした仁子に、倍相課長が「いやいや、僕も気が利かなくてごめんね。何か今日の荒木さんと屋久蓑部長のやり取りが妙に気になっちゃってつい。……けど、そりゃそうだよねぇ。上司と二人っきりとか緊張しちゃうよねー」と鼻の頭を掻いて。
(ああんっ、倍相課長のそういう仕草っ! ホント可愛くてたまりません!)
と、ビールジョッキ(中)で顔を隠した羽理を悶えさせた。
「ホントは二人っきりにしてあげるのが良いっていうのは私も分かってたんですよぉ? 何せ羽理は、経理課へ配属された時から倍相課長のファンですからぁっ」
そうこうしているうちに、仁子がとんでもない暴露をしてくれて、羽理は危うく手にしたばかりの二杯目の中ジョッキを取り落としそうになった。
なみなみ入ったままだったため、ピシャッと跳ねたビールが胸元を濡らして、冷たさに思わず「ひゃっ」と悲鳴を上げたと同時、テーブル越しに倍相の手が伸びてきて、濡れた胸元にお手拭きが当てられてしまう。
(きゃー、課長! 胸に手が当たってますぅ~!)
パニックに拍車がかかった羽理だったけれど、当の倍相は全く意に介した様子がなくて。
(薄っぺらすぎて膨らみに気付かれてないんですかねっ?)
真っ赤な顔をしてオロオロする羽理の様を、仁子がニヤニヤしながら見つめてきて。
羽理はもう、何が何だか分からないままに「もう大丈夫ですっ」と言いながらジョッキの中身をゴクゴクと喉を鳴らして豪快に煽った。
「あっ、羽理っ。そんなに一気に飲んだら……」
仁子の声がしたときには後の祭り。
クラクラと回る視界の中、カバンの中の携帯画面が明るく光って着信を知らせているのがふと見えた羽理だ。
時刻はそろそろ二十二時半になろうかと言う頃。
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カバンからスマートフォンを取り出して発信者の名前を確認してから、「はぁーい、もしもしぃー」と出たら、すぐ隣でその画面をのぞき込んでいた仁子が怪訝そうな顔をした。
羽理、部長室の一件の後、『屋久蓑大葉』で登録していた電話帳を、大事を取って『裸男』に変えていたのだが、それが良かったのか悪かったのか。
仁子はその着信名を見たのだ。
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