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4.会社では別人
白熱した議論
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「……おい、荒木?」
急に押し黙ってしまった羽理へ、屋久蓑が怪訝そうな顔をしてくるから、羽理は完璧にテンパってしまった。
「え、えっと……ビッグマグナムの構想を練ったりするのに夢中だからです!」
それで思わず要らないことを口走って、屋久蓑に「は? ビッグマグナム? 何だそれは。俺にも分かるように話せ」と言われてしまう。
「や、屋久蓑部長には関係ありません! 趣味の話ですのでっ」
苦し紛れにそう言ってから、最初から『帰宅後に趣味の時間を取っているので』と言葉を濁しておけばよかったと気が付いた羽理だ。
でも、何と言うか……割と具体的に脳内の一部を口走ってしまった手前、逃げ切れそうにない雰囲気が漂って。
「なぁ、荒木よ。全く関係ないという気がしないのは何故だろうな? 趣味とは言え、やましくないなら俺にもちゃんと話せるんじゃないのか? ん?」
この辺はやはり部長様と言うべきか。
一度疑問に思ったことは、部下の口からとことん突き詰めて聞きださずにはいられないという雰囲気を醸し出していらっしゃるから。
羽理は思わず「ひっ」と引きつった声を出して、ますます屋久蓑に距離を詰められてしまう。
(そんな出来る上司のスキル、今は必要ありませんよっ⁉︎)
結局、羽理は趣味で小説を書いていることを屋久蓑にポツポツと支障のない範囲で(?)語ったのだった。
***
「荒木さん、大丈夫だった? 何か屋久蓑部長と白熱した議論を交わしていたようだけど……」
げっそりした様子で部長室を出てきたと同時、部長室外で待ち構えていた倍相課長から心底心配そうに顔を覗き込まれて、羽理は後ろめたさに居た堪れない気持ちになる。
「だっ、大丈夫です。ご心配お掛けして申し訳ありません」
(すみません。課長とのあんなことやこんなことの妄想を、危うく屋久蓑部長に暴かれそうになりましたっ。でもお互いの尊厳は死守したのでご安心ください!)
頭の中でそんなことを思いつつ、しゅんとして謝罪の言葉を述べたら、何故か羽理に続いて部長室を出てきた屋久蓑に「荒木、お前俺に対する態度と倍相課長に対する態度が違い過ぎないか?」と不満を言われてしまう。
「やっ、ややこしくなるので屋久蓑部長は出てこないで下さい!」
思わず部長室にいた時のテンションのまま。
屋久蓑を、「ハウス!」と指図せんばかりの勢いでキッ!と睨み付けたら、フロア全体が「おぉぉぉ」とどよめいた。
「俺にそんな口が利けるの、お前と社長ぐらいだわ」
ククッと笑って屋久蓑は羽理の頭へ一瞬だけポンッと手を載せると、部長室へ引っ込んで。
羽理は、一体何しに出て来たんですか!と思わずにはいられない。
だが、羽理の周りはそんな二人のやり取りに驚かされるばかりで。
目の前でその様を見せつけられた倍相岳斗などは、目を白黒させて羽理を見ていたのだが、羽理はその視線にも気付かないまま、ぺこりと頭を下げると、すたすたと自席へと戻る。
戻るなり仁子に「ちょっと羽理っ。あんた、いつの間に屋久蓑部長とあんな仲良くなったの!」と肩を揺すられて。
「仲良く!? バカなこと言わないでっ。あの人は私をいじめて楽しんでるだけだよ」
はぁーっと溜め息をついて屋久蓑大葉の出張費の清算や仕分け作業を開始した。
いつもより厳しい目でチェックしたのは言うまでもないのだが、さすが鬼の屋久蓑部長と言うべきか。
何一つ不正計上らしきものは混ざっていなかった。
急に押し黙ってしまった羽理へ、屋久蓑が怪訝そうな顔をしてくるから、羽理は完璧にテンパってしまった。
「え、えっと……ビッグマグナムの構想を練ったりするのに夢中だからです!」
それで思わず要らないことを口走って、屋久蓑に「は? ビッグマグナム? 何だそれは。俺にも分かるように話せ」と言われてしまう。
「や、屋久蓑部長には関係ありません! 趣味の話ですのでっ」
苦し紛れにそう言ってから、最初から『帰宅後に趣味の時間を取っているので』と言葉を濁しておけばよかったと気が付いた羽理だ。
でも、何と言うか……割と具体的に脳内の一部を口走ってしまった手前、逃げ切れそうにない雰囲気が漂って。
「なぁ、荒木よ。全く関係ないという気がしないのは何故だろうな? 趣味とは言え、やましくないなら俺にもちゃんと話せるんじゃないのか? ん?」
この辺はやはり部長様と言うべきか。
一度疑問に思ったことは、部下の口からとことん突き詰めて聞きださずにはいられないという雰囲気を醸し出していらっしゃるから。
羽理は思わず「ひっ」と引きつった声を出して、ますます屋久蓑に距離を詰められてしまう。
(そんな出来る上司のスキル、今は必要ありませんよっ⁉︎)
結局、羽理は趣味で小説を書いていることを屋久蓑にポツポツと支障のない範囲で(?)語ったのだった。
***
「荒木さん、大丈夫だった? 何か屋久蓑部長と白熱した議論を交わしていたようだけど……」
げっそりした様子で部長室を出てきたと同時、部長室外で待ち構えていた倍相課長から心底心配そうに顔を覗き込まれて、羽理は後ろめたさに居た堪れない気持ちになる。
「だっ、大丈夫です。ご心配お掛けして申し訳ありません」
(すみません。課長とのあんなことやこんなことの妄想を、危うく屋久蓑部長に暴かれそうになりましたっ。でもお互いの尊厳は死守したのでご安心ください!)
頭の中でそんなことを思いつつ、しゅんとして謝罪の言葉を述べたら、何故か羽理に続いて部長室を出てきた屋久蓑に「荒木、お前俺に対する態度と倍相課長に対する態度が違い過ぎないか?」と不満を言われてしまう。
「やっ、ややこしくなるので屋久蓑部長は出てこないで下さい!」
思わず部長室にいた時のテンションのまま。
屋久蓑を、「ハウス!」と指図せんばかりの勢いでキッ!と睨み付けたら、フロア全体が「おぉぉぉ」とどよめいた。
「俺にそんな口が利けるの、お前と社長ぐらいだわ」
ククッと笑って屋久蓑は羽理の頭へ一瞬だけポンッと手を載せると、部長室へ引っ込んで。
羽理は、一体何しに出て来たんですか!と思わずにはいられない。
だが、羽理の周りはそんな二人のやり取りに驚かされるばかりで。
目の前でその様を見せつけられた倍相岳斗などは、目を白黒させて羽理を見ていたのだが、羽理はその視線にも気付かないまま、ぺこりと頭を下げると、すたすたと自席へと戻る。
戻るなり仁子に「ちょっと羽理っ。あんた、いつの間に屋久蓑部長とあんな仲良くなったの!」と肩を揺すられて。
「仲良く!? バカなこと言わないでっ。あの人は私をいじめて楽しんでるだけだよ」
はぁーっと溜め息をついて屋久蓑大葉の出張費の清算や仕分け作業を開始した。
いつもより厳しい目でチェックしたのは言うまでもないのだが、さすが鬼の屋久蓑部長と言うべきか。
何一つ不正計上らしきものは混ざっていなかった。
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