上 下
18 / 279
4.会社では別人

余計な一言

しおりを挟む
***

 そこまで口を挟む余地もないくらい一気にまくし立てられた大葉たいようは、キラキラと瞳を輝かせて不思議現象の原因が分かったと言わんばかりの羽理うりに、マジか……と思わずにはいられない。

「――なぁ、お前が俺の着るモン買いに行ってくれてた間、俺がお前んでひとり留守番してたの、忘れてねぇか?」

「え?」

「だからっ。そのタグ切り離したのは俺だよ」

「……嘘ッ!」

「嘘じゃねぇわ。普通見たこともねぇ妖精へ行く前にそっちの可能性考えんだろ」

「た、確かにその通りですけど。――あ。けど……えっ!? ってことは……。ちょっと待ってくださいっ。部長って実は妖精さんだったんですか?」

「はっ? 何でそうなる! どう見ても俺は普通の人間だろーが。――荒木、お前一回そのメルヘン世界から脳みそ切り離せ」

 告げられた言葉が信じられないと言わんばかりに瞳を見開く羽理に、大葉たいようは苦笑せざるを得なくて。

(そう言えばコイツ、俺のこと魔法使いにしようとしたこともあったな)

 童貞呼ばわり屈辱的なセリフとともに、そんなことを言われたことまで思い出してしまう。


「でも……部長が妖精さんじゃないってことは……えっと……つまり……普通の人間の部長がっ! 私が服にタグを付けたままだったことに気付いてこっそり外して下さってたってことですか……?」

 ややしてポツンと落とされた言葉に、大葉たいようは(メルヘン女め、やっとまともな思考回路になったか)と胸を撫でおろして。

「ああ、そういうこった。なぁ、荒木。俺があんとき首んトコ、チクチクしないか?って聞いたの、覚えてねぇか?」

 そのまま吐息交じりにそう問いかけたら、そのやり取りに思い至ったらしい羽理うりに、ぷぅっと頬を膨らまされてしまった。

「あ、あれ、そういう意味だったんですか!? もう! もっと分かるように言ってくださいよぅ。屋久蓑やくみの部長ってば人が悪いです! ホント、ドS! 意地悪! キョコン!」

 さも言わなかったことが悪いみたいに責め立てられた大葉たいようは、(いや、言わない優しさってのもあんだろ)と心の中でひとり言い訳をして。

 最後に一つ巨根とか余計なことを言われた気がしたが、さすがに会社でうら若き女子社員がそんなことを口走るわけないし、気のせいだよな?とスルーすることにした。

 そうして気を取り直したように
「ってことで妖精の線は消えたわけだが……ほかに何か心当たりはねぇか?」

 無駄だと知りながらも、一応聞いてみた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

彼氏が完璧すぎるから別れたい

しおだだ
恋愛
月奈(ユエナ)は恋人と別れたいと思っている。 なぜなら彼はイケメンでやさしくて有能だから。そんな相手は荷が重い。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

処理中です...