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3.半裸・ノーブラ会議
ひょっとして裸族?
しおりを挟む「俺が裸だとお前にとって何か都合がいいのか?」
溜め息混じりに聞かれてしまって、「めっ、滅相もございません!」とソワソワしてしまった余り、
「お、男の人の裸なんて普段からめっちゃ見慣れてますので!」
とか大嘘のハッタリをかましてしまった。
「ほぉー、それは期待できそうだ。――で、実際のところどうなんだ?」
「え?」
「だからっ。男物の服があるのかないのかって話」
「あ、そ、そのっ……ざ、残念ですっ! い、今っ丁度っ、か、彼氏を切らしてる真っ最中でっ! ちょっと前までは潤沢だったんですけど……」
なんて、店の棚にある商品在庫をたまたま売り切れさせているみたいな言い方をしてしまった羽理だ。
その上で内心、
(しょ、初対面の上司に自分の身体を見て反応するか否か聞くような女ですよ!? 彼氏いたら普通そんな馬鹿なこと聞きませんよね!? 部長様ならそのくらい察して頂けませんかね!?)
などと脳内でまくし立てるように思っていたりする。
「あー、すまん。何か俺……、色々配慮が足りてなかったみたいだな……」
だが、あっさりと嘘を見抜かれたみたいにそう結論付けられては、何となく女性としての沽券を踏みにじられたようで面白くないではないか。
「本当それですよ。――屋久蓑部長ってばタイミングが悪いんだからぁ!」
それで苦し紛れにそんなことを言ったら「何だそれ」と苦笑されて。
「なぁ、ちなみに聞いてみるんだが……ここの住所は?」
タイミング云々についてはあっさりとスルーされて、話を変えられてしまった。
(むぅー、覚えてなさいよぉー!? 屋久蓑大葉ー!)
などと部長様をフルネームで呼び捨てにして毒づきつつも、表面上はけろりとした顔を取り繕って「……えっと、居間猫神社の近くですけど」と教えてあげた羽理だ。
その途端、屋久蓑が「ああ、くそっ! マジか!」と忌々し気に吐き捨てるから。
「部長のお住まい、もしかしてここから遠いんですか?」
と、問うてみたくなった。
「――俺ん家は会社の近くだ」
屋久蓑の言葉に、羽理は思わず「えっ」と驚かずにはいられない。
だってここから会社までは車で二〇分は離れているのだ。
(何でそんな距離をわざわざ真っ裸で、よく知りもしない部下の家まで押し掛けてきましたかね?)
羽理は、今更ながらそう思わずにはいられなくて。
「あのぉー、屋久蓑部長。今更なんですけど、どうして裸でうちの家にいらしたりなさったんですか?」
『電撃・突撃・部下のお宅訪問★』をするにしても、服くらい着てくればいいのに――。
スーツとまではいかずとも、最低でもパンツくらいは履いていらっしゃいな。
っていうか普通の人は真っ裸で出歩いたりしないよね?
ひょっとして……裸族?
色々謎過ぎて思わず小首を傾げたら、「俺だって来た覚えはねぇんだよ」とか。
「えっ? でも……現に今」
「俺も何でこんなことになってんのかめちゃくちゃ知りてぇんだがな。――お前にも心当たりはないのか?」
「んー。残念ながらありません」
「だよなぁぁぁぁ」
屋久蓑大葉の話によると、彼は羽理と素っ裸で対面する間際まで、自宅の風呂場にいたらしい。
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