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3.半裸・ノーブラ会議
キュウリではありません!
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自分も真っ裸で準備なしは心底びっくりしたけれど、裸を見られたのはある意味好都合。
目の前の屋久蓑大葉は、まさに飛んで火に入る夏の虫。
罠にかかったからにはとことん色々取材させてもらうんだからね⁉︎とか思っていたりする。
そのための質問を無残にもつぶされたことにガッカリしながら、ぼそりとつぶやくように「荒木羽理です」と口早に名乗ったら、聞き取れなかったのだろうか。
屋久蓑部長が「……あらキュウリ?」とバカなことを言ってくる。
「それは……さっきのぶっ飛び質問への報復ですか?」
ジロリと真正面から睨んだら、「バカ! んなわけねぇだろ。っていうか、とんでもない質問をしたっていう自覚はあったのか。……驚きだな。お前ホント、どういう感性をしてるんだよ!」とか。
(ば、バカって言った……! 変態裸男の癖に……)
羽理の頭の中、もう一人の羽理が『可愛げのないことを言う人には三毛ちゃんタオルは貸しません!』とか何とか言いながら、屋久蓑部長が腰に巻いたタオルを奪い返す構図が浮かんで。
(いやいやいや。さすがにそれはダメでしょ)
そんなことをしたら痴女決定だ。
「ア・ラ・キ・ウ・リです! キュウリではありません!」
小学生の頃、屋久蓑部長みたいなアホな男子から「あら、キュウリぃ~!」と揶揄われて、以後高校へ行くまであだ名がキュウリだったのを苦々しく思い出した羽理だ。
羽理の冷たい視線にひるんだのかどうなのか。
「アラキ・ウリか。しかし……ウリとはまた珍しい名前だな」
屋久蓑部長がどこか感心したようにつぶやいて。
羽理はその言葉にすかさず反撃を試みる。
「大葉って書いて大葉って読ませる人に言われたくありません」
以前社内報を読んでいて、『タイヨウという響きは素敵なのに、漢字!』と思ったのを激しく覚えている羽理だ。
何だか自分だけ蚊帳の外みたいに人の名前のことをおっしゃってますけど、うちの親と部長の親御さん、割と同類だと思います!と心の中で付け加えてみる。
だが、親の信じられないセンスのお陰で青果を専門に扱う土恵商事に受かったことを思うと、羽理は複雑な気持ちなのだ。
最終面接で、採用担当者から『野菜の名前が入ってるだなんて、うちの会社にふさわしい人材ですね』とニコニコされたのだけれど、もしかしたらウリの方ではなくキュウリの方をすくい上げられたのかも知れないな?と今更のように気が付いた。
そうして――。
(部長も名前採用の人なのかも?)
ふとそんな親近感を覚えてしまった羽理だ。
それで生暖かい目で屋久蓑部長のことを見詰めてしまい、「お前、俺のことすげぇ詳しいな。……実はファンか?」とか言われてしまった。
いやいやいや、いきなりどうしてそういう発想になりますかね!?
確かにこうして真ん前に座ってみると物凄く整ったお顔立ちで、さぞやおモテになられるだろうな?とは思う。
思うけれど。
(自意識過剰ですよ!?)
残念ながら羽理には倍相岳斗課長という〝推し〟がいるのだ。
目の前の屋久蓑大葉は、まさに飛んで火に入る夏の虫。
罠にかかったからにはとことん色々取材させてもらうんだからね⁉︎とか思っていたりする。
そのための質問を無残にもつぶされたことにガッカリしながら、ぼそりとつぶやくように「荒木羽理です」と口早に名乗ったら、聞き取れなかったのだろうか。
屋久蓑部長が「……あらキュウリ?」とバカなことを言ってくる。
「それは……さっきのぶっ飛び質問への報復ですか?」
ジロリと真正面から睨んだら、「バカ! んなわけねぇだろ。っていうか、とんでもない質問をしたっていう自覚はあったのか。……驚きだな。お前ホント、どういう感性をしてるんだよ!」とか。
(ば、バカって言った……! 変態裸男の癖に……)
羽理の頭の中、もう一人の羽理が『可愛げのないことを言う人には三毛ちゃんタオルは貸しません!』とか何とか言いながら、屋久蓑部長が腰に巻いたタオルを奪い返す構図が浮かんで。
(いやいやいや。さすがにそれはダメでしょ)
そんなことをしたら痴女決定だ。
「ア・ラ・キ・ウ・リです! キュウリではありません!」
小学生の頃、屋久蓑部長みたいなアホな男子から「あら、キュウリぃ~!」と揶揄われて、以後高校へ行くまであだ名がキュウリだったのを苦々しく思い出した羽理だ。
羽理の冷たい視線にひるんだのかどうなのか。
「アラキ・ウリか。しかし……ウリとはまた珍しい名前だな」
屋久蓑部長がどこか感心したようにつぶやいて。
羽理はその言葉にすかさず反撃を試みる。
「大葉って書いて大葉って読ませる人に言われたくありません」
以前社内報を読んでいて、『タイヨウという響きは素敵なのに、漢字!』と思ったのを激しく覚えている羽理だ。
何だか自分だけ蚊帳の外みたいに人の名前のことをおっしゃってますけど、うちの親と部長の親御さん、割と同類だと思います!と心の中で付け加えてみる。
だが、親の信じられないセンスのお陰で青果を専門に扱う土恵商事に受かったことを思うと、羽理は複雑な気持ちなのだ。
最終面接で、採用担当者から『野菜の名前が入ってるだなんて、うちの会社にふさわしい人材ですね』とニコニコされたのだけれど、もしかしたらウリの方ではなくキュウリの方をすくい上げられたのかも知れないな?と今更のように気が付いた。
そうして――。
(部長も名前採用の人なのかも?)
ふとそんな親近感を覚えてしまった羽理だ。
それで生暖かい目で屋久蓑部長のことを見詰めてしまい、「お前、俺のことすげぇ詳しいな。……実はファンか?」とか言われてしまった。
いやいやいや、いきなりどうしてそういう発想になりますかね!?
確かにこうして真ん前に座ってみると物凄く整ったお顔立ちで、さぞやおモテになられるだろうな?とは思う。
思うけれど。
(自意識過剰ですよ!?)
残念ながら羽理には倍相岳斗課長という〝推し〟がいるのだ。
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