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3.半裸・ノーブラ会議
いきなり何を言い出すんだ?
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「し、失礼しま、す?」
ワンルームとは言え、玄関からリビングが丸見えは女性向け物件として良くないと考えられたんだろう。
羽理の住んでいるマンションは、リビングとキッチンとの境目に曇りガラスのはまった引き戸が付いていた。
その扉前に立って恐る恐る中へ声を掛けたら、「ああ、入れ」とやけに偉そうな男の声がして。
(ちょっと待って? 考えてみたらここ、私の家じゃなかったでしたっけ?)
――何でゲストの貴方が我が家の主導権を握ってらっしゃいますかね?と思ってしまった羽理だ。
でも、その言葉遣いからして、中にいる人物が常日頃からそういう口調に慣れた立ち位置にいる人間なのだと再確認出来て。
(やっぱり見間違いなんかじゃなく……あのご立派じゃなくて……裸の人は屋久蓑部長だったってことだよね?)
そう思い至った途端、羽理は別に会社でもないのに何だか緊張してきてしまった、――のだが。
ふと自分の格好を顧みて、(いま私が気にするべきはそこじゃありませんでしたね!?)と思い直す。
とりあえず、緊張のあまり冷たくなってしまった手でそろぉーっと引き戸を開けてみたら、物凄く不機嫌な顔をした半裸の男性が、猫の顔の形をした天板が載ったローテーブルに頬杖をついて、こちらを睨み付けていた。
「ひっ」
思わず言葉にならない悲鳴が漏れてしまった羽理だったのだけれど。
すぐに『いやいやいや!』と気持ちを切り替える。
「な、んで……屋久蓑部長がうちにいらっしゃるんですか?」
しかも真っ裸で――。
心の底からそう付け加えたかったけれど、ジロリと睨み上げられた羽理は、何となくそれは指摘してはいけない気がしてしまった。
「その口ぶり。お前は……俺を知っている人間ということか。――最悪だな」
盛大に溜め息をつきながらそう言った屋久蓑部長が、目の前に立つ羽理からふぃっと視線を逸らせて。
「なぁ、すまんが突っ立ったまま話されたら……その……目のやり場に困る。とりあえず座ってくれないか」
トントン、と机上を指先で叩きながら、自分の正面へ座れと促してくる。
どうやら目の前に羽理の太ももがきているのがいけなかったらしい。
(部長ってば見た目は怖いのに案外純情なところがありますね!?)
と思ったと同時、(じゃあ、やっぱりアレは……もしや私の裸を見てお勃てになっていらしたのでしょうか!?)などととんでもないことを考えてしまった。
それでだろう。
エッチシーンありなティーンズラブ作家としての本能か。
半ばネタ探しの取材気分。
「あ、あの……私が立ったままで居たら、もしかして部長の部長も勃ってしまいますか!?」
などと有り得ないことを問いかけてしまったのは。
***
「はぁ!?」
最初から妙な女だとは思っていた。
そもそもこの部屋からしておかしい。
やたら猫だらけで落ち着かないことこの上ないではないか。
(せめて犬にしろ!)
などと思いながら、今現在その三毛柄のタオルに辛うじて大事なところを覆って頂いている事実を思い出した屋久蓑大葉は、他人様の家の趣味にケチをつけるのは良くなかったな……と自分を諫めたのだけれど。
いきなり何を言い出すんだ?と思うのは正解だよな?と自問自答せずにはいられない。
ワンルームとは言え、玄関からリビングが丸見えは女性向け物件として良くないと考えられたんだろう。
羽理の住んでいるマンションは、リビングとキッチンとの境目に曇りガラスのはまった引き戸が付いていた。
その扉前に立って恐る恐る中へ声を掛けたら、「ああ、入れ」とやけに偉そうな男の声がして。
(ちょっと待って? 考えてみたらここ、私の家じゃなかったでしたっけ?)
――何でゲストの貴方が我が家の主導権を握ってらっしゃいますかね?と思ってしまった羽理だ。
でも、その言葉遣いからして、中にいる人物が常日頃からそういう口調に慣れた立ち位置にいる人間なのだと再確認出来て。
(やっぱり見間違いなんかじゃなく……あのご立派じゃなくて……裸の人は屋久蓑部長だったってことだよね?)
そう思い至った途端、羽理は別に会社でもないのに何だか緊張してきてしまった、――のだが。
ふと自分の格好を顧みて、(いま私が気にするべきはそこじゃありませんでしたね!?)と思い直す。
とりあえず、緊張のあまり冷たくなってしまった手でそろぉーっと引き戸を開けてみたら、物凄く不機嫌な顔をした半裸の男性が、猫の顔の形をした天板が載ったローテーブルに頬杖をついて、こちらを睨み付けていた。
「ひっ」
思わず言葉にならない悲鳴が漏れてしまった羽理だったのだけれど。
すぐに『いやいやいや!』と気持ちを切り替える。
「な、んで……屋久蓑部長がうちにいらっしゃるんですか?」
しかも真っ裸で――。
心の底からそう付け加えたかったけれど、ジロリと睨み上げられた羽理は、何となくそれは指摘してはいけない気がしてしまった。
「その口ぶり。お前は……俺を知っている人間ということか。――最悪だな」
盛大に溜め息をつきながらそう言った屋久蓑部長が、目の前に立つ羽理からふぃっと視線を逸らせて。
「なぁ、すまんが突っ立ったまま話されたら……その……目のやり場に困る。とりあえず座ってくれないか」
トントン、と机上を指先で叩きながら、自分の正面へ座れと促してくる。
どうやら目の前に羽理の太ももがきているのがいけなかったらしい。
(部長ってば見た目は怖いのに案外純情なところがありますね!?)
と思ったと同時、(じゃあ、やっぱりアレは……もしや私の裸を見てお勃てになっていらしたのでしょうか!?)などととんでもないことを考えてしまった。
それでだろう。
エッチシーンありなティーンズラブ作家としての本能か。
半ばネタ探しの取材気分。
「あ、あの……私が立ったままで居たら、もしかして部長の部長も勃ってしまいますか!?」
などと有り得ないことを問いかけてしまったのは。
***
「はぁ!?」
最初から妙な女だとは思っていた。
そもそもこの部屋からしておかしい。
やたら猫だらけで落ち着かないことこの上ないではないか。
(せめて犬にしろ!)
などと思いながら、今現在その三毛柄のタオルに辛うじて大事なところを覆って頂いている事実を思い出した屋久蓑大葉は、他人様の家の趣味にケチをつけるのは良くなかったな……と自分を諫めたのだけれど。
いきなり何を言い出すんだ?と思うのは正解だよな?と自問自答せずにはいられない。
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