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1.あニャたに良縁引き寄せます♥
お囃子が聴こえる
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このTシャツ。
猫好きの羽理の気持ちを如実に物語るみたいに、胸元からおへそ辺りにかけてド真ん中。
一本筋が通るみたいに「猫の下僕」と豪快な筆文字で縦書きにドーンと書かれているのだけれど。
(女子力どこに置いてきたっ)
自戒を込めて、そう突っ込まずにはいられない。
毎日何かしら猫にちなんだデザインのダボダボなTシャツをパジャマにしている羽理だ。
暑くなってからはTシャツの丈が長いのをいいことに、お風呂上がりから朝起きて外行き用の服に着替えるまでずっと。下はショーツオンリーで、もちろん上はノーブラ上等な有様。
さすがにこのままでは出られそうにない。
とりあえず――。
そう思った羽理は、こういう時の必殺アイテム。
紺地に白の縦ストライプが入ったシャツワンピースをクローゼットから引っ張り出した。
肩がパフスリーブになっていて、ウェストがリボンで絞れるデザインになっているそのワンピは、着ればあっという間に〝それなり〟に可愛く見せてくれる優れものアイテムだ。
スカート丈もひざ下ぐらいで程よく肌を隠してくれるのも嬉しい。
胸元が開襟になっているから暑くないし、羽理お気に入りのよく着るアイテムだ。
ブラジャーだけはしないとまずいので、スポッとかぶるタイプの楽ちんブラをタンスから引っ張り出した。
ショーツがピンクでブラが黒。
「わー、見事にバラバラ」
我ながら終わってる!と思いながらも、誰かに見せるあてがあるわけじゃなし。
まあいっかと開き直る。
荒木羽理・二十五歳。
彼氏いない歴が三年目を超えた彼女は、別に容姿が悪いわけでも性格が悪いわけでもない。
ただ単にあの散々な別れ以後、素敵な出逢いに恵まれなかっただけの可哀想なお一人様だ。
とはいえ――。
シングル期間が長すぎて、最近は自分でもヤバいなぁと思う程度には喪女(モテない女)モードに突入気味。
いくら社内恋愛はしたくないとはいえ、今のまま会社と家の往復を繰り返していたのでは、取り返しのつかないことになるのでは?と焦りもあったりなかったり。
(あーん。倍相課長ほどの優良物件じゃなくてもいいから、私をグイグイ引っ張ってくれるようなドSで絶倫な殿方、どこかにいないかしらっ)
なんて勝手に、倍相課長の性格を自作のヒーローに重ねて妄想しつつ。
「……とりあえず腹ごしらえしよ」
まるで馬鹿な妄想はおやめなさい、とでも言うように、「グゥ」っと鳴ったお腹に催促されて、羽理は一旦恋人問題については保留することにした。
***
(えっ。なになに? 何事⁉︎)
一日中家に引きこもっていた羽理は、マンションの七階からエレベーターで下まで降りてきたと同時、ソワソワと違和感に包まれる。
マンション前を、浴衣姿の人が数名通過していくのが見えたからだ。
七階にいるとさすがに下の音は余り聞こえてこなくて気付かなかったけれど、どうやらどこかでお祭りがあるらしい。
微かにお囃子の音も聞こえてきて、羽理の中の大和魂に火が付いた。
(覗いてみよっかな♪)
コンビニ弁当も悪くないけれど、出店で何かを買い食いするのも悪くない気がした羽理だ。
猫好きの羽理の気持ちを如実に物語るみたいに、胸元からおへそ辺りにかけてド真ん中。
一本筋が通るみたいに「猫の下僕」と豪快な筆文字で縦書きにドーンと書かれているのだけれど。
(女子力どこに置いてきたっ)
自戒を込めて、そう突っ込まずにはいられない。
毎日何かしら猫にちなんだデザインのダボダボなTシャツをパジャマにしている羽理だ。
暑くなってからはTシャツの丈が長いのをいいことに、お風呂上がりから朝起きて外行き用の服に着替えるまでずっと。下はショーツオンリーで、もちろん上はノーブラ上等な有様。
さすがにこのままでは出られそうにない。
とりあえず――。
そう思った羽理は、こういう時の必殺アイテム。
紺地に白の縦ストライプが入ったシャツワンピースをクローゼットから引っ張り出した。
肩がパフスリーブになっていて、ウェストがリボンで絞れるデザインになっているそのワンピは、着ればあっという間に〝それなり〟に可愛く見せてくれる優れものアイテムだ。
スカート丈もひざ下ぐらいで程よく肌を隠してくれるのも嬉しい。
胸元が開襟になっているから暑くないし、羽理お気に入りのよく着るアイテムだ。
ブラジャーだけはしないとまずいので、スポッとかぶるタイプの楽ちんブラをタンスから引っ張り出した。
ショーツがピンクでブラが黒。
「わー、見事にバラバラ」
我ながら終わってる!と思いながらも、誰かに見せるあてがあるわけじゃなし。
まあいっかと開き直る。
荒木羽理・二十五歳。
彼氏いない歴が三年目を超えた彼女は、別に容姿が悪いわけでも性格が悪いわけでもない。
ただ単にあの散々な別れ以後、素敵な出逢いに恵まれなかっただけの可哀想なお一人様だ。
とはいえ――。
シングル期間が長すぎて、最近は自分でもヤバいなぁと思う程度には喪女(モテない女)モードに突入気味。
いくら社内恋愛はしたくないとはいえ、今のまま会社と家の往復を繰り返していたのでは、取り返しのつかないことになるのでは?と焦りもあったりなかったり。
(あーん。倍相課長ほどの優良物件じゃなくてもいいから、私をグイグイ引っ張ってくれるようなドSで絶倫な殿方、どこかにいないかしらっ)
なんて勝手に、倍相課長の性格を自作のヒーローに重ねて妄想しつつ。
「……とりあえず腹ごしらえしよ」
まるで馬鹿な妄想はおやめなさい、とでも言うように、「グゥ」っと鳴ったお腹に催促されて、羽理は一旦恋人問題については保留することにした。
***
(えっ。なになに? 何事⁉︎)
一日中家に引きこもっていた羽理は、マンションの七階からエレベーターで下まで降りてきたと同時、ソワソワと違和感に包まれる。
マンション前を、浴衣姿の人が数名通過していくのが見えたからだ。
七階にいるとさすがに下の音は余り聞こえてこなくて気付かなかったけれど、どうやらどこかでお祭りがあるらしい。
微かにお囃子の音も聞こえてきて、羽理の中の大和魂に火が付いた。
(覗いてみよっかな♪)
コンビニ弁当も悪くないけれど、出店で何かを買い食いするのも悪くない気がした羽理だ。
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