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野原
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しおりを挟む気のせい……ではなかった。下生えの中、茂みを掻き分けながら、何かがモソモソと動いている。
「……?」
よく見える位置に近付こうとしたら、追いついたブレイズにいきなり腕を捕まれて後ろに引き戻された。
余りに乱暴なその所業に「いきなり何すんのよ!」と文句を言おうとしたら、とっても怖い顔をした彼と目が合った。
「お前な、人の話は最後まで聞けよ!」
そこまで言って、まだ少し草を揺らしている茂みへ視線を向けると、無造作にそこへ手を突っ込む。
引き戻された彼の手に持たれているのは、一本の紐――ではなく蛇――だった。
「ッ……! キャーーーーーーーァァァッ!」
いきなり眼前に突きつけられた長ものに、パティスはあらん限りの絶叫を浴びせかける。
「……だぁーっ、もう、うるせぇ!」
一向に止みそうにない悲鳴に、ブレイズが手にした蛇を無造作に放り投げたのも致し方あるまい。
「ほら、もう遠くにやったぞ。いい加減落ち着け!」
軽く頬をはたかれて、正気に戻る。
「ひどい! いきなり蛇を見せるなんて!」
涙のにじむ目で、抗議の言葉を浴びせると、
「お前が最後まで人の話を聞かねぇのが悪い!」
逆に睨み返されてしまった。
もしかしたらブレイズ、物凄く怒っているのかも。
ブレイズに、骨の芯まで凍りついてしまいそうな冷たい視線を向けられると、造作が整っているだけに迫力満点だ。
「……ご、ごめんなさい」
しゅんとして謝るパティスに、
「ありゃ、毒蛇なんだよ……っ」
ゾッとする言葉を吐き捨てて、
「……俺のほうも言う順序が間違ってた。すまん」
パティスの頭をぐしゃっと撫でて、謝罪の言葉を述べる。
余りに意外なその言動に、パティスは思わず瞳を見開いて彼を凝視した。
「……ンだよ?」
途端元通りの不機嫌そうな口調に戻ったブレイズに、そっぽを向かれてしまう。
そんな彼を見て、パティスは無意識のうちに微笑んだ。
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