【完結】【R18】社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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終章.最上級の愛をキミに

くるみの木

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***

「そう言やぁもなかなか使われんで寂しいね」

 リビングの窓から。
 実篤さねあつがふと社屋外の屋根付き駐車場に停められた、愛車横に並ぶ白い軽自動車を見てポツリとつぶやいたら、すぐ横に来たくるみが小さく吐息を落とした。

「ホンマに。折角前の『くるみの木号』と同じように移動販売が出来るようにしてもらったんに……しばらくお預けだなんて、凄くぶち寂しいです」

 台風後、新車を買おうと実篤が提案した時、贅沢だと渋ったくるみに、実篤は「新しい車も前の車みたいに移動販売が出来る仕様にして、車自身にもお金を稼いでもろぉたらええじゃ?」と提案したのだけれど。

 くるみはその言葉に、実篤が思った以上に喜んでくれて――。

 結局くるみはパン屋が再開できたあかつきには、定休日の水曜日を除く月曜から金曜は今まで通り移動販売に精を出したいと結論付けたのだ。


「うち、今まで通り配達を待ってくれちょるお客さんのこと、大事にしたいんです」

 結果、新しく建てる予定の新居一階事務所内の、『くるみの木』販売ブースでは、基本的に冷蔵保存が必要な生クリーム入りの新作マリトッツォやフルーツサンド、サンドイッチなどを冷蔵ショーケースへ並べるに留めることで話を進めた二人だ。

 冷蔵ものは店舗で、普通のパンは基本的には移動販売車で。
 くるみからのたっての要望で、そういう住み分けをする形に計画を組み替えたのだった。

 元々働き者のくるみは、十二月の中旬に新しい車が納車された頃にはまだ妊娠にも気付いていなかったから。

 家が完成して厨房が使えるようになったらすぐにでも『くるみの木』の営業を再開するつもりで色々算段を練っていたのだけれど。

 アレよアレよといううちに悪阻つわりに悩まされて日がな一日寝込むようになって。
 パン作りはおろか、日常生活もままならなくなったくるみに、実篤さねあつは始終オロオロしっぱなしの日々だった。


***


ようやくようやっと体調も落ち着いてきましたけぇパンこねたりは問題なくのぉ出来る思うんですけど……。パン屋の再始動自体はおチビちゃんを産んで落ち着いた後の方がええですいね?」

 順調に見えても妊娠中は無理をするとすぐにお腹が張ったりする。
 お腹の胎児のことを思えばそれが一番得策に思えたのだけれど。

 車庫の車を見下ろしながらくるみが切なげに眉根を寄せるのを見て、実篤は「そうほうじゃね。寂しいけどその方が無難かも知れんよ」と彼女をいたわわるように抱きしめた。

「じゃけど――」

 そこでふと思いついたように告げられた実篤からの提案に、
「ええんですかっ。それ、凄く凄くぶちぶち嬉しいです!」
 くるみがキラキラと瞳を輝かせた。
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